=== 随筆・その他 ===
パ ソ コ ン の 自 作 |
|
東区・郡元支部
(内科・山口アーバンクリニック) 山口 幸一
|
|
家庭内のいろいろな電化製品、車、今やIC無しに考えられない時代である。しかし一方で、車のフロントパネルの摘みも、使い慣れたもの以外、完全に使いこなせないうちに乗り換えの時期がきてしまう。同じように、携帯にしても、デジカメにしてもマニュアル本を完全に読まないうちに時間が過ぎて、いつのまにかありふれた機能だけ使う状態になっている。
話は少々まえのことになるが、自宅のパソコンは2000年に購入したWindows Meで、デジカメ、パワーポイントの画像などいろいろなものが溜まり、動作は遅いし、画面がフラフラして今にも止まりそうな状態になっていた。そこで、一昨年の秋、新しいパソコンに買い換えることにした。自宅のどこの部屋でも使えるように、それまでのADSLから光ファイバーに変え、無線LANにしてノートパソコンを使うことにした。ちょうどVistaが販売されはじめたころであった。子供たちがVistaはソフトが重く、よくフリージングするから、この時点ではXPのほうが良いとアドバイスをくれた。しかし、XPは数年するとバックアップがなくなるし、何にもまして新しいものの方がより進化しているとの思い込みもありVistaにした。
Vistaの画面は今まで以上に色彩は鮮やかであったが、Windowsの起動に時間がかかり、使っているとよくフリーズしてしまう。言われたことが的中したのである。こんなことがチョクチョク起こるといつの間にかモチベーションも薄れ、使うことが億劫になり、お蔵入りに近い状態になってしまった。
山ノ神に買い替えを相談しても、「人の意見を良く聞かないからよ、まだ買ったばかりなのに」と、にべもない。
ソフトだけでなく、ハード面を含めて理解できないと落ち着きが得られないのが子供と違う私たちの世代であろう。よく考えてみるとパソコンのハード面についてはあまり考えたことはなかった。動作が重たいのは、ソフトのせいと決め付けていたし、パソコン本体についてあまり考えたことはなかった。頭脳にあたるCPU(中央演算部)は別として、メモリーはハードディスクの一部にあるものと思っていた。この程度の知識しかないので、なぜVistaが重たいか理解できないまま買い換えたわけである。
ところで、自院ではドアを開けると、ありがたいことに直ぐ目の前に書店がある。自称、アーバンクリニックライブラリー。非常に便利で、よく休み時間や診療の合間をみてここに出かけ、自分好みの読み物はないかブラブラ眺めて廻る。昨年の夏パソコン関係の書棚をみていたところ、「自作パソコン」という雑誌が目に止まった。パラパラとめくってみるとパソコン組み立てのABCが書いてあり、内容からすると自作は意外に簡単な印象を受ける。それまでに、若い人たちがパソコンを自作したという話を何回と聞いたことはあったが、あの複雑な動作をするパソコンをよく作れるものだと感心するだけだった。自宅のイライラパソコンのこともあり、また、少々はパソコン内部のことについても興味が湧くのではないかと思い雑誌を買った。
安くで組めるパーツの組み立てや、現状でかなり能力の高いものまで数種類のパソコンの組み立てまで列記してある。しかし、簡単そうでも1回も組んだことのないものを少々読んだだけで作るなど絵に描いた餅のようなもので現実味がない。どこでパーツを販売しているかさえ判らない。秋葉原までパーツを買いに行くわけにもいかないし、ここで話は頓挫。しかし、パソコンを組む人がいる以上、どこかにパソコン工房があるはずである。
夕方、やってきたMRのM君に、鹿児島でパソコンを組んでくれる工房を知らないか尋ねてみた。まさに偶然、彼いわく「私が組めます」。2〜3日して早速CPU、メモリー、マザーボードなど必要なキットについての情報、鹿児島のどこで購入できるかまで書き出して持ってきてくれた。強力な助っ人の出現に話はトントン拍子に進み、早速キットを購入した。
CPUはCore(演算電気回路)を4個搭載したCore 2 Quad、メモリーは2GBを2枚、ハードディスク(HDD)は1TB、ソフトはWindows Vistaを選び組み込むことにした。大きいものは良いものだとばかりに、この時点では最高の能力をもつパーツを選び最高のマシンにしたかった。組み立ては意外と簡単で、CPUをしっかり固定し、メモリーを2枚スロットに差し込み、グラフィックボード、HDD、DVDドライブと順々に取り付けた後、電源ケーブルをつなぎ完了。
ここまでは解説書に従い自分でも何とかできた。問題はこれからで、パソコンソフトが機能するためのパソコン基盤の基本設定(BIOS)の段階になった。これが正しく設定されていないと、パソコン全体の動作、とくにVistaなどソフトのインストールがうまく進まない。これ以降の設定はとても自分の手には負えない。あっさり選手交代、あとはほとんどM君の手に委ねることになった。無線LANとのアダプテーションはさらに難しかった。とにかく人の手を借りながら、自分にとっての最強パソコンは完成した。半日のことではあったが、Vistaが起動しインターネットに繋がったときにはさすがにほっとした。
パソコンについて少々詳しい人なら今さらいうまでもないことであろうが、あまり詳しくない人のために、自分で理解できた範囲でパソコンの構造を記すと、以下のようになっていることが解る。
パソコンはまさに人体と同じような神経系の構造になっている。全体のパーツを乗せる基盤(マザーボード)は身体そのもので、この上に計算能力に長けた脳(演算部、CPU)を乗せている。脊髄に当たる上下2つのIC中継基地がノースブリッジ、サウスブリッジで、末梢からの刺激(USB、DVD、デジカメ、キーボード情報など)をこの基地からCPUに上げ、新たな信号を末梢に返す。聴覚、視覚系の信号もここを経由してディスプレイに送る。メモリーは丁度、仕事に必要な作業机のようなものと考えることができる。必要な情報を一時この机の上に拡げ、すばやく作業ができるようにする場所で、これが大きい程余力があり、能率が良いということになる。Vistaのようにソフトが大きいとこの作業机が大きくないと情報を十分展開できないため、動作が遅くなったり、フリーズしたりすることになるようだ。もっとも、今回はメモリーに4GB搭載したが、32ビット版マザーボード、32ビット版Vistaでは理論上3GBまでしか有効利用できないそうである。
例のノートパソコンからすると、ディスプレイが大きくなり、画面の切り替わりもよい。サクサクした動作とはこのような状態をいうのであろう。今まで胸につかえたようなパソコンに対する想いが一挙に解決できたようである。これからもう少し無線LANの能力アップを図りたいと夢はつきない。
一方で、IC領域の発展は目覚しいから、もう既にCPUもcore i7が登場してきたし、HDDはやがてSSDに取って代わられるのかもしれない。数年後また、組み直してみたいという気もするが、当分このパソコンで遊ぼうと思っている。
自作パソコンのおかげで、パソコンに対するモヤモヤは少しとれた。以前は、パソコンが止まると大騒ぎになって、専門の人を呼び、手直ししてもらったり、HDDの情報をリカバリーしてもらったりしていた。今回のことで、少々の手直しはBIOS画面をみたりして、自分でできるのではないかと、変な自信がついたような気もする。これを機にクリニックも電子カルテにし、レセプトオンライン化に備えることにした。
暇なときにパソコン関係の本を読む愉しみが増えたし、なによりも、嬉々とした子供のようになって、キットを組むという悦びを味わうことができた。
ついでですが、e-mailが次のように変更になりましたのでよろしくお願いいたします。
k-yamaアットマークroyal.ocn.ne.jp (注:「アットマーク」は、@に置き換えてください。)

|
このサイトの文章、画像などを許可なく保存、転載する事を禁止します。
(C)Kagoshima City Medical Association 2009 |