=== 年頭のあいさつ ===
2009 年 の 年 明 け に |
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皆さん明けましておめでとうございます。皆様におかれましては、ご家族お揃いで新年を祝っておられることと拝察申し上げます。昨年はアメリカのリーマンブラザーズの破綻に始まり100年に一度と言われる世界金融恐慌の嵐が吹き荒れ、世界同時大不況の様相を呈しておりました。未だに収束の糸口さえ見えておりません。そのアメリカではオバマ氏が黒人初の大統領に就任が決まり、首脳部には名立たる方々を指名しておられるようです。病める大国をいかにリードするのだろうかとその手腕を危惧している記事も目に付きます。
一方、日本の政治は以前より続く参院での与野党逆転、捩れ国会のまま、まさに大混乱の状態にあります。このような状態を背景に二人もの総理が簡単に政権を投げ出し、ますます収拾がつかなくなって来ております。また近々のニュースでは麻生内閣の支持率も20%まで落ち込んだとの報道がなされております。政治は三流だが、経済は一流と言われていた経済界でも円高、株安に始まる大不況が自動車業界における非正規職員の3万数千人という大量解雇を産もうとしております。自動車産業の大不況はアメリカにおいて凄まじいものがあり、ビッグスリーへの国庫からの莫大な資金投入の検討も行われるやに聞いております。振り返って医療界に目を転じますと、新医師臨床研修制度が引き金となった医師不足が、ここ数年囁かれておりました医療崩壊に拍車をかけ顕在化したようです。これは医療に対する長期的ビジョンに欠ける国策の所為なのか、厚労省の思惑通りなのかわかりません。因みに小生が昭和44年に大学を卒業する頃、低医療費政策反対を掲げて白衣のデモ行進をしたことがありましたが、考えてみますとその頃から国の方では医療費削減を虎視眈々と狙っていたようです。そして言わせて貰うなら、今その成果が見えて来たのでしょう。その成果のおかげで何が起こりましたか。患者のたらい回し、挙句の果ては患者の死亡、医師不足、医師の偏在による病院の閉鎖が顕著に現れております。このことはわれわれ医療者にとって大変なことなのですが、もっと大きな被害が及ぶのは一般市民です。書きたくない言葉ですが医療難民、介護難民が大量に発生するのではないかと危惧いたしております。いやもう既に難民はあちこちに見かけます。
さて昨年は診療報酬改定の年であったわけですが、皆様の医療機関では如何だったでしょうか。改定では診療報酬本体でプラス0.38%、薬価・材料価が医療費ベースでマイナス1.2%という微妙な改定率であったわけです。当院は年初から3月までは患者の数も然程変化なく、経営状況は順調な推移を示しておりました。また改定がなされたとしても一昨年度の点数に改定後の点数を換算したところ、収支はまずまずとの試算でした。ところが如何せん5月から患者の大幅減少にあい、更に当院のような中規模病院にとって入院時医学管理加算は取り消され、また勤務医の負担軽減策として新設された医師事務作業補助体制加算にしましても人件費の9割が給付され1割は自院の持ち出しとなっております。患者負担の増加と後期高齢者医療制度の所為か、はたまた在院日数の短縮によるものか、在院患者数の極端な減という現象に見舞われましたために収益は5月以降ほとんど毎月赤字となっております。今度の改定で入院時医学管理加算120点、7:1看護基準、DPC(診断群分類別包括評価)運用がなされている大病院にとっては増収となったように聞いております。一方われわれのような中小病院での当初の試算ではこれほどの減収とは思わなかったのですが、蓋を開けてみますと、われわれのような中小病院にとっては誠に歯がゆい思いをさせられる改定となったようです。過日広島国際大の医療経営の学者を招聘し医療経営に関する講演を拝聴しました。彼の言葉の中に「医師会病院のような都会型急性期形態の医療機関が赤字になるのは制度が悪いのだ」とありました。制度に対して我々では如何ともし難いのですが、制度を考え、実行に移させる人を選ぶことは出来ます。今年は衆院選挙があるはずです。よく考えて進んで政治に参加しようではありませんか。医療をいや国民の健康を守るために。
今年は改定の年ではありませんが良識ある関係者には医療費増にむけて何らかのアクションをとってもらいたいものです。さらには金銭のことを考えずに患者さんに良心的な最良の医療を提供できる時が来ることを夢にみて。

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