緑陰随筆特集

鹿児島県小児救急電話相談事業の現状と課題
鹿児島大学医学部保健学科 母性・小児看専学講座 講師
                                 山下 早苗

はじめに
 保護者の不安軽減と,夜間における小児科への患者集中緩和を目的とした「小児救急電話相談事業」が,鹿児島県でも平成19年8月20日よりスタートしました。事業を開設してから3年近く経過し,相談員の立場から,この事業を推し進めていくための課題がみえてきましたので報告いたします。

電話相談件数の推移
 鹿児島県小児救急電話相談(♯8000)事業開設から平成22年4月までに寄せられた相談は,12,363件でした。開設当初年と比較すると相談件数は徐々に多くなっており,現在1日平均15件で,県民の利用ニーズは高くなってきています(図1)。


                図 1. 相談件数の推移

相談対応の現状と課題
 現在,小児看護実務経験を有した看護師や保健師が,19:00〜23:00の4時間,1名/日(1回線)で対応しています。登録している相談員は9名いますが,1回/月の業務しかできない相談員もおります。今後,相談件数の増加に伴って2回線で対応する必要に迫られることも考えられ,相談員の確保が不可欠です。関係機関を通じて公募を続けておりますが,なり手が少なく相談員を確保することが難しい現状です。
 数名の相談員が輪番で対応することから,様々な相談への対応に個人差が出ることが危惧されます。また,顔が見えない電話相談ならではの問題や相談員のストレスもあります。そこで,相談員は2ヶ月に1回の研修会を企画し,相談を受けた事例を基に情報交換と確認を行っています。この研修会を通して,相談対応の質を保証するために,鹿児島県独自の相談対応マニュアルを作成し,平成22年3月に発刊しました。今後も,研修会や勉強会の企画,学会等への参加を積極的に行い,県民の利用ニーズに対応できるよう質向上に向けて努力していきたいと思います。
 是非,関係機関の皆様に,相談員の確保と相談対応の質保証に対するご支援とご協力をお願い致します。

居住地別の相談現状と課題
 居住地別では,子どもの数が多い鹿児島市からの相談が最も多い現状ですが,離島・へき地からの相談も少なくありません(図2)。
 地域によって夜間・休日の当番医体制に違いがあり,当番医が小児科医でない場合,「当番医に電話したところ『子どもは診れません』と言われました。どうしたらよいでしょうか」という相談があります。その相談の中には,相談員が子どもの状況を確認すると,受診した方がよいという事例が含まれていることがあります。是非,当番医による小児救急医療体制を,どの地域でも可能にして頂きたいと切に願います。


図 2. 居住地別の相談状況
   (平成21年4月〜平成22年3月)




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