編集後記

 東日本大震災から3ヵ月余り。菅政権は迷走し,復興よりも与野党入り乱れての政争が繰り広げられています。仮設住宅入居者を除く避難・転居者12万人以上で,うち避難所で不自由で非衛生的な生活を強いられている人はいまだ4万1千人と発表されました。東北地方沿岸部の基幹病院の4割は復旧困難と報じられ,今後,感染予防,心のケア,保健指導,熱中症対策など中長期的な視点での医療支援が重要課題とされています。
 「誌上ギャラリー」は山口先生の鶴丸城のお堀に咲く蓮です。蜂の巣状の実をバックに泥水の中から生じた清浄な美しい花を撮られた苦心の作,ありがとうございます。
 「論説と話題」は島先生よりJMAT活動報告をご寄稿いただきました。第1班の県医師会チームに引き続き,第2班の市医師会病院チームとして3月20日から余震が続きライフラインが絶たれた北茨城市立総合病院を支援。通勤手段を奪われ病院に登院できない職員が多く,少ないスタッフの負担を減らすため外来診療と当直業務を代行されたとのこと,お疲れ様でした。
 「医療トピックス」では新上先生より新規発売の経口抗凝固薬プラザキサカプセルの紹介をいただきました。従来のワーファリン錠に比べ,モニタリングやそれに伴う用量調節が不要で避ける飲食物もなく使い易いようですが薬価が高いのが気になります。
 「学術」は倉岡先生より,イレウスを契機に発見された小腸脂肪腫をダブルバルーン小腸内視鏡にて粘膜切除術を施行した貴重な症例報告,内山先生からは妊産婦死亡の主な原因となっている産科出血の1つである帝王切開後の大量出血に対し動脈塞栓術による止血例を投稿いただきました。日本高血圧協会理事長の荒川先生が平成23年度鹿児島市内科医会総会で講演された食塩感受性と治療抵抗性の高血圧のまとめを掲載させていただきました。本態性高血圧は加齢昇圧現象ではなく,食塩摂取量に比例し,食塩感受性には個人差があることを疫学調査から機序まで解説され,治療は1に減塩,2に運動,3に降圧薬であるとご教授いただきました。
 「随筆・その他」では古庄先生より,各国で活動する看護師の図案の切手が紹介されています。いつも珍しい切手ありがとうございます。崔先生の旅行記シリーズは国内情勢不安定で観光客も少ない街全体が世界遺産のアラブの最貧国イエメン首都サヌア滞在記です。鮫島先生には80年前の甲突川の思い出をご寄稿いただきました。天保山に現在も残されている薩英戦争時の砲台の台座や第二次大戦時の掩体豪(飛行機格納庫),今は面影も無い船着場など懐かしい貴重な写真や写生は大事に保存されるといいですね。西橋先生は若き日に竜宮城の乙姫様を夢想された憧れの長崎鼻を35年振りに訪れ,公園や売店の現代風の様変わりに落胆されたようです。植松先生からは薬品名がギリシャ神話に由来することなどが記載されている興味深い「語源で学ぶメディカル・イングリッシュ550」の紹介です。リレー随筆の中村先生の撞球道楽に数十年前の学生時代の記憶が甦ってきた方は撞球に再挑戦されたらいかがでしょうか。
 「会長雑感」は4月24日に開催された日本医師会定例代議員会に出席された会長の報告・感想です。話題の中心は東北大震災で,東北3県の代議員からの報告を兼ねた質問,JMATなどで直接被災地を訪れた代議員の報告,意見に災害の大きさを実感され,今後の復興への思いを新たにされたとのこと。平成24年度に予定されている診療報酬・介護報酬の同時改定への作業の延期申し入れの表明・動議が出され,賛否両論で紛糾したが動議が取り下げられ,代議員会の良識が働いていることに安堵されたようです。
 国や行政の支援を待たずに被災地では多くの住民が助け合い,全国各地から各種ボランティア団体,医療関連団体などが駆けつけ,復興は徐々に進んでいます。東北に一刻も早く確かな安全と豊かな自然が戻ってくることを願っています。

                                    (副編集委員長 田畑 峯雄
                                    
                                   

このサイトの文章、画像などを許可なく保存、転載する事を禁止します。
(C)Kagoshima City Medical Association 2011