兼題「義理（ぎい）」
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(383) 永徳 天真 選 |
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天
城山古狸庵
祝儀銭義理で一枚あ余計入れっ
（つつんぜん 義理でいっめあ よけ入れっ）
（唱）悩んに悩ん気持っが大事
（唱）（なやんになやん きもっが大事）
人生の中の様々な祝事に対して、祝儀を包むかどうかは、その人との付き合いの深さが関係しており、それは自己判断となります。結婚披露宴などの祝儀を貰う方は、その祝ってくれる気持ちが大事で、金額にはさほどこだわらないでしょうが、贈る方の義理を考えて悩む心の動きと、決断の様子がよく詠まれています。
地
上町支部 吉野なでしこ
義理堅か月命日にゃ線香供げ
（義理がたか つきめいにちにゃ せんこあげ）
（唱）優し心い頭が下がっ
（唱）（やさし心い びんたがさがっ）
故人とどれほどの関係があったのかは、計り知れませんが、月命日にはいつも墓に線香が供げてあります。身内の者でも、墓参りが儘ならぬというのに、なかなか誰もができることではありません。
それほど慕われていたのかと、故人を思う家族にとっては、感謝の心でいっぱいのことでしょう。
人
清滝支部 鮫島爺児医
通り会義理で出たとに役く貰ろっ
（通り会 義理で出たとに やくもろっ）
（唱）断わいきれじまた増えた役っ
（唱）（ことわいきれじ また増えたやっ）
大なり小なり、会という名の組織の中では、その会を運営するために、会長がいて、世話役を含めた役員が必要です。
運悪く、役員決めの時の通り会に出席して、役員に推挙されました。
日常の真実を捉えて、後悔の気持ちがよく詠まれています。適任者と認められたので、奉仕の心で頑張りましょう。
五客一席 上町支部 吉野なでしこ
義理張いで我が所帯いっも火の車
（義理はいで わがしょていっも 火のくいま）
（唱）生爪を剥てでんせち諺ぜもあっ
（唱）（つめをへてでん せちことわぜもあっ）
五客二席 紫南支部 紫原ぢごろ
義理堅か患者が呉るい暑中見舞
（義理がたか 患者がくるい しょちゅうみめ）
（唱）感謝さるればそら嬉しこっ
（唱）（感謝さるれば そらうれしこっ）
五客三席 城山古狸庵
忘年会厳し課長いも義理で注っ
（ぼねんかい いみしかちょいも 義理でちっ）
（唱）割い切やならん辛れ処世術
（唱）（わいきやならん つれ処世術）
五客四席 城西 桃花
義理張いも所帯を考げっ加減しっ
（義理はいも しょてをかんげっ 加減しっ）
（唱）無理ゆばせんごっ分相応で
（唱）（むゆばせんごっ 分相応で）
五客五席 伊敷支部 矢上 垂穗
郷句詠ん義理で始めっ好きけなっ
（郷句よん 義理ではいめっ すきけなっ）
（唱）努力をばしっ目指すは名句
（唱）（努力をばしっ 目指すは名句）
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
義理があっ押した判子が仇んなっ
（義理があっ 押した判子が 仇んなっ）
義理と礼忘れちゃならん処世訓
（義理と礼 忘れちゃならん 処世訓）
講演会義理で行ったや良か話
（こえんかい 義理で行ったや よか話）
城山古狸庵
義理チョコも今年しゃ授らん結婚当初
（義理チョコも ことしゃまわらん といえはな）
紫南支部 紫原ぢごろ
義理の堅て順に届くいお中元
（義理のかて 順にとどくい お中元）
伊敷支部 矢上 垂穗
見合い婚義理が恋せえ変わっ良さ
（見合い婚 義理が恋せえ 変わっ良さ）
作句教室
作句のためのヒント
課題吟の作句では、その課題に関わりのある事象を捉えて句を詠む訳ですが、まず第一に、課題に対する考察が大事で、視野を広げる努力をすることだろうと思います。誰もが思い浮かぶ平凡な着想では、類想句が出てきて、共倒れとなってしまいますので、独自の視点や、着想の意外性を狙うことも必要です。
今月の課題「義理（ぎい）」、また「義理張（ぎ理い張は）い」の題で、渋柿会の大会等で入選した作品を紹介しますので、その着想の広がりということを考えてみて下さい。
太鼓三味線に義理で馬も踊いでっ
（てこしゃん に 義理でうんまも 踊いでっ）
久永 時盛
戻っきた笊い義理堅て返礼が載っ
（戻っきた しょけい義理がて ごれがのっ）
北山 如無
義理の通夜抜け易し戸口ち陣ぬとっ
（義理のつや 抜けやしとぐち 陣ぬとっ）
金井 一馬
音癖課長義理の拍手いまた歌とっ
（音癖かちょ 義理の拍手い またうとっ）
入来 創雲
郷中ん衆の義理買で持つい田舎店
（ごじゅんしの 義理けで持つい 田舎店）
安藤孟宗竹
義理の見合欠伸ぶ噛ん噛ん時計ゆ見っ
（義理のみえ あくぶかんかん とけゆ見っ）
川村 明
義理の子が悪りて我が子を泣て叱るっ
（義理の子が わりて我が子を ねてくるっ）
樋口 一風
義理じゃっちわかっちゃおいが嬉し歳暮
（義理じゃっち わかっちゃおいが うれしせぼ）
枦山 一球
義理張いの過ぎい隣とな肩が凝っ
（義理張いの すぎいつっとな 肩がこっ）
諸木 小春
唐芋どん食て義理張いの高価けメロン
（かいもどん くて義理張いの たけメロン）
有川 南北
義理張いに吝し亭主が目を見出っ
（義理張いに こましとのじょが 目をみでっ）
村田 子羊
薩摩郷句鑑賞 51
婆連れん提灯が地面をすぼっ来っ
（ばばづれん ちょちんがじだを すぼっきっ）
有馬 凡骨
初盆のことを「初精霊（にじょろ）」とか、「新客（にぎゃっ）」というが、その初盆の家には、親類や友人などが、提灯をおくるのが例である。貰った提灯は、墓や家に吊るして、新しい精霊を迎えるわけである。
この句は、腰の曲がった婆さんのために、提灯をうんと低くして、墓参りに連れていくところを詠んだものである。腰の曲がった老婆への思いやりがにじみ出ている。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
| 薩 摩 郷 句 募 集 ◎10 号 題 吟 「旅（たっ）」 締 切 平成23年９月５日（月） ◎11 号 題 吟 「 返事（へし）」 締 切 平成23年10月５日（水） ◇選 者 永徳 天真 ◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。 ◇応募先 〒892-0846 鹿児島市加治屋町三番十号 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係 ＴＥＬ 099-226-3737 ＦＡＸ 099-225-6099 E-mail：ihou@city.kagoshima.med.or.jp ホームページ：http://www.city.kagoshima.med.or.jp/ |
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