緑陰随筆特集
嫁と「ゆめ」と私 |
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仁愛会病院 リハビリテーション科 言語聴覚士
樋渡健太朗
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最近,ペットブームにより,鹿児島も10年前に比べると,ペットショップやペット関連商品を扱うお店が増え,動物を飼う家庭も増えてきています。犬においては日本ではおよそ5世帯に1世帯が飼われていると言われています。わが家においても例外では無く,今年の1月31日に妻の知人を介して雑種犬♀を飼い始めました。実は犬を飼うのは今回が初めてではなく,私の実家では7年程前まで飼っていました(享年21歳)。さらに,妻の実家に至っては生粋の犬好き一家で,現在も2匹飼っています。私達夫婦にとっても,犬を飼い始めるのは時間の問題でした。
さて,我が家の一員となったこの犬の名前は「ゆめ」と言います。名前の由来は,私たち家族に夢を叶えてくれる犬であって欲しいという願いを込めてこの名前をつけました。しかし,飼い主の想いとは違い,飼い始めの頃はとても大変でした。元の飼い主がいた環境と異なり,変化に気づいたのでしょう。泣くわ,鳴くわの連日連夜,私達夫婦の平均睡眠時間30分。疲弊して朝,職場へ向かう逆転現象が起きてしまいました。でも,赤ちゃんの特権なんでしょうね。世話をしている時の愛くるしさに私達の疲れを忘れさせ,癒しを与えてくれます。
飼い始めて半年近くになりますが,「ゆめ」は普段あまり吠えません。吠える時はある特定の場面です。それは,自分で掘った穴に吠える事です。そもそも「ゆめ」はビーグルの血が1/4入っており,元々ビーグルはウサギ狩猟に用いられていたそうです。ウサギは穴の中で生活するので,狩猟ビーグルは穴目掛けて,さらに掘り,ウサギを追い込んでいくのでしょう。DNAというのは素晴らしいもので,「ゆめ」も同じく穴を掘り,何もいない穴へ一所懸命吠え,飼い主に知らせます。ご近所さんからも「ゆめちゃん元気だね,最近は猫の盛りだからね,吠えるでしょ」とお声を掛けて頂くのですが,「実は穴に吠えているんです」と本当の事を話すと大笑い。ご近所さんとのコミュニケーションにも一役買ってくれています。
私達夫婦の職種は言語聴覚士です。言語聴覚士の仕事は,話すことや聴くことの障害や食べることに障害をもった方々に助言・支援を行う職種です。「ゆめ」が家族になるまで,私達夫婦の会話は仕事の話が多かったのですが,最近は犬中心の会話。これからは新しい家族(My baby)が増え,きっと温かい家庭を一緒に築いてくれるパートナーになり,命の大切さも教えてくれるはずです。
命というのは永遠ではありません。永遠ではないからこそ今,この時間を大切に過ごしていきたいと思います。

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