天
大崎町 植村聴診器
欠点丈な拡大鏡で姑は見っ
(欠点ぶんな 拡大鏡で しゅとはみっ)
(唱)世間で恥ずば掻っといかんで
(唱)(世間ではずば かっといかんで)
人は皆長所もあれば短所もありますが、大方の他人の見る目は欠点に注がれてしまいます。鈍いとかの少々の出来の悪い欠点は認める寛容さと、もっと長所を評価する心が必要なのかもしれません。
この句は、嫁の欠点が気になる姑の人間臭い一面を促え、中七の誇張の表現でうまく詠まれています。
地
伊敷支部 矢上 垂穗
もへ欠点が二つ三つんハネムーン
(もへ欠点が ふたつみっつん ハネムーン)
(唱)あばたも靨じゃったはっじゃが
(唱)(あばたもえくぼ じゃったはっじゃが)
結婚によって緊張感から開放された新婚旅行の二人は、四六時中行動を共にして見えてくる欠点もあったり、蜜月の生活の中でも欠点に気付かされることもあるでしょう。「こんなはずじゃなかった」と動揺は隠せませんが、大なり小なりの欠点があるのは当たり前で、これからの長い人生では互いの信頼関係が大事です。
人
清滝支部 鮫島爺児医
ハイビジョン美人の皺ずい見すい欠点
(ハイビジョン シャンのしわずい みすい欠点)
(唱)メイクも進化対応をばしっ
(唱)(メイクも進化 たいおをばしっ)
アナログ放送から地上デジタル放送への移行に伴い、テレビも美しさや鮮明さを追求して進化しています。大型のハイビジョンテレビを観ると、これがテレビかというほどの迫力と美事な映像に驚かされます。顔の皺やシミまでくっきり写し出すので、その見え過ぎる弊害が出演する美しい女性たちを悩ませています。
五客一席 紫南支部 紫原ぢごろ
夫婦喧嘩欠点と欠点とん勝負びけなっ
(夫婦喧嘩 欠点と欠点とん しょびけなっ)
(唱)立腹たまかせ言たどん空し
(唱)(はらけたまかせ ゆたどんむなし)
五客二席 錦江支部 城山古狸庵
欠点が無ち貰ろた嫁女い擾されっ
(欠点がねち もろたよめじょい こなされっ)
(唱)予想外ん酷で猫被い
(唱)(かっごんほかん ひでねこかぶい)
五客三席 大崎町 植村聴診器
飲めば掘いDNAの夫ん欠点
(飲めばほい ディーエヌエーの ととん欠点)
(唱)飲まんな模範亭主じゃっどん
(唱)(のまんな模範 亭主じゃっどん)
五客四席 清滝支部 鮫島爺児医
新婚当初欠点等ま見えん良か世じゃっ
(といえはな 欠点どまみえん よかよじゃっ)
(唱)好っじゃち一日三度も言えば
(唱)(すっじゃちひして 三度もゆえば)
五客五席 伊敷支部 谷山五郎猫
欠点ん無か人は居らんち我げ語っ
(欠点んなか 人はおらんち わげかたっ)
(唱)プラス思考で気楽き行かんな
(唱)(プラス思考で きだきいかんな)
秀 逸
上町支部 吉野なでしこ
人選っ欠点を探せっ落とせかた
(ひとえらっ 欠点をさがせっ おとせかた)
欠点探し断い方い気を遣こっ
(欠点探し ことわいかたい 気をつこっ)
写真撮い欠点を隠せっ澄ませちょっ
(写真とい 欠点をかくせっ すませちょっ)
錦江支部 城山古狸庵
母娘共め欠点を先き言て嫁かならじ
(おやことめ 欠点をさきゆて いかならじ)
欠点が多け言ながら子をば育しとっ
(欠点がうけ ちゅながら子をば おやしとっ)
欠点探しゅ生っがいにしたいみし奴
(欠点さがしゅ いっがいにした いみしわろ)
清滝支部 鮫島爺児医
先生の綽名は欠点を言当て居っ
(先生の あだなは欠点を ゆあてちょっ)
欠点ん無か人は浄土が待っおじゃっ
(欠点んなか 人は浄土が まっおじゃっ)
大崎町 植村聴診器
欠点が無で優等生がいじめ遭っ
(欠点がねで 優等生が いじめおっ)
紫南支部 紫原ぢごろ
欠点ん無か態の顔ぶれで組閣くしっ
(欠点んなか ふの顔ぶれで そかくしっ)
作句教室
薩摩郷句の基本
1.鹿児島の方言で表現する
薩摩郷句の大きな特徴である鹿児島の方言で表現することは、基本であり且つ又重要です。次のような共通語の表現の箇所があると、薩摩郷句としての作品の価値も半減されてしまいますので、作句では日常使われている方言での表現になっているかを常に意識することが大事になります。( )内が方言での表現。
見える欠点(あら)(見(み)ゆい欠点(あら))
鍛え直して(鍛え直(なお)せっ)
2.十七音字の定型詩
薩摩郷句で表現されることばの文字数は、上五・中七・下五の十七音字が基本であり、この定型詩では字足らずや字余りなどの破調句を作ることは禁止されています。今月の投句作品の中にも次のような破調箇所がありました。
欠点(あら)ばっかいち(上七)、ツーショットの(中六)、言(ゆ)ながら子供(こどん)ぬ(中八)、犬までじんきしっ(中九)、組閣(そかく)し(下四)、我(わが)をなっさめっ(下八)
十七音字の制約の中で、五・七・五のことばのリズムを大切にし、破調句にならないように表現を変えたり、ことばの位置を組み替えるなどの考察が必要です。そして、指を折りながら文字数を必ず確認することを習慣づけることが大事です。
薩摩郷句鑑賞 30
馬場いっぺおはら浴衣が舞て回っ
(馬場いっぺ おはらゆかたが もてまわっ)
西村次男坊
鹿児島市恒例のおはら祭りは、今年で三十三回目。すっかり定着して、名物行事になったようである。今年はなんでも、踊りに参加する連の数も、今までの最高だというし、さぞ盛り上がることだろう。
「おはら浴衣」という浴衣があるわけではないが、それぞれの連の着ている揃いの着物を指しているものである。軽快なハンヤ節のリズムに乗って、次から次に流れていく踊りの列が、目に浮かんでくる句である。(注)昭和五十八年
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎新年号
題 吟 「 神様(かんさあ)」
締 切 平成21年12月7日(月) ◎2 号
題 吟 「 刺身(さしん)」
締 切 平成22年1月5日(火)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892-0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:t01-arimura@city.kagoshima.med.or.jp |
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