天
紫南支部 紫原ぢごろ
滑とけっ何よっか先周囲ゆ見っ
(ずめとけっ ないよっかさき ぐるゆみっ)
(唱)怪我はなかなち 嬉し一言
(唱)(怪我はなかなち うれしひとこっ)
冬場の雪道や風呂場のタイルなどで、滑りの体験は皆さんあると思いますが、濡れている床や道、そして桜島の火山灰でも滑ることがあります。
運悪く滑って転んでしまい、誠にばつが悪い状態を中七でうまく表現されています。頭を打ったり骨折をすると大事ですので、滑らないように注意して下さい。
地
清滝支部 鮫島爺児医
総理せか辞むれば周囲や閑古鳥
(総理せか やむればぐるや かんこどい)
(唱)後味が悪り 辞め方をしっ
(唱)(あとあっがわり やめかたをしっ)
風と共に去っていった鳩山総理の辞任劇は、一体何だったのでしょうか。
総括する暇もなく、すでに新しい政局の担当となり、あれだけ騒がれていたのに、今となっては過去の人となりました。
同じことが繰り返されている、日本のトップの挿げ替えにはうんざりといった感じです。
人
川内つばめ
裸けなっ腹を周囲と見比べっ
(はだけなっ 腹を周囲と みくらべっ)
(唱)鏡に写い 様あ無か腹
(唱)(鏡にうつい ざまあなか腹)
私たちは人を観察して、多少の着痩せや着太りはあっても、見た目でその体型を認識します。しかし、それが裸になると一目瞭然で、その見た目とは違う体型に驚きを覚えることがあります。
浴場やプールの脱衣場で裸になって、気になる腹の出具合を、勝った負けたと比べている様が滑稽です。
五客一席清滝支部 鮫島爺児医
こら暑か周囲ゆ見てから取い鬘
(こらぬっか ぐるゆ見てから といかつら)
(唱)鬘じゃ無かち 大方思ちょっ
(唱)(鬘じゃねかち うかたおもちょっ)
五客二席錦江支部 城山古狸庵
倒産で周囲はずるっひん逃げっ
(倒産で 周囲はずるっ ひんにげっ)
(唱)冷たか娑婆ん こいが現実
(唱)(つんたか娑婆ん こいがげんじっ)
五客三席紫南支部 紫原ぢごろ
鬱いなっ周囲が全部偉ろ見えっ
(うついなっ 周囲がずるっ えろみえっ)
(唱)余計な事どま 考げんこっじゃ
(唱)(よけなこっどま かんげんこっじゃ)
五客四席伊敷支部 矢上 垂穗
桜島周囲い同しこ灰を配っ
(桜島 ぐるいひとしこ へをくばっ)
(唱)風向っ次第で あっちこっちい
(唱)(かざむっしでで あっちこっちい)
五客五席 霧島 木林
周囲からおんぶに抱っこ縮こまっ
(周囲から おんぶにだっこ ちぢこまっ)
(唱)我で考げっ 我で行動
(唱)(わがでかんげっ わがで行動)
秀 逸
錦江支部 城山古狸庵
周囲かあ煽げられっ立候補
(周囲かあ もっちゃげられっ たっちゃがっ)
周囲ん衆チョコを配いが効っ目無し
(周囲んし チョコをくばいが きっめのし)
周囲にな博士大臣見当たらじ
清滝支部 鮫島爺児医
ぼた餅の周囲ゆ先き食っ飯しゃ残けっ
(ぼたもっの ぐるゆさきくっ めしゃのけっ)
伝染病で周囲が心配な小児科医
(うついびょで 周囲がせわな 小児科医)
紫南支部 紫原ぢごろ
老齢じゃっで運転は止めち周囲や騒動
(としじゃっで まくいはやめち ぐるやそど)
川内つばめ
周囲ゆ見りゃどげな車も灰を被っ
(ぐるゆみりゃ どげなくいまも へをかぶっ)
霧島 木林
いっの間い嫁と子俺が周囲い居っ
(いっのまい 嫁と子おいが ぐるいおっ)
作句教室
薩摩郷句は十七音字の定型詩であり、五・七・五のことばのリズムを守って破調句にならないようにすることや、鹿児島の方言で表現することは、作句する上での大事な要素です。そこで、投句作品を例に問題点を検討してみます。
年じゃがち免許を戻せち周囲んし
「周囲んし」は、周囲の人達のことで「周囲衆(ぐるいんし)」であり、心配している様子が窺われます。中八ですので、次のようにことばの位置を変えてみました。
年じゃがち周囲や免許を戻せ言っ
(年じゃがち ぐるや免許を もどせちゅっ)
口蹄疫周囲い居ったち処分され
(こうていびょ 周囲いおったち 処分され)
「口蹄疫(こうてえっ)」と、方言らしくことばを縮めてもよいと思います。また「周囲い居ったち」は、周囲に居てもという意味であり、切ない思いが窺われます。
下五の「処分され」が方言としてなじまない気がします。これは「抱(だ)っちかれっ」を「抱(だ)っちかれ」とすると同じ、「っ」抜けであり、本来は「処分ぬされっ」でしょうが字余りになりますので、次のようにいくつか表現を変えてみました。
口蹄疫周囲の牛も殺されっ
(こうてえっ ぐるいのべぶも 殺されっ)
周囲ずい処分ぬされた口蹄疫
(ぐるいずい 処分ぬされた こうてえっ)
周囲ずい可哀相し処分の口蹄疫
(ぐるいずい ぐらし処分の こうてえっ)
周囲ん衆い借金ぬ重ね夜逃げしっ
上六、中八の字余りと、また本来の方言での言い回しは「借金ぬ重ねっ(しゃっせんぬかさねっ)」ですので、「っ」抜けです。次のようにことばの位置を変えてみました。
借金ぬ周囲い重ねっ夜逃げしっ
(しゃっせんぬ ぐるいかさねっ 夜逃げしっ)
薩摩郷句鑑賞 38
子ん夢をずるっ知しっちょい天の川
(子ん夢を ずるっしっちょい 天の川)
中園 莞爾
一般的には、月おくれの七夕やお盆をするところが多いだろうが、幼稚園や小学校あたりでは、今日は七夕飾りを立てて、きっと星祭りをするのではあるまいか。
それぞれ子供たちは、子供らしい願いごとを書いて、吊るすことであろうが、その願いごとを、天の川はみんな知っているというわけである。いかにもほほえましいし、願いごとをかなえてやりたいなと、神ならずとも思いたくなる。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎9 号
題 吟 「 団子(だご)」
締 切 平成22年8月5日(木) ◎10 号
題 吟 「 欠伸(あくっ)」
締 切 平成22年9月6日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
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