随筆・その他

リレー随筆

家庭菜園のススメ

北区・上町支部
(上山クリニック)    上山 教夫

 「自分で作った新鮮な野菜を食べたい。」それを実践したくて6年前,自宅の庭に約15坪ほどの畑を作りました。実は祖父が農業学校の先生で,その遺伝子を引き継いだのか,昔から農業に興味がありました。今の季節は大根,小松菜,キャベツ,レタス,ブロッコリー,サラダ菜,チンゲン菜,タマネギ,セロリを作っています。昨年11月には初めてサツマイモを収穫し,焼き芋や蒸かし芋にして食べましたが,自分で作ったということもあって,なかなか甘くて美味しかったです。
 そもそも野菜作りは,簡単!と思っていましたが,とても奥が深く,手間をかけないと良い野菜はできません。それだけに,失敗もありますが,立派な野菜を収穫できた時の喜びは大きいものです。また,自分でやってみると,農家の苦労がわかります。農家に感謝し,野菜をもっと大事に,残さず食べなければいけない!と思います。野菜を嫌いな子供が多いと聞きます。学校でも「食育」を盛んに進めていますが,是非ご家庭で野菜を作ってみては,いかがでしょうか!
 そこで「家庭菜園のススメ」です。有機栽培,無農薬野菜などのキーワードで家庭菜園は,今ブームになっています。ホームセンターに行くと色々な野菜の苗や種が売られていて,それを植えるとそれなりに育つのですが,上手に育てるにはちょっとした知識が必要です。まず,「土」と「肥料」を植える野菜に応じて調整しなければなりません。
 「土」は育てる野菜によって酸性に弱いか強いかで,石灰の量を加減します。酸性に弱い野菜は,ホウレンソウ,ナス,タマネギ等で,石灰を多く施しPHを6.0〜7.0にします。逆に酸性に強いのは,ジャガイモ,スイカで,PHを5.0〜5.5にします。従ってPH6.0以上の場合には石灰を散布する必要はありません。
 「肥料」は昔,理科で習った「窒素,燐酸,カリ」が植物の主栄養素ですが,他にも必要なものがあります。最近では,ホームセンター等でそれぞれの野菜にあわせた配合の肥料が売られているので,とても手軽です。
 また,野菜作りで失敗しないためには,連作障害を防ぐ対策が必要です。同じ場所で同じ野菜(または同じ科の野菜)を連続して作ることを「連作」といいますが,野菜の種類によっては連作することで土壌養分の均衡が崩れ生育障害を起こしたり,病気になりやすくなります。連作障害を防ぐには,「輪作」といって,野菜の種類を次々と変えて栽培することが大切です。
 作る野菜に応じて石灰を撒き,元肥,堆肥(植物などが腐敗した有機質肥料)を耕した畑に投入して,畝(うね)を作ります。これを「畝を立てる」といい,平畝と高畝に分かれます。水はけの悪い所では,高畝にします。平畝の場合は,植える野菜によっても異なりますが,高さ10cm幅60cmくらいが適当です。苗物(ナス,トマト,ピーマン等)は,苗と苗の間(株間)が50〜60cmくらい,種物(水菜,ホウレンソウ,小松菜等)はスジ播きが基本で,成長にあわせて間引きしていきます(それぞれの野菜の詳しい作り方は,野菜作りの本に詳しく書いてあるので,本格的に始めたいと思う方は是非1冊お求め下さい)。
 さて,野菜作りを始めて,面白いことに気がつきました。ジャガイモは,何科の植物でしょうか?実はナス,トマト,ピーマンと同じナス科の植物です。では,レタスは?これは,キク科になります。キャベツ,白菜はアブラナ科,では大根は?これもアブラナ科になります。イチゴは,果物?イチゴはバラ科の植物です。タマネギは,ユリ科になります。案外知らない方も多いと思いますので,話のネタにしてみて下さい。
 それから,野菜料理にも興味を持つようになりました。「野菜が主役のおかず」とか「野菜畑の料理教室」など蔵書が増えています。その中から,寒い季節は大根が美味しくなりますが,葉に近い部分,真ん中,しっぽで味も堅さも微妙に違います。葉に近い部分は,少し筋がありますが甘いので皮を厚くむいて,大根おろしやサラダで生食にすると美味しいです。真ん中の部分は,形が良いのでおでんや煮物,ふろふき大根に。しっぽに近い部分は辛みが強いので,汁の実やきんぴらなどの炒め物に使うと良いようです。
 患者さんの中には,現役の農家の方や,兼業で農業をしている方が大勢いて,診察の傍ら農業談義に花が咲きます。サツマイモは,収穫して,しばらくは軒先で「寒」にさらすと甘くなるとか,追肥は液肥の方が良いとか,ちょっとしたコツを教えてもらいます。時には,苗を頂くこともあります。診察に来ると私の畑を回診?して,水が足りない,肥料が足りないとアドバイスを頂きます。野菜作りで,コミュニケーションが広がったのは,副産物でした。
 現在,日本の食料自給率が40%といわれています。家庭菜園が広まれば少しは改善されるかもしれません。庭の一部を畑にするか,プランターに土と肥料を入れて,野菜を育て収穫し,それを食べる。自分で育てた野菜は安全で,きっと美味しいと感じるはずです。子供たちの野菜嫌いを克服するためにも「家庭菜園のススメ」!是非,興味をもって始めてみては,いかがでしょうか。
 


次号は、村岡内科の村岡敏宏先生のご執筆です。(編集委員会)




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