随筆・その他
ち ゃ り ん こ ラ イ フ
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お出かけの際,皆さんはどのくらいの移動距離でその手段を車で,とされているでしょうか?時と場合によりけりだとは思いますが,意外とその距離は短いのではないのでしょうか?以前私もその判断はラクで所要時間の短い手段を選択していて,ほんの近所は徒歩,その周辺は自転車,それ以遠は車という概念でした。ある日,たまった小遣い(へそくり?)の使い道を考えていたところ,自転車を思いつき購入。それに乗り出すと少年時代に戻った様にのめり込み,昨年は“ツール・ド・国東”という仏の里と言われる大分県国東半島一周約160kmを走るレースを完走するほどになりました。
ということで,本稿の依頼が中村安俊先生(中村レディースクリニック)よりあってしばらく色々題名を検討しましたが,結局趣味の話になりました。自転車を趣味とされている先生方も多いと思いますが,私と自転車について述べさせていただきます。
自転車は少年時代より大好きで,小学2年時親に叱られて家出(プチ)した時も自転車が一緒でした。近所にあった自動車学校(現在は厚生連病院)の教習終了後のコースをサーキットコースに見立てて友人たちと競争したり,廃材置き場(現在はマンション)などをクロスカントリーコースに見立てて駆け廻ったりして過ごしていました。また高校・大学は自転車通学でしたし,社会人になってからも病院の駐車場スペースの問題で自転車通勤のところもありました。しかし,自然と車に乗る機会が増え,病院では患者さんに生活習慣病の運動療法の手段として勧めておきながら,自転車に乗る機会が減っていました。
そこに自転車が久しぶりに再登場した訳です。自転車は運転免許も要らず,ガソリンも消費せず,CO2も排出せず,人間の力だけで行動範囲を広げてくれる,エコでまるで魔法の道具なのです。自転車いわゆる“ちゃりんこ”といえば“ママチャリ”をよく見かけますが,最近の自転車は,長距離を速く走るため軽量化した車体に細いタイヤのロードバイク,野山を駆け巡るためサスペンションの付いた車体に太いタイヤのマウンテンバイク,また両者の機能を備えたクロスバイク,ほか乗りやすい様にタイヤサイズを小さくした小径車など,様々な車種があります。価格も1万円前後で手に入るような手軽な物から,100万円を超える軽自動車なみのイタリア製高級車まで様々です。
最初に購入した自転車はロードバイクでした。購入した自転車店で“ツール・ド・おおすみ”のポスターを見かけ,完走可能か,またこの様な大会では自転車のパンクなどのトラブル時セルフレスキューが基本と知り,実際できるかどうか不安を覚えながら鹿屋〜大根占往復60kmのコースにエントリーしたのをはっきり覚えています。大会当日スタート・ゴールの鹿屋ばら園まで車載にて移動したのですが,既に垂水港より自転車の自走にて会場に向かっているツワモノどもに驚きました。会場に到着するとみんなウェアも決まっていてさらに不安がよぎりましたが,錦江湾岸のなだらかな海岸線のコースをなんとか無事完走できました。その後“サイクルマラソン天草”で天草下島一周約130km,“坊・野間ユッタリング”で加世田〜枕崎〜坊津〜笠沙〜大浦〜加世田の約90km,“球磨川センチュリーライド”で八代・人吉往復90km,“サイクルツアー北九州”で北九州市内1周160km,そして“ツール・ド・国東”の160kmなどの大会出場や,普段きままに指宿往復,垂水に渡り錦江湾岸1周など,これまで車でしか走ってなかった道を自転車で走ることに快感を覚えます。また,さらにマウンテンバイクも購入し,旧金峰町にあるコースや阿蘇にあるコースを走ることもあります。
自転車では登坂が一番苦しいところです。10km/hで走り続けることも困難なこともありますが,その間はひたすら前へ進むことばかり考えるだけで,仕事のことなど完全に吹っ飛んでいます。その先には必ず下りがあり,60km/hほど出ることもあるこのスピードはそれまでの汗だくでの苦労を忘れさせてくれます。しかし,やがてまた上りがやって来てまるで人生模様です。そして,ようやくゴールした時の達成感は格別です。
今夏は桜島の降灰にまいりました。これから寒くなりますが,これからも楽しく走り回りたいと思っています。そして,いつか尾道・今治間のしまなみ海道を完走するのが今の私の夢です。

| 次号は、桜ヶ丘内科胃腸科の市来秀一先生のご執筆です。(編集委員会) |

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