天
清滝支部 鮫島爺児医
良か手相ち占ねじゃ出たて早よ逝たっ
(よかてそち 占ねじゃでたて はよいたっ)
(唱)運命ち思もが手相見を恨ん
(唱)(さだめちおもが てそみをうらん)
手相で運勢を占ってもらって,生命線もくっきりと長く,長生きすると告げられたことを,皆に自慢していたのでしょうが,不幸は突然におとずれ,なんとも罪作りな占いだったようです。
この作品の原句の中七は,「自慢の占ね」でしたが,下五との言葉のつながりを考え,表現を少し変えてみました。
地
紫南支部 紫原ぢごろ
探け物ごろいと占ね頼ん込ん
(みしけもん ごろいと占ね たのんこん)
(唱)東南西の方角き有っ言っ
(唱)(東南西の ほがきあっちゅっ)
物忘れによる探し物は,なかなか見つからないもので,その時間の浪費を腹立たしく思うことはしばしばです。
しかし,なければないで大抵は代替えができるのですが,よっぽど大事な品物だったのでしょう。
最後の望みを,占い師に託す執念が,中七でよく表現されています。
人
武岡 志郎
花なんだ全部毟った恋占ね
(花なんだ ずるっむしった 恋占ね)
(唱)菊の花でな時間もかかっ
(唱)(きっの花でな 時間もかかっ)
生年月日や血液型,生まれた月の星座などから恋の行方を占う恋占いは,特に女性には人気があるようです。
そんな中で,相手のことを想いながら,「好き,嫌い」と花びらを一枚ずつぎ取っていく,この残酷な行為を誰が恋占いと名付けたのでしょうか。恋の行方よりも花が哀れでなりません。
五客一席 城山古狸庵
占ねでな良か相性んはっじゃった
(占ねでな よか相性ん はっじゃった)
(唱)愛情がちょっち足らんかったろ
(唱)(あいじょがちょっち たらんかったろ)
五客二席 霧島 木林
相っ貰ろた将来か真っ暗ち出た占ね
(みっもろた さかまっくらち でた占ね)
(唱)悪か予感が見事い当たっ
(唱)(わいか予感が 見事い当たっ)
五客三席 川内つばめ
占ねをば見っ宝籤じょ買どん当たらせじ
(占ねをば みっくじょこどん あたらせじ)
(唱)似た様な衆共がおいやいもんじゃ
(唱)(にたよなしどが おいやいもんじゃ)
五客四席 武岡 志郎
金運ね恵っ占ね見料を少すはずん
(かねのさっ 占ねけんりょを ちすはずん)
(唱)有い難てちそん気持が大事
(唱)(あいがてち そんきもっが大事)
五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ
占ね師は玉虫色ん妙だお告げ
(占ね師は 玉虫色ん すだお告げ)
(唱)かえっちゃ胸い痼いが残っ
(唱)(かえっちゃ胸い しこいが残っ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
占ね師も職く間違ごたか貧乏しっ
(占ね師も しょくまっごたか びんぶしっ)
七五三祝いで占ね全部吉
(七五三 祝いで占ね ずるっきち)
占いが値段で変わっ不思議じゃっ
(うらないが 値段でかわっ ふしっじゃっ)
城山古狸庵
占ね師も吾が運勢は当てられじ
(占ね師も わが運勢は あてられじ)
高け見料払ろたや当あたろそな占ね
(たけけんりょ はろたやあたろ そな占ね)
パソコンの占ねじゃかった勘にこじ
(パソコンの 占ねじゃかった かんにこじ)
紫南支部 紫原ぢごろ
大吉の占ねん籤は財布ぜ入れっ
(だいきっの 占ねんくしは ふぜいれっ)
占いは努力次第で叶のち言っ
(うらないは どりょっ次第で かのちゆっ)
伊敷支部 矢上 垂穗
尖閣で国政占ね将来が心配
(せんかっで 国政占ね さっがせわ)
作句教室
第8号に続きまして,薩摩郷句集「ひとっば」の中から,健康や病気,医療に関する作品を紹介します。
作品その二
苦げあ無で効かんとじゃ無かこん薬
(にげあねで きかんとじゃねか こんくすい)
佐伯 山神
溜まらんで良かとに溜まい体脂肪
(たまらんで よかとにたまい 体脂肪)
佐澤汽車道
詳しゅ診い医者んカルテい目が走っ
(くわしゅみい 医者んカルテい 目がはしっ)
新地 十意
退院も決まっ早速髭を剃っ
(退院も きまっさしつけ 髭をそっ)
鈴木 芳子
医者ん都合正月ちゃ帰れち許可を出っ
(医者んつご しょがちゃもどれち 許可をでっ)
谷口 雲城
きっぱいと焼酎を断たせた血糖値
(きっぱいと しょちゅをたたせた 血糖値)
種子田 寛
飢りかち言出た病人に笑れが出っ
(ひだりかち ゆでたびょにんに われがでっ)
津曲とっこ
手術った後て栄養を付けち優し医者
(きったあて えいよをつけち やさし医者)
永里つる女
病院嫌れ婆ん余いの薬ゆ飲ん
(びょいんぎれ ばばんあまいの くすゆのん)
中村 雲海
介護疲れ気力で乗い越えひと頑張い
(介護だれ あやでのいこえ ひときばい)
永吉 正子
時時きな天の怨んだ亭主ん看病
(とっどきな 天のうらんだ ととんかびょ)
西 幸子
往診の医者ん笑顔が薬いなっ
(往診の 医者ん笑顔が くすいなっ)
西迫 順風
鼻筋が通っ美人じゃち産の見舞
(はなすっが とおっシャンじゃち さんのみめ)
西ノ園ひらり
呆し脈き狼狽ろでけた若か医者
(ぼやしみゃき ばたぐろでけた わっか医者)
橋口 笑二
薩摩郷句鑑賞 42
懐どがゆつらしゅなれば客か絶えじ
(つくらどが ゆつらしゅなれば きゃかたえじ)
詫摩 芳
出世すると,親戚が増えるという。他人に等しいような遠縁の者までが,親戚だといってやってくるものである。
同じように,生活が苦しく,貧しい日々を送っている時には見向きもしなかった人たちが,事業にでも成功して金がたまると,掌を返したようにやってくる。人間なんて誠にあさましいものである。
「ゆつらしゅ」は,「ゆとりのあること」とか,「裕福なこと」と解すればよかろう。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎新年号
題 吟 「 化粧(けしょ)」
締 切 平成22年12月6日(月) ◎2 号
題 吟 「 心配(せわ)」
締 切 平成23年1月5日(水)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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