田んぼにはレンゲソウの花が咲き、新年度の始まりを告げています。当院でも新卒の事務員さんが入り、その初々しい姿に自分が新入医局員の頃を思い出し、もう少し頑張ろうかと日々の診療に勤しむ今日この頃です。3月下旬にはうれしい事がありました。大学病院で主治医をしていた女の子が、遠方から高校3年生のMRワクチンを受けに来てくれました。その子は幼稚園の時に白血病を発症し、再発後骨髄移植まで行い、現在は完全寛解を維持しています。今度短大に合格したからとわざわざ報告に来てくれました。お母さんに似てべっぴんになったねと話すと、嬉しそうに笑ってくれました。こんな時は小児科医になって本当に良かったと感じます。
さて、今月の「誌上ギャラリー」は、磯山公園の桜です。桜の花越しに見る桜島はまた一際きれいです。今は毎年花見の時期だけ開園していますが、昔は遊園地やゴーカートがあり、自転車で遊びに行った懐かしい場所です。
「論説と話題」では、西先生に小児用肺炎球菌ワクチンの意義や今後の展望について、鹿児島県の小児髄膜炎の現況も含めて、分かりやすく解説していただきました。小児の髄膜炎を県内全数把握している都道府県は鹿児島県しかなく、またHibワクチンに関しても、全国に先駆けて、接種医による前方視的な安全性調査を行っています。これらの仕事は西先生がリーダーシップをとられています。定期接種化への基本的データとして意義深い調査ですので、是非鹿児島から予防接種行政を変革していただきたいものです。
今月号の「学術」は3題と充実しています。臨床検査センター主催学術講演会「骨粗鬆症の診断と治療」についてでは、今まで骨密度低下のみによる骨粗鬆症の定義を、骨代謝回転を示す骨代謝マーカーも考慮して規定しなおすことの必要性を学びました。米倉先生には、放射線画像の読影レポートを、音声認識システムにて効率よく作成する方法を教えていただきました。画像をスクロールしながら、キーボードを叩くことのもどかしさは、電子カルテの過去所見をスクロールしながら、紹介状を書く時に似ている気がします。電子カルテも音声入力の時代になるのでしょうか。永井先生からは、尿中コチニン測定による学童の受動喫煙検診についての報告をいただきました。高率で受動喫煙の影響があり、子どもたちへの健康被害が懸念されます。学校医としての積極的な取り組みに、頭が下がる思いです。
「随筆その他」では、鮫島先生にマルチ医者鳥丸一郎について書いていただきました。軍医、密偵、優秀な蘭方医、市議会議員、風流人と何でもこなすマルチ人間。私も興味を持ちました。小説にでもなりそうですね。西橋先生には、今回もノスタルジックな汽車での別れの風景を描いていただきました。新幹線ではこういう風にはいきません。リレー随筆は、新山先生に書いていただきました。やさしい時間、それはやさしい人々により作られ、やさしい思い出として残ります。ご投稿ありがとうございました。
「鹿市医郷壇」今月の天は大先輩の鮫島爺児医先生でした。おめでとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
最後に、子ども手当法案が成立しました。その使い道が本当に子ども達の為になることを願い、虐待で亡くなる子がいない世の中であってほしいと思います。
(編集委員 伊地知 修)

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