3月11日発生の東日本大震災で被害に遭われた関係者がいらっしゃる先生におかれましては心穏やかではない日々を過ごされておられることと心中お察し申し上げます。各地からいろいろな援助が行われていますが,市内からは逸早く震災当夜に吉原君(同病院救急部部長,中高大まで私の同期)を隊長とする市立病院のDMATチームが医療救助に出動しました。彼の帰鹿時のコメントから,重症患者さんは少なく,軽症を負ってでも生き残った人か津波に飲み込まれて死亡した人しか居なかったことを知り,改めて地震,特に津波の恐ろしさを痛感しました。すでに死者・行方不明者が2万人を超える未曾有の大震災となり,各所に影響が出ています。
3月12日に九州新幹線は全線開通しましたが,開業セレモニーは自粛中止され,初日3日間の乗車率は36%と低調でした。新大阪直通の新幹線の名前の一つは 『さくら』,日本人の桜好きの現れでしょう,特に良寛の辞世の句「散る桜 残る桜も 散る桜」にもあるように,散り際の潔さは良いものです。今回の誌上ギャラリーの 『市房の桜』,手前の太陽光を浴びて目映い感じさえする桜と湖面に映っている淡い桜とのコントラストが奇麗で,撮影のために歩き回られ,御苦労された山口淳正先生の渾身の一枚でしょうか。
散り際と言えば,本会にとって歴史的出来事となった看護学校閉校関連の記事は,論説と話題と附属施設だよりに出ています。私が入会した平成11年にはすでに存続についての検討がなされていましたから,12年という長い年月と当会の埋蔵金を減らしながらの閉校となりました。この閉校を決める際の代議員会は随分と紛糾し,それがトラウマになっていると当時の代議員をされた先生にお聞きしたこともあります。
別冊にあるように,第201回臨時代議員会で検査センターは執行部提案の経営改善6年プラン中止後の新体制案が可決され,実施されることになりました。事業継続については多くの議論をしましたが,今回も埋蔵金を利用しての事業の継続です。ここで言う「埋蔵金」とは資産負債差額(資産と負債の差額)を意味し,この用法の始まりは,高橋洋一氏の新刊「バランスシートで考えれば世界のしくみが分かる」中に 『大蔵省官僚時代に各種法人を賄う特別会計に存在する資産負債差額を指摘した際に,与謝野代議士に「おまえ,そんな霞ヶ関埋蔵金みたいな出鱈目なことを言うな」と怒られた』 と出ています。なので,現在,当会の埋蔵金がいくら有って,この12年でどうなったのかを知りたい方は決算書を調べると一目瞭然です。
今後,会館立て替え,医師会病院の立て替えなどさらに大規模な支出の見込まれる事業が控えていますが,埋蔵金を使い果たし,不足分を賄うために大幅会費値上げを実施せざるを得ない状況がこないことを切に願います。
学術は「かくれ心不全−心筋バイオマーカーで迫る−」という検査センター主催学術講演会の内容が掲載されています。専門外で卒業時と余り進歩のない知識しか持ち得ていない循環器系の話題でしたが,高血圧で治療中の身なので真剣に勉強しました。
会報の役割の一つである親睦を深めるという意味では,今回も多くの先生から随想を投稿頂きありがとうございます。常連の西橋弘成先生,鮫島 潤先生,先月から旅行記を連載中の崔 権一先生,リレー随筆の新牧大彦先生,本当に楽しく読ませて頂きました。また,吉村 望先生のタスマニア紀行にはセミリタイアされてもお元気にトレッキングを楽しまれた様子が伺われ,アウトドア系月刊誌Be-Pal愛読者としてはとても魅力的なお話でした。
丁度,医報が届く時には甲突川沿いの桜も見頃を迎えていることでしょう。桜吹雪の下で飲む花見酒は格別ですが,今年は少し控えてその分を義援金にまわそうかと思っています。みんなで出来ることから出来る範囲で震災復興にも協力できると良いですね。
(編集委員 島田 辰彦)

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