天
清滝支部 鮫島爺児医
餞別に欲し土産どん書て添えっ
(餞別に ほしみやげどん けてそえっ)
(唱)そげん高け品は予算オーバー
(唱)(そげんたけとは 予算オーバー)
修学旅行や新婚旅行、海外旅行などの長期の旅行をするときは、餞別をよく貰います。この有難い義理にお返しをする土産選びは、何かと苦労も多いものです。
その餞別を包む側の作品で、気心の知れた仲の悪友だろうと思いますが、貰った方も苦笑いだったことでしょう。
発想が郷句的でとてもユニークでした。
地
錦江支部 城山古狸庵
餞別い貰ろた似顔ん絵を飾っ
(せんべつい もろた似顔ん 絵をかざっ)
(唱)気遣こっ描たかわっぜ好青年
(唱)(きづこっけたか わっぜよかにせ)
別れの関係もいろいろとありますが、この作品からは、先生と生徒の別れを想像しました。転勤になる先生に、子供たちが似顔絵を描いて贈ったのでしょう。
転居先の部屋に飾った絵は、これからも見るたびに子供たちを思い出し、また元気を貰うことでしょう。そして、いつまでも大切にされる絵だと思います。
人
伊敷支部 矢上 垂穗
餞別をちい紙み包ん拭ぐ涙
(餞別を ちいがみつつん ぬぐなんだ)
(唱)大丈夫じゃがち婆ん肩を抱っ
(唱)だいじょっじゃがち ばん肩をでっ
この作品は、見送りでの別れの場面だろうと思います。駅や空港そして港には、故郷を離れていく人を見送る人たちが多い春でもあります。
餞別をちり紙に包むのはお年寄りでしょうから、おばあちゃんが孫に手渡すとき「元気でいなさいよ、頑張りなさいよ」と、声をかけて涙が溢れ出たのでしょう。
五客一席 上町支部 吉野なでしこ
旅行は中止貰ろた餞別ちゃ返せ方
(りょこはやめ もろたせんべちゃ かえせかた)
(唱)そうなち容易す受け取やならじ
(唱)(そうなちもやす うけとやならじ)
五客二席 錦江支部 城山古狸庵
島め渡い船で餞別ちょ開けっ見っ
(しめわたい 船でせんべちょ あけっみっ)
(唱)少ね多えのち数ぜちょい金
(唱)(すっねうえのち かんぜちょいぜん)
五客三席 伊敷支部 谷山五郎猫
餞別を貰ろて恥なか再就職
(餞別を もろてげんなか にどづとめ)
(唱)頑張いやんせち一言が辛れ
(唱)(きばいやんせち ひとこっがつれ)
五客四席 清滝支部 鮫島爺児医
如何すち貰ろた餞別ち空があっ
(いけんすち もろたせんべち からがあっ)
(唱)言う訳けいかじ買た安し土産
(唱)(ゆうわけいかじ こたやしみやげ)
五客五席 紫南支部 紫原ぢごろ
餞別が家計い響ゆい異動時期
(餞別が かけいこたゆい いどうじっ)
(唱)泣こごっあいが笑顔で渡てっ
(唱)(なこごっあいが 笑顔でわてっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
餞別に可愛か恋文添えっあっ
(餞別に むぞか恋文 そえっあっ)
餞別を貰ろた良かどん土産げ心配
(餞別を もろたよかどん みやげせわ)
錦江支部 城山古狸庵
餞別の多えとで知った生徒ん人気
(餞別の うえとでしった こん人気)
上町支部 吉野なでしこ
お返しも餞別次第で荷物ちなっ
(おかえしも 餞別しでで にもちなっ)
伊敷支部 谷山五郎猫
餞別でパチンコをすい博打者
(餞別で パチンコをすい ばくっごろ)
紫南支部 紫原ぢごろ
餞別は将来つ考げっ額く決めっ
(餞別は やがつかんげっ がくきめっ)
作句教室
今月も三條風雲児先生が書かれました、「渋柿」の巻頭言の一つを紹介します。
人間不在の句
山寺ん庭へ水仙の花が咲っ
(山寺ん にへ水仙の 花がせっ)
桜島正月の空い噴っ上げっ
(桜島 しょがっの空い ふっきゃげっ)
最近このような作品が意外に多い。つまり人間不在の句である。
薩摩郷句は、人間を素材にして、それに郷句味を加え、鹿児島の方言による十七音字の詩である。人間以外の素材の場合は、擬人化するか、人間とのかかわりを持たせなければ、単なる説明や報告になってしまう。そこで右の句も例えば、
お勤めん庭へ水仙の花が咲っ
(おつとめん にへ水仙の 花がせっ)
水仙も朝ん勤行い畏まっ
(水仙も 朝んごんぎょい かしこまっ)
噴っ上げた桜島め干し物の始末ち騒動
(ふっきゃげた しめほしもんの しまちそど)
日本髪み灰を撒っかくい桜島
(にほんがみ へをまっかくい 桜島)
というような表現にすることである。
ただこの四句の場合は、一句目と三句目は、やや郷句味が稀薄なことは否めないだろう。特に一句目がそうであるが、郷句味が稀薄になると、説明や報告に近くなるので注意すべきである。
薩摩郷句鑑賞 35
招ばるれば素手じゃいっめが月給前
(よばるれば すでじゃいっめが げっきゅまえ)
田中丙笑長
三月四月という時期は、卒業、入学、転勤、就職、結婚など、祝いごとの多い時である。そういう祝いごとに招待されると、手土産だの、お祝儀だのと、思わぬ出費がかさむもの。招かれて行かないのは義理を欠くことになるし、かと言って、手ぶらで行くわけにもいかない。給料前の庶民の吐息が聞こえるようである。
筍ん煮染が出合た郷中行楽
(たけんこん にしめがでよた ごじゅでばい)
松元 片栗
孟宗竹は、中国の江南地方が原産地で、元文元年に、島津吉貴公によって、琉球から移植されたと伝えられる。それだけに、鹿児島には孟宗竹林が多いが、ぼつぼつ筍が地表に頭をもたげる季節。
筍はいろんな料理に用いられるが、花見などには、よく煮染にして持って行く家庭が多かろう。最近、郷中とか方限という言葉も聞かないし、郷中行楽もしなくなったかもしれない。「煮染が出合た」が面白いとらえ方。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎6 号
題 吟 「 雑巾(ざふっ)」
締 切 平成22年5月6日(木)
◎7 号
題 吟 「 周囲(ぐるい)」
締 切 平成22年6月7日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
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