=== 新春随筆 ===

シアトルを訪れて



鹿児島大学医学部保健学科
母性・小児看護学講座 教授

           吉留 厚子
 8月9日から16日に,シアトルに姪とふたりで出かけました。彼女は中学1年生で,アメリカと生の英語に触れさせるために一緒にでかけました。そして,わたしの中学以来の友人に会うことも大きな目的でした。10月に羽田空港から国際便の定期便が離発着することにより,空港のハブ化が大きな問題として取り上げられていますが,わたし達は福岡空港から仁川(インチョン)国際空港へ飛び,仁川国際空港からアシアナ航空直行便でシアトルへ出発しました。仁川国際空港は何度か利用したことがありましたが,やはり大きく,地方空港から海外へ出発するには便利な空港です。無事に飛行機に乗り込みシアトルへ到着しました。
シアトルの街
約10年前シアトルを訪れた際に,入国審査で日本のビジネスマンが滞在するホテルの名前が分からないことで随分もめていたことを覚えていましたので,ESTA(電子渡航認証システム)は完璧,入国した際の滞在先の住所 (友人宅)もきちんと記載していたのでスムースに入国できると思っていました。姪といっしょに入国審査を受けたところ,入国審査官は「何の目的か」…友達に会うため,「いつからの友達か」…中学校以来の友人,「何年間の友人か」…40年以上,「何日間いるのか」…6日間,「ふたりの関係は」…私の姪。次に,姪に向かって「二人の関係は」…姪は無言(英語の意味が分からない),私は小さな声でauntと言うが,姪は何も言わない。次に,「彼女の父親の仕事は」…工場で働いている(適当に話した)。まだ続くのかなと思っていたところ,ファイリングしているEチケットを手に持っているのを見つけて,見せなさいといわれたので,すぐ手渡したところ,その後は特に何も言われずすんなりと入国できました。帰国する飛行機便が記載されていたので,アメリカから出て行くことが分かり安心されたのでしょう。9. 11テロ事件の後,入国は厳しくなっていました。友人の旦那さん(アメリカ人)が迎えに来ている予定だったのですが,出口をでても見つからず,結局お互い違う場所で待っていたのです。何とか会うことができ,友人宅へと向かいました。
 沢山のお土産をもっていきました。この中には「篤姫」のDVDも含まれていました。特に浴衣とあんこのはいったお菓子は喜ばれ,夜は篤姫シアターを楽しみました。友人の幸子はボーイング社に勤務していて,日本語と英語が完璧なので,交渉のために日本へ訪れることがありますので,2年ぶりの再会でした。その日にセイフィコ・フィールドにマリナーズの応援に行きました。NO.51(イチロー)の守るライトの席を購入しました。以前,佐々木主浩選手が在籍していたときにも観戦したのですが,野球を観る前の準備として,7回の裏の前に歌う「わたしを野球場につれていって」を練習して臨みました。今回も当然歌いましたが。イチロー選手を近くで見ることができ,アメリカ人,東洋人,そして日本人の多くが応援していて人気者でした。写真は小さく写っていますがイチロー選手です。思い切り大きな声で応援したので,すっきりしました。姪と売店で食べ物を買ったとき,彼女が「ウォーター」といいましたが,通じませんでした。発音が違うなあと思って聞いていましたので,仕方ありません。これも経験です。ファーストフードでは,一人で食べ物を買わせるようにしていました。本人は,内心どきどきだったのかも知れませんが,その時もその後も何も言いません。

  
セイフィコ・フィールド

PIKE PLACE FISH MARKET(魚市場)

51 イチロー選手

 レストランで食事をすると,とにかく量が多く,わたし達日本人は食べ切れませんので,姪の提案で,ふたりで1つのものをシェアすることにしました。以前は気づかなかったのですが,太った人が多く,それも日本では見かけないほどの体型です。姪は「日本では太った人を見ることが珍しいけど,アメリカではやせた人を見ることが珍しい」と言いました。食べる量も多く,食べ残しも多いので「もったいない」と日本人らしく感じていました。パンケーキを注文すると30cm以上もあるようなものが出され,全部を食べることはできませんでした。1987年から90年の3年間東海岸のニュージャージーに住んでいましたが,そのときは太っている人をあまり見かけることはありませんでしたし,レストランの食事の量も多いとは感じていませんでした。幸子が言うには,最近レストランで出される1品の量が多くなり,それが良いレストランの基準とされていると話してくれました。この国では生活習慣病がどれくらい問題になっているのかなと疑問に感じてしまいました。
 わたし達はOutlet mallへショッピングに出かけました。いっしょに出かけた友人たちのなかに綺麗なアメリカ人の娘さんがいまして,3ヶ月の赤ちゃんをもつお母さんでした。ショッピングの途中,ふと見ますと,ベンチで赤ちゃんに母乳を与えているのです。びっくりして,このように赤ちゃんに母乳を与えるのですかと尋ねると,人が行きかうところで母乳を飲ませるのは普通とのことです。そして,誰も注視していく人もいませんでした。写真を撮っていますが,残念ながら載せることはできません。とても上手く乳房等を隠して飲ませていました。滞在中にもう一人,通りのベンチで授乳をしているのを見かけました。今年のある学会の報告で,「母乳を与えるための設備が少ないのでもっと増やすべきです」と発表がありましたが,今回のアメリカ旅行での母乳を赤ちゃんに与える姿を見ていますので,疑問に感じました。日本も一昔前は,電車の中や通りでお母さんが赤ちゃんに母乳を与える姿を見ることは普通でしたが,今は家の中か授乳室のある施設の中でしか見ることはできません。わたしがアメリカに住んでいた3年間では一度も,街のなかで母乳を与える姿を見たことがありませんでした。もしかしたら,母乳育児についてアメリカ人の意識が変化してきたのかもしれません。母乳を赤ちゃんに与えることは日常生活の一部でしかありません。今後,日本も日常生活の行動のなかで気軽に母乳を与えることができると良いのですが,そうすれば母乳育児がより推進されるかもしれません。
 片道6時間ほどドライブして山の中にあるリゾート地であるスモールタウンに2泊しました。いかだによる川下りが目的だったのですが,水が少ないということで,浮き袋のようなチューブで川下りをしました。山からの水なので冷たく,太陽はさんさんと輝き,楽しいひと時でした。アメリカは広く,アメリカ人は,自然や遊びを楽しむ方法を良く知っています。
 2回目のシアトル旅行でした。イチロー選手のプレーを観ることができましたし,友人ともゆっくり話すことができました。次はいつ訪れることができるのでしょうか。




このサイトの文章、画像などを許可なく保存、転載する事を禁止します。
(C)Kagoshima City Medical Association 2011