天
城山古狸庵
焼酎ん味ず覚えた頃にゃ異動いなっ
(しょちゅんあず 覚えた頃にゃ いどいなっ)
(唱)戻っきた時か相当な飲兵衛
(唱)(もどっきたとか じょじょなのんべい)
公務員などの転勤族の中には、こんな経験をされた方も多いと思います。
それは独身の頃で、離島や地方の焼酎を好む地域に赴任し、飲む機会の多い焼酎を飲む修業を積まれてきたのでしょう。
そんな土地にも慣れて、地元の人たちとも絆が出来た頃に別れとなり、思い出の多い第二の故郷になったことでしょう。
地
上町支部 吉野なでしこ
店屋物じゃっとに味ずば褒められっ
(てんやもん じゃっとにあずば ほめられっ)
(唱)手作いの時か褒めた事ちゃ無て
(唱)(手作いのとか 褒めたこちゃねて)
今日の夕飯は、いつもの手作りではなく、買った惣菜や料理で、それを上手に盛り付けた皿が食卓に並びました。
妻の味は、舌が覚えているはずなのに、夫はそれと知ってか知らずか、美味しいと褒めてくれました。かねて料理を褒めない人だけに、複雑な心境ですが、笑ってその場を遣り過ごしたのでしょう。
人
城西 桃花
震災の支援炊き出しゃ優し味
(震災の 支援たきだしゃ やさし味)
(唱)美味め美味めち笑顔で食っ
(唱)(うんめうんめち 笑顔でたもっ)
大災害に直面し、着の身着の儘で逃げてきた人たちの避難所生活は、当初大混乱でした。すべてのライフラインが遮断され、余震で眠れない夜も続き、行方不明者を思い、衣食住の不安も大変なものだったことでしょう。日が経ち、少し落ち着き始めた頃、やっと口にした温かい食事の味は、きっと忘れられないでしょう。
五客一席 清滝支部 鮫島爺児医
山頂で食た握飯の味じゃ格別っ
(山頂で くたにぎめしの あじゃちごっ)
(唱)元気も出たしどら下ろかい
(唱)(元気もでたし どらおりろかい)
五客二席 城山古狸庵
母親ん味ず誉めたが原因で実家て戻っ
(かかんあず 誉めたがもとで さてもどっ)
(唱)不要ん一言ち立腹けた女房
(唱)(いらんひとこち はらけたおかた)
五客三席 霧島 木林
一人住め稀けん恋し母ん味
(ひといずめ まねけんこいし かかん味)
(唱)野菜不足で食も偏っ
(唱)(野菜ぶそっで しょっもかたよっ)
五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ
新婚な大概な味でん褒めっ食っ
(新婚な でげな味でん ほめっくっ)
(唱)愛ゆ振い掛けた精一杯な料理
(唱)(あゆふいかけた せっぺな料理)
五客五席 上町支部 吉野なでしこ
河豚刺しを味も分からじぺろっ食っ
(ふぐさしを 味もわからじ ぺろっくっ)
(唱)呆え舌て奢や全で食せ損
(唱)(ぼえしておごや まっでかせぞん)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
郷句味じゃ奥が深して素晴らしか
(郷句あじゃ おっがふこして 素晴らしか)
流行い筈料理屋あ味で勝負ぶ決めっ
(はやいはっ じゅいやあ味で しょぶきめっ)
珍味言が白魚ん味じゃ好ん次第
(珍味ちゅが 白魚んあじゃ このんしで)
城山古狸庵
下戸が家ん焼酎は香もせじ味も無し
(下戸がえん しょちゅはかもせじ 味ものし)
良う味が染ん酢辣韮ん旨かこっ
(ゆう味が しゅんすだっきょん うまかこっ)
紫南支部 紫原ぢごろ
薬じゃち味じゃ無減塩食く食せっ
(くすりじゃち あじゃねげんえん しょくかせっ)
若者な味は二の次量で勝負
(わけもんな 味はにのつっ しこでしょっ)
伊敷支部 矢上 垂穗
被災地ん炊っ出しの味じ情が籠っ
(被災地ん たっだしのあじ じょがこもっ)
霧島 木林
年す取れば薄味の料理箸しゃ進ん
(とす取れば うすあっのじゅい はしゃすすん)
作句教室
郷句味について考える
薩摩郷句の生命となる郷句味を出すということは、なかなか容易ではなさそうです。それは、郷句味を測る物差しがないので、郷句味の度合は、心で感じ取るしかないからかもしれません。
次の句は、郷句味が足りないのではないかとおもわれる作品です。
爺が植えた椿が綺麗つ咲っ繁茂っ
(じが植えた つばっがみごつ さっほこっ)
作人の忙し田植え時期が来っ
(さっにんの いそがし田植え 時期がきっ)
カラオケも多人数で行けば歌と出せじ
(カラオケも うにしで行けば うとだせじ)
ただ単なる「そうですね」とか、「ああそうですか」といった説明や報告のような句は、郷句味が足りないために、読み手の心を動かすことが少ないようです。
その捉えた事象に、どう味付けをするかが、郷句味の出し所ですが、その郷句味とは、作者の心の動きであり、その事象に作者はどう思ったのか、どう感じたかを、表現する一工夫だろうと思います。
この三作品に、少し味付けをしてみました。下手な味付けかもしれませんが、郷句味について考えてみて下さい。
咲た椿き植えた亡爺さんぬ思め出せっ
(さたつばき 植えたじさんぬ おめだせっ)
作人の目の色が違ご田植え時期
(さっにんの 目の色がちご 田植えどっ)
カラオケい行たて多人数で歌と出せじ
(カラオケい いたてうにしで うとだせじ)
※薩摩郷句誌「渋柿」より一部抜粋
薩摩郷句鑑賞 49
田植え加勢子が泣っ方さへ植え行たっ
(田植えかせ 子がなっほさへ うえじたっ)
木藤ヤス子
土地によって多少差はあるけれども、いよいよ田植えの季節である。現在はほとんど機械植えになってしまったので、人手で植える姿など、めったに見られなくなってしまった。
ところで、田植えを手伝っている畦道で、連れてきた子が泣いているのだが、その方へ、苗を植えながら近づいて行くとは、いかに田植えが忙しいかを、実にうまくとらえている句だと思う。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎8 号
題 吟 「 義理(ぎい)」
締 切 平成23年7月5日(火) ◎9 号
題 吟 「 倹し(つまし)」
締 切 平成23年8月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
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