今年の夏も猛暑でしたが,最近診療で地球温暖化を感じることがありました。子どもの細気管支炎の原因となるRSウイルス感染症が,お盆の頃に流行しました。教科書的には,温帯地方においては冬季に,熱帯地方においては雨期に流行するとあります。感染症も鹿児島は熱帯と一緒になったのでしょうか。
今月の誌上ギャラリーは,彼岸花です。暑さ寒さも彼岸まで。涼しい秋はもうすぐそこです。
論説と話題では,九州地区医師会立共同利用施設連絡協議会の報告があり,どの医師会も同じ問題を抱えているようです。共通点としては,医師会立施設の経営悪化,医師・看護師不足,IT化への対応です。各医師会とも人件費の見直しや,事業・事務費の削減,営業の強化,特色ある医師会立病院への転換などで経営努力をされていますが,地域医療が厳しい状況であることに間違いありません。また,ヒトがいなくては経営どころではありません。9月より市医師会病院の小児科も医師不足のため縮小されます。看護師不足は診療所でも同じで,ハローワークや新聞広告で募集しても,応募はほとんどありません。鹿児島育ちの看護師さんはどこへ行ったのでしょうか。長友先生より男女共同参画フォーラムの報告にあるように,今後女性医師がいかに働きやすい職場を作るかが,地域医療の生き残る鍵かもしれません。また,今後地域医療の再編として,会長雑感にあるような病院のM&A(合併,統合)の動きも出てくるでしょう。
学術では,治癒切除不能な進行・再発大腸がんに対する抗がん剤や,分子標的治療薬による化学療法の成績を藤島先生に報告いただきました。QOL(生活の質)を保ちながら,長期治療が可能な薬剤が開発され,選択肢が増えることは患者さんや家族に朗報です。
随筆・その他では,6人の先生方に投稿いただきました。古庄先生の切手にはちゃんと看護師さんがいます。植松先生のご紹介された「星と宇宙のふしぎ」は待合室に置いて,子どもたちに読んでもらいたい本です。鮫島先生の「青葉の笛」で,新米医者の頃,国立指宿病院から眺めた錦江湾と対岸の大隅半島の景色が思い浮かびました。安達先生の紹介された生活坐禅ですが,股関節が固くてあぐらが組めない方は,いすに浅く腰を下ろし,背筋を伸ばした姿勢で両ひざを左右に広げてもよいそうです。これなら出来そうです。七高寮歌「北辰斜に」「楠の葉末」への想いが川畑先生の随筆より伝わってきます。「巻頭言」から続く「北辰斜に」はこれからも歌い継がれる名曲だと思います。池田先生の趣味?である三次元診断で,大腸内腔がこんなにきれいな仮想内視鏡画像として見えるのには驚きました。内視鏡にとって代わる時代がくるかもしれませんね。
古典落語に「天災」という演目がありますが,喧嘩っ早い八五郎が,心学の先生に諭される場面。「では広い野原を歩いていると,にわか雨が降って来て全身濡れねずみ。傘も雨宿りの場所もない。どうする?」「うーん・・・諦めるしかないな」「丁稚に水をちょっと掛けられて怒るのに?」「天とは喧嘩できない」「では,丁稚に水を掛けられても,瓦が屋根から落ちてきても,天のしたこと,『天災』だと思って諦めなさい」。
「天」のしたことは諦めるしかないかもしれませんが,「人災」はそうはいきません。衆議院厚生労働委員会で,原発事故による「放射線の健康への影響」について参考人陳述された,児玉龍彦東大アイソトープ総合センター長の動画を見ました。その熱弁からは,国の施設や,民間企業のノウハウをフルに活用して,緊急に子どもたちを被ばくから守ろうというメッセージが伝わり,心を打たれました。「7万人の人が自宅を離れてさまよっている時に,国会は一体何をやっているのですか」という最後の言葉は,我々にも向けられている気がします。
(編集委員 伊地知 修)

|