天
清滝支部 鮫島爺児医
見掛けよか味で勝負ん祖母ん団子
(みかけよか あっで勝負ん ばばん団子)
(唱)年季が入った優し味じゃっ
(唱)(年季が入った やさしあっじゃっ)
昔の鹿児島の家庭では、彼岸や節句、盆、十五夜など、季節毎に団子を作っていましたが、その物作りも廃れつつあるのが現状で、侘しさを覚えます。
しかし、今でも手作りの団子を欠かさない家もあるでしょうし、祖母の作る団子を、見た目は素朴でも深い味わいがあると、高く評価されています。
地
紫南支部 紫原ぢごろ
しんこ団子縦と横かあかぶいちっ
(しんこ団子 縦と横かあ かぶいちっ)
(唱)唇が汚れん食かたいも技
(唱)(すばがよごれん くかたいもわざ)
「かごしまの味」という本には、しんこだんごは直径二・五センチほどの米の粉だんごを五個、細い竹グシにさし、一度煮たたせ、ダシでのばしたしょうゆにさっとひたし、炭で直火焼きすると、書かれています。竹串が唇や口の中を刺さないように、注意しながら団子を食べている様子が、実に滑稽に詠まれています。
人
錦江支部 城山古狸庵
団子店ん匂いつられっ買て帰っ
(団子店ん かざいつられっ こてもどっ)
(唱)一本試食くさせ言う酔れ
(唱)(一本ししょくさせ ちゅうよくれ)
これぞまさしく、しんこだんごの匂いでしょう。かつて鹿児島市の繁華街の一角で夜、屋台焼きをして売るしんこだんごを買って食べたことを思い出す人もいるかもしれません。
なんともいえない、焼いたしょうゆの香ばしいかおりに誘われて、つい買ってしまいましたが、いい土産ができました。
五客一席 伊敷支部 矢上 垂穗
初盆にゃ団子ん傍れ添えた焼酎
(初盆にゃ 団子んかたわれ そえたしょちゅ)
(唱)精霊さあどうか食やい飲んみゃい
(唱)(しょろさあどうか くやいのんみゃい)
五客二席 霧島 木林
団子汁あたいが好っな婆ん味っ
(だごんしゅい あたいがすっな ばばんあっ)
(唱)小け時かあ食ておじゃしたろ
(唱)(ちんけとっかあ くておじゃしたろ)
五客三席 紫南支部 紫原ぢごろ
しんこ団子噛んちっかたい首ぶ捻っ
(しんこ団子 かんちっかたい くぶひねっ)
(唱)串が刺されば口が流血
(唱)(串が刺されば くっが流血)
五客四席 清滝支部 鮫島爺児医
六月灯しんこ団子が懐かしゅし
(ろっがっど しんこだんごが 懐かしゅし)
(唱)久振い食て思め出した味
(唱)(さしかぶいくて おめだしたあっ)
五客五席 錦江支部 城山古狸庵
団子よっか焼酎ん方が良ち月見客
(団子よっか しょちゅんほがえち 月見きゃっ)
(唱)義理でん食わにゃ焼酎は出っこじ
(唱)(ぎいでんくわにゃ しょちゅはでっこじ)
秀 逸
錦江支部 城山古狸庵
供えたや直き無ごっない月見団子
(供えたや じきねごっない 月見団子)
紫南支部 紫原ぢごろ
口の端て醤油が塗いちたしんこ団子
(くっのはてしょいが ぬいちたしんこ団子)
清滝支部 鮫島爺児医
戦時中唐芋団子なんだ貴重品
(戦時中 いも団子なんだ 貴重品)
霧島 木林
今日も団子きな粉い小豆飽っがきっ
(きょうも団子 きな粉いあずっ あっがきっ)
作句教室
方言辞典での「しんこだご」が興味深い内容でしたので、参考まで紹介します。
鹿児島方言大辞典(上) 橋口 満著
(1)串団子。餡粉団子を串刺ししたもの。
(2)粉団子に餡をつけたもの。盆に客に出す。シンコダンゴ(粉団子)の転訛。
都城 さつま 方言辞典 瀬戸山計佐儀著
米粉を水で和して団子を作り、四、五個を竹串に刺し、煮てから醤油をまぶし火で焙ったもので、餡をまぶすこともある。(室町時代に、加世田の深固院の石せき屋おく真梁師が落穂を拾って作ったのに始まる。)シンコダンゴ(深固団子)の転訛。
今月の題「団子(だご)」は、身近な素材ですので、郷句会等の課題として過去にも多く出されています。「渋柿」誌の中からその秀句をいくつか紹介します。
着想や表現力、そして郷句味について、参考になるのではないかと思います。
大て団子い思案の箸引っこめっ
(ふて団子い 思案のてもと ひっこめっ)
有馬 凡骨
畦ぜ届じた団子い田植えん腰す伸べっ
(あぜとじた 団子い田植えん こすのべっ)
瀬戸口凡句良
夫婦暮らし昼飯な団子でけすませっ
(みとぐらし ちゅはんな団子 でけすませっ)
福園 東風
しんこ団子臍どんつねっ燠い乗っ
(しんこ団子 へそどんつねっ おきいのっ)
抜水 凡々
自在鉤の鍋い投げ込だちぎい団子
(じぜかっの 鍋い投げ込だ ちぎい団子)
倉元 天鶴
団子鼻を千両笑凹が可愛ぞ見せっ
(団子鼻を せんりょえくぼが むぞみせっ)
平中 小紅
節句の団子出稼っ亭主い先き送っ
(せっの団子 でかせっととい さきおくっ)
久永 時盛
喧嘩あと焼酎ん肴い団子を出っ
(喧嘩あと しょちゅんしおけい 団子をでっ)
堂園 三洋
薩摩郷句鑑賞 40
不精女房女だまかし毛布洗れ
(ふゆしかか おなごだまかし けっとあれ)
上床 余音
「八朔(はっさっ)の女(おなご)だまかし」などといって、八朔の頃、急に朝夕冷え込んでくることがある。もちろんそのまま寒くなるわけではないのだけれど、主婦など、あわてて冬物の準備などに取りかかったところから、この言葉が生まれたものであろう。
物ぐさな、億劫がり屋の奥さんも、毛布などを洗濯して、冬仕度を始めたところを詠んだもの。「女だまかし」が効いている。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎11 号
題 吟 「 占ね(うらね)」
締 切 平成22年10月5日(火)
◎12 号
題 吟 「 後悔(くけ)」
締 切 平成22年11月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
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