鹿市医郷壇

兼題「神様(かんさあ)」


(364) 永徳 天真 選




伊敷支部 矢上 垂穗

神様の聖地を奪合っ長げ戦
(神様の 聖地をばこっ なげいっさ)

(唱)一歩も退かじ主張をば通えっ
(唱)(一歩もひかじ しゅちょをばとえっ)

 ユダヤ教・キリスト教の聖地エルサレムがあるイスラエル国は、一九四八年に独立して以後も、アラブ諸国との対立で中東戦争を繰り返し、今もまだ緊張は高まったままです。平和の象徴である聖地で、延延と続く民族宗教・民族主義の争いを一番嘆き悲しんでいるのは、イエスキリストかもしれません。




清滝支部 鮫島爺児医

神様も正月ちゃ笑るっ吉つ配っ
(神様も しょうがちゃわるっ きつくばっ)

(唱)全員吉じゃち家族中が笑顔
(唱)(ずるっきっじゃち けねじゅが笑顔)

 正月三箇日の神社は、初詣の人たちで賑わいます。新しい年を迎えて晴れ晴れとした顔の参拝客は、願いごとをした後に買い求めたおみくじを神妙な顔つきで見ている光景を目にします。
 そのおみくじで吉が出るようにと、神様が粋な計らいをしてくれたとは、いかにも郷句人らしい捉え方です。




大崎町 植村聴診器

妻け恵っ神様め感謝赤か糸
(かけのさっ かんさめ感謝 あかか糸)

(唱)こいかあ先もよろしゅ頼んど
(唱)(こいかあさっも よろしゅたのんど)

 母親として子供たちを真っ直ぐに育て上げ、妻として夫を立てながら世帯の遣り繰りを上手にこなし、そして何より元気で明るい太陽のような、申し分のない奥さんなのでしょう。
 こんな妻と巡り合わせて貰い、赤い糸で結びつけて貰ったことに、夫の心からの感謝の気持ちが込められています。


 五客一席 錦江支部 城山古狸庵

賽銭ぬ弾ん大吉つ引っ当てっ
(さいせんぬ はずんだいきつ ひっあてっ)

(唱)神様からんお返しじゃろか
(唱)(神様からん お返しじゃろか)


 五客二席 紫南支部 紫原ぢごろ

受験時か神様参いも魂が入っ
(じゅけんどか 神様めいも しょがはいっ)

(唱)念じ念じっ届けち拝ん
(唱)(ねんじねんじっ 届けちおがん)


 五客三席 上町支部 吉野なでしこ

神様もまこて忙し入試前
(神様も まこていそがし 入試前)

(唱)あばてんね人て休く暇も無し
(唱)(あばてんねひて よく暇ものし)


 五客四席 清滝支部 鮫島爺児医

神様を拝ん心が幸運ぬ呼っ
(神様を おがん心が うんぬよっ)

(唱)いっも感謝ち下げちょい頭
(唱)(いっも感謝ち さげちょいびんた)


 五客五席 大崎町 植村聴診器

家ん父親今日も仕事ちゃせん貧乏神
(やどんちゃん きゅもしごちゃせん びんぶがん)

(唱)そいでん神ち誠て妙だこっ
(唱)(そいでんかんち まこてすだこっ)


   秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

初物な神様へ奉納っ感謝せにゃ
(はつもんな かんさへまつっ 感謝せにゃ)

どもならん時か神様を拝んみっ
(どもならん とか神様を おがんみっ)


紫南支部 紫原ぢごろ

合格いごっ神様せ最後ん運を頼ん
(うかいごっ かんせ最後ん ふをたのん)

神様も怠け者にな仕様んね態
(神様も 怠け者にな しよんねふ)


伊敷支部 谷山五郎猫

神様い頑張れち吐す無精者
(神様い はまれちかやす ふゆっごろ)

神様い恥なかこっじゃまた不合格っ
(神様い げんなかこっじゃ またおてっ)


錦江支部 城山古狸庵

合格ったや梅ヶ渕どまけ忘れっ
(うかったや うめがふっどま けわすれっ)


上町支部 吉野なでしこ

神様も多け頼ん事ち捌けんじ
(神様も うけたのんごち さばけんじ)


大崎町 植村聴診器

結婚式で夫婦して嘘を神様み誓こっ
(ごぜんけで みとして嘘を かみちこっ)


 薩摩郷句鑑賞 32

仕込まれた挨拶も可愛かお年玉
(しこまれた えさっもむぞか お年玉)
                福園 東風

 最近の子供たちは、千円札くらいでは喜ばないと言われるが、それはともかくとして、子供たちにとって、正月の楽しみの一つは、お年玉を貰うことであろう。
 「お行儀よくしてないと、連れて行かないよ」とか、「おじいちゃん、おばあちゃんに、ごあいさつができないとだめよ」と、家を出る時に言われたのであろう。その「仕込まれた挨拶」は百も承知ながら、それにまた目を細めているじいちゃん、ばあちゃんの顔が目に浮かんでくる。


じっくいが吊った注連縄あ首び掛っ
(じっくいが つったいぎれあ くびかかっ)
               中村 雲海

 「わたしゃ薩州薩摩の醜二才(ぶにせ)、色は黒くて横張いの小じっくい」の「小じっくい」は、横に張った、背の低い人のことである。
 その足の短い、背の低い男が、門に注連飾りをつるしたのである。当人は結構その下をくぐって出入りできるから不都合はあるまいが、訪れた客は、それが首にひっかかるような高さであるというわけである。実際にはそれほどではないのだけれども、オーバーな言い方をすることによって、おかしさを出したもの。


出初式しゃくった水で虹ずば描っ
(でぞめしっ しゃくったみっで にずばけっ)
                 久保山三蔵塚

 今ではほとんど耳にしなくなったが、「水鉄砲」のことを「みっしゃくい」と言ったものである。「しゃくい」は「しゃくる」からきたものであろうが、「水を注ぎかける」とか、「水を飛ばす」といったような程度に解すればよかろうと思う。
 この句は、出初式で、消防車が一斉に放水すると、よく虹が立つものであるが、その情景を詠んだものである。放水訓練はきれいで結構だが、消防車の出勤はないに越したことはない。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋



薩 摩 郷 句 募 集

◎3 号
題 吟 「 嬉し(うれし)」
締 切 平成22年2月5日(金)
◎4 号
題 吟 「 餞別(せんべっ)」
締 切 平成22年3月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:t01-arimura@city.kagoshima.med.or.jp



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