天
錦江支部 城山古狸庵
驚った態をしっ詐欺にゃ振い込まじ
(驚った ふをしっ詐欺にゃ ふいこまじ)
(唱)騙けっ金ぬ取ろ言が間違げ
(唱)(だまけっぜんぬ とろちゅがまっげ)
オレオレ詐欺で有名な振り込み詐欺の被害額が、昨年全国で二百億を超えているそうですからまさに驚きです。
振り込んだ人たちは気が動転して電話の話を信じた訳で、人の心理を研究した悪質極まる巧妙な詐欺の手口です。
この句のように、物事を冷静に判断し、真意を見抜くことこそが自己防衛です。
地
清滝支部 鮫島爺児医
逆転満塁打当人も驚っ塁ゆ廻っ
(ぎゃってんだ ぬしも驚っ るゆまわっ)
(唱)紛れ当たいが一躍ヒーロ
(唱)(まぐれあたいが いちやっヒーロ)
勝負事は一瞬の油断もできませんし、何が起こるか分からない所にその醍醐味があります。
この場面は野球の試合で、負け模様の中で飛び出した満塁弾に、ベンチもお祭り騒ぎです。気迫で打った紛れ当たりだったかもしれませんが、本人が一番驚き、喜びを噛み締めながら塁を駆けています。
人
上町支部 吉野なでしこ
驚った鍵も掛けんじ出かけちょっ
(驚った かっもかけんじ でかけちょっ)
(唱)しっかいせえち我を叱い方
(唱)(しっかいせえち わがをがいかた)
このような経験をされた人もいるかと思います。習慣として家を出る時は最後に鍵を掛けるのですが、その時は通常の生活のリズムではなく、考え事や気が急いたり、何かばたばたしていたのかもしれません。帰宅してみて気付いた自分の鍵の掛け忘れに唖然として、頻りに反省をしたことだろうと思います。
五客一席 大崎町 植村聴診器
鬼じゃろか驚いうせん子を殺れっ
(おんじゃろか 驚いうせん 子をこれっ)
(唱)考げが知れん酷で自分勝手
(唱)(かんげがしれん ひでわがかって)
五客二席 伊敷支部 矢上 垂穗
驚っ世トヨタも赤字派遣切い
(驚っよ トヨタも赤字 はけんぎい)
(唱)どげんかせんとじり貧国家
(唱)(どげんかせんと じり貧国家)
五客三席 伊敷支部 谷山五郎猫
驚った皮膚ん破片かあ脳が出来っ
(驚った 皮膚んかけかあ のがでけっ)
(唱)まだまだ未知ん不思議な細胞
(唱)(まだまだ未知ん ふしっなさいぼ)
五客四席 錦江支部 城山古狸庵
驚った医者あ常識か無ち吐えっ
(驚った 医者あじょうしか ねちかえっ)
(唱)そげな事つ言う常識く疑ご
(唱)(そげなこつゆう じょうしくうたご)
五客五席 清滝支部 鮫島爺児医
遼君の飛びにゃ青木もけ驚っ
(りょうくんの 飛びにゃ青木も け驚っ)
(唱)凄ぜさわやか若さが魅力
(唱)(わっぜさわやか 若さがみりょっ)
秀 逸
紫南支部 紫原ぢごろ
麻生どんの国語力にな驚った
(あそどんの こくごりょっにな 驚った)
ノーベル賞材料は水母ち驚った
(ノーベルしょ もとはくらげち 驚った)
鏡む見っ増えた白髪にゃ驚った
(かがむみっ 増えたしたがにゃ 驚った)
清滝支部 鮫島爺児医
猿ん子を犬が育てっ驚った
(猿ん子を いんがそだてっ 驚った)
驚った株ん損ぬば国家が保障
(驚った 株ん損ぬば くんがほしょ)
大崎町 植村聴診器
隣の火事驚った拍子し腰しゃ抜けっ
(つっのかし 驚ったひょし こしゃぬけっ)
驚った掛けた年金減っちゃっ
(驚った かけた年金 へずっちゃっ)
荒田支部 荒田案山子
驚ったまねけん出句せっ貰ろた天
(驚った まねけんだせっ もろた天)
父さんが天の取ったち家内中騒動
(父さんが 天の取ったち けねじゅそど)
驚った歌合戦の派手な衣裳
(驚った 歌合戦の 派手ないしょ)
上町支部 吉野なでしこ
オレオレち驚っいけん悔やんかた
(オレオレち 驚っいけん くやんかた)
驚ったあんトヨタ車も減産ち
(驚った あんトヨタしゃも 減産ち)
錦江支部 城山古狸庵
しゃっくいが驚らせたやぴしゃっ止ん
(しゃっくいが たまがらせたや ぴしゃっやん)
薩摩郷句鑑賞 24
人形市小法師達麿は笊ん中
(にんぎょいっ こんぼだるまは しょけん中)
上田 格
初市のことを人形市というのは、おっのこんぼ(起き上がり小法師)だとか、帖佐人形、東郷人形などを、この初市で売っていたからである。
そのおっのこんぼが笊の中に並んでいるというこの句は、いろんなものを売る露天市の様子が想像させられて懐かしい。
鹿児島でも、明後日から三月にかけて、土、日、祝日に、照国神社境内で初市が復活する由であるが、人の心を和ませ、子供たちの胸に懐かしい思い出を育む市であってほしいと思う。
寝技いな娘とな恥ね寒稽古
(ねわざいな おごとなげんね 寒稽古)
林 学釣
寒中の早朝や夜間に、武道や音曲などの稽古をするのは、今も昔も変わらないようである。厳しい寒さに耐えて、猛烈な稽古をすることによって、心身を鍛え、技を磨こうというわけであろう。
寝技とあるから、この句の寒稽古は勿論柔道である。このごろ女子の柔道も盛んで、男に混じって稽古に励んでいる姿を見かけるが、男にしてみれば、女子相手の寝技はやりにくいのかもしれない。
からからは梅が咲っとが待っ長ごし
(からからは 梅がさっとが 待っなごし)
酒匂 えみ
今日は立春、暦の上では春である。昔から、「梅の花が散る頃がいちばん寒い」とよく言われたが寒さはこれからである。
この句は、梅見の酒を飲みたくて、梅の咲くのを待ちわびている人の心情を詠んだものであるが、あたかも酒器が待ちこがれているように、擬人法で表現している。「からから」は、銚子や徳利の仲間ではあるが、独特の形をした焼酎をつぐ器。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎4 号
題 吟 「 写真(しゃしん) 」
締 切 平成21年3月5日(木) ◎5 号
題 吟 「 真実(まこっ) 」
締 切 平成21年4月6日(月)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
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