鹿市医郷壇

兼題「稽古(けこ)」


(360) 永徳 天真 選




 清滝支部 鮫島爺児医

激し稽古母親は隠れっ泣て見ちょっ
(はげし稽古 かかはかくれっ ねてみちょっ)

(唱)黙っ見守い我が子ん成長
(唱)(だまっみまもい わがこんせいちょ)

 その稽古が何なのか、特定されていないので多少のもどかしさはありますが、おそらく小学生のスポーツ少年団や中高生の部活動での場面だろうと思います。
 厳しい監督の下では、叱られて涙を流す子供もいるようですが、時々稽古の様子を見にきて、その激しさに心を痛める母親の情愛がうまく表現されています。




 伊敷支部 谷山五郎猫

亀ん子は稽古はせんでん大焼酎食れ
(亀ん子は 稽古はせんでん うじょつくれ)

(唱)父親ず越すそな凄ぜ飲みっぷい
(唱)(おやずこすそな わぜのみっぷい)

 鹿児島のことわざに、子や親の顔や体そして性質までよく似るということを意味する「親(お)へ似(に)た亀(かめ)ん子(こ)」というのがありますが、まさにその亀ん子で先祖代々の上戸の血筋なのかもしれません。
 親を知っている周りの人が、その亀ん子の飲みっぷりに舌を巻いているという単刀直入の表現がよかったです。




 錦江支部 城山古狸庵

モンゴルん倍は稽古せにゃ勝ちゃないめ
(モンゴルん 倍は稽古せにゃ かちゃないめ)

(唱)期待ゆしちょっど日本男児
(唱)(きたゆしちょっど にっぽんだんじ)

 大相撲は両横綱の白鵬、朝青龍以下、モンゴル勢の強さが際立っていて、その勢いは止まるところを知りません。
 残念ながらモンゴル出身の力士に支えられているような現状の大相撲に、国技の看板も泣いていることでしょう。
 相撲ファンの嘆きでもありますが、石川遼のようなスターが欲しい相撲界です。


 五客一席 錦江支部 城山古狸庵

辛ん稽古耐えっ?んだ甲子園
(のさん稽古 たえっつかんだ 甲子園)

(唱)汗と涙が夢を叶えっ
(唱)(汗となんだが 夢をかなえっ)


 五客二席 大崎町 植村聴診器

リハビリち踊い稽古どんさすいケア
(リハビリち おどい稽古どん さすいケア)

(唱)体ん為めな 動かすいこっ
(唱)(体んためな いごかすいこっ)


 五客三席 武岡 志郎

稽古じゃれば大関級の技ん冴え
(稽古じゃれば おおぜっきゅうの わざんさえ)

(唱)心臓が小めで場所でなくりっ
(唱)(しんぞがこめで 場所でなくりっ)


 五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ

稽古もせじ飲ん方ぶんな一人前
(稽古もせじ のんかたぶんな ひといまえ)

(唱)飲ん平ん血統じゃ勝ち目は無かろ
(唱)(のんべんすっじゃ 勝ち目はなかろ)


 五客五席 伊敷支部 矢上 垂穗

五七五数ぜ方いも稽古が要っ
(五七五 かんぜかたいも 稽古がいっ)

(唱)指の運動で脳も活性化
(唱)(ゆっのうんどで のも活性化)


    秀  逸

 紫南支部 紫原ぢごろ

ぐらしこっ稽古が済んだや塾き走っ
(ぐらしこっ 稽古がすんだや じゅきはしっ)

ゴルフ狂稽古じゃろ傘を振い上げっ
(ゴルフきっ 稽古じゃろ傘を ふいあげっ)

稽古事で嫁女候補い差をつけっ
(稽古ごっで よめじょ候補い 差をつけっ)


 上町支部 吉野なでしこ

下戸ん衆も稽古んたまもん酒豪いなっ
(げこんしも 稽古んたまもん しゅごいなっ)

息継ぎん稽古をしかたい泡を吹っ
(いきつぎん 稽古をしかたい あわをふっ)

メダルをち稽古稽古稽古で頑張いかた
(メダルをち 稽古稽古稽古で きばいかた)


 清滝支部 鮫島爺児医

遼君は稽古もすっどん度胸も良し
(りょうくんは 稽古もすっどん どきょもよし)

下手くそも稽古を頑張れば天位獲っ
(下手くそも 稽古をきばれば 天位とっ)


 武岡 志朗

稀けんな稽古はしたどん下戸は下戸
(まねけんな 稽古はしたどん 下戸は下戸)

好かん稽古彼女ん前じゃ精出けっ
(すかん稽古 彼女ん前じゃ はめつけっ)


 錦江支部 城山古狸庵

稽古がいて女房もジョッキでぐつっ飲っ
(稽古がいて かかもジョッキで ぐつっやっ)


 大崎町 植村聴診器

稽古い稽古積んだ外科医んメスん腕
(稽古い稽古 積んだ外科医ん メスん腕)


 伊敷支部 谷山五郎猫

治らせん音痴ん稽古は捨せ金
(なおらせん 音痴ん稽古は うっせぜん)


 伊敷支部 矢上 垂穗

無能コーチ稽古が足らんち叱いたくっ
(ぼえコーチ 稽古がたらんち がいたくっ)


作句教室

課題の捉え方 その一
 まず課題が出されたら作句の前に、その意味を国語辞典や方言辞典で調べて確認することが大事です。
 今月の課題の「稽古(けこ)」は、「芸能・武術・技術などを習うこと。また、練習。」と、辞典ではその意味の説明があります。
 寒稽古・舞台稽古・稽古着・稽古事、バッティング練習・発声練習・練習曲・練習問題などといった言葉があるように、私たちは日常稽古と練習という言葉を微妙に使い分けていますが、今回の課題では、練習も稽古も同一として広義に促えていいのではないかと思います。
 課題で作句する時は、その課題を正しく理解することが第一歩だと思います。


 薩摩郷句鑑賞 29

神様あ誠てこまんゆ虫すつくっ
(かんさああ まこてこまんゆ むすつくっ)
                        石川 穂無

 「節(せっ)が替われば、くだまっが鳴(おら)っ」という言葉を、子どものころよく耳にした。「節替わい」というのは節分のことだが、この句の場合は、秋の季節になればということで立秋。「くだまっ」は「クツワムシ」のこと。確かに立秋の前後からクツワムシが鳴き始めるようである。
 ぼつぼつ秋の虫の声が楽しめるころになったが、その美しい音色を聞きながら、「神様は、誠に細やかに虫をつくったものだ」と感嘆しているわけで、うなずかせるものをもっている。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎11 号
題 吟 「 欠点(あら)」
締 切 平成21年10月5日(月)
◎12 号
題 吟 「 議(ぎ)(文句ぎ)」
締 切 平成21年11月5日(木)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒八九二−〇八四六
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会 『鹿児島市医報』 編集係
TEL 〇九九−二二六−三七三七
FAX 〇九九−二二五−六〇九九
E-mail:t01-arimura@city.kagoshima.med.or.jp


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