鹿市医郷壇

兼題「命(いのっ)」
(351) 永徳 天真 選






上町支部 吉野なでしこ

すくすくち家族で詣った新け命
(すくすくち けねでまいった にけ命)

(唱)神妙な顔で祝詞をば聞っ
(唱)(しんびゅなつらで のいとをばきっ)

 新しい命の誕生、赤ん坊は家族のみならず周りも幸せな気分にさせてくれます。
 そして、無病息災を願って家族みんなで、笑顔の宮参りです。
 これから家族の愛情に包まれながら、大きくなっていく小さな命に、体だけでなく心もすくすくと育ってほしいと、両親や祖父母も同じ気持ちで願っています。




大崎町 植村聴診器

難産で新し命ち命がけ
(難産で あたらしいのち 命がけ)

(唱)どうか無事にち祈いばっかい
(唱)(どうか無事にち いのいばっかい)

 思わぬ難産に、かけつけた家族も祈るような気持ちで出産の時を待っています。
 母親はもちろん、出産の手助けをする医療スタッフも、生死を左右するかもしれない新しい命の誕生のために懸命です。
 そして、赤ん坊の第一声が聞こえ、何よりも母子ともに無事であった喜びに、みんなが笑顔だったことでしょう。




紫南支部 紫原ぢごろ

政治家ん口の滑いは命取い
(政治家ん くっのすべいは いのっとい)

(唱)言わんでよか余計な事つ言っ
(唱)(ゆわんでよか よけなこつゆっ)

 特に閣僚ともなれば、マスコミの取材に応じたり、国会での答弁など、人前で主義主張を述べる機会も多くなってくるので、その言動は注目されます。
 時として、国民を嘗めた誠意のない問題発言も飛び出し、政治生命を断たれることもあります。饒舌家の議員たちが、懲りずにこの落し穴に嵌って滑稽です。



 五客一席 清滝支部 鮫島爺児医

新か命家族中は無言っ瞬間を待っ
(にか命 けねじゅはだまっ ときをまっ)

(唱)オギャーち声い溢るい笑顔
(唱)(オギャーち声い こぼるい笑顔)


 五客二席 紫南支部 紫原ぢごろ

命がけ子をば返せち拉致家族
(命がけ 子をばもどせち 拉致かぞっ)

(唱)そけ真実があって?めじ
(唱)(そけしんじっが あってつかめじ)


 五客三席 大崎町 植村聴診器

性教育命の大事も教せっ
(せいきょいっ 命のでしも いっかせっ)

(唱)自分も他人も命ちゃ平等
(唱)(わがも他人も いのちゃ平等)


 五客四席 上町支部 吉野なでしこ

巻き添えち失のた命なお可哀想
(巻き添えち うしのた命 なおぐらし)

(唱)運命ちこげな悲しこちゃ無か
(唱)(さだめちこげな かなしこちゃなか)


 五客五席 錦江支部 城山古狸庵

命よか健康が大事ち歌之助
(命よか けんこがでしち うたのすけ)

(唱)笑るた後かあちょっと変ち
(唱)(わるたあとかあ ちょっとおかしち)



    秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

命がけ手術のおかげいま元気
(命がけ しゅじゅっのおかげ いま元気)

国の為命つ懸け飛だ特攻児
(くんのため いのつかけつだ とっこうじ)

探検家究むい為い命っ張っ
(探検家 きわむいためい いのっはっ)


錦江支部 城山古狸庵

知覧かあ出陣た命ち蛍りなっ
(知覧かあ うっでたいのち ほたりなっ)

英霊を知たん大人ん時代いなっ
(英霊を したんおとなん じだいなっ)


紫南支部 紫原ぢごろ

メタボん身酒と煙草が命取い
(メタボん身 酒と煙草が いのっとい)

忘るんめ戦場い散った若け命
(わするんめ せんじょい散った わけ命)


大崎町 植村聴診器

延命処置ちゃ要らんち言どん書こたせじ
(えんめしょちゃ いらんちゆどん かこたせじ)


上町支部 吉野なでしこ

腹いっぺ命ちゃ長ごねち肥満母
(腹いっぺ いのちゃなごねち だんべかか)


伊敷支部 谷山五郎猫

造花よい命溢るっ野ん雑草
(造花よい いのっあふるっ 野んざっそ)


作句教室
 薩摩郷句誌「渋柿」を毎月発行している渋柿会では、今年の十一月に第十集目の合同句集「ひとっば」を発刊しました。
 この句集には、会員九三名の作品一三九五句が収められていて、その中から医療に関連がある作品をいくつか紹介します。
 作品は、作者が体験したり、想像して感じたことを正直に表現されていて、観察力のするどい作品もあるようです。

頼っちょつ医者も年じゃっ手が震っ
(たよっちょつ 医者も年じゃっ 手がふるっ)  純秋

見舞め行たや病人の方が元気きあっ
(みめいたや びょにんのほうが げんきあっ)  田の神

医者嫌れが越中ん薬ゆ空いしっ
(医者ぎれが えっちゅんくすゆ からいしっ)  創雲

長寿国言どんベッドい久す寝せっ
(ちょうじゅこっ ちゅどんベッドい さすねせっ)  佳笑

贅沢が身い付っ腹は酷でメタボ
(ぜいたっが みいちっ腹は ひでメタボ)  三唱

頑張っ言が良ならん養生い陰で泣っ
(きばっちゅが ゆならんよじょい 陰でねっ)  山神

詳しゅ診い医者んカルテい目が走っ
(くわしゅみい 医者んカルテい 目がはしっ)  十意

高け薬代医者い元値を聞こごちゃっ
(たけやっで 医者いもとねを きこごちゃっ)  雲城

きっぱいと焼酎を断たせた血糖値
(きっぱいと しょちゅをたたせた 血糖値)  

手術った後て栄養を付けち優し医者
(きったあて えいよをつけち やさし医者)  つる女

病院の部屋かあ外を眺ちょい母
(病院の 部屋かあ外を みちょいはは)  正子

時時きな天の怨んだ亭主ん看病
(とっどきな 天のうらんだ ととんかびょ)  幸子

往診の医者ん笑顔が薬いなっ
(往診の 医者ん笑顔が くすいなっ)  順風

見舞ん御礼退院したち字が躍っ
(みめんごれ 退院したち 字がおどっ)  一風

見舞客もちんちん減った長げ入院
(みめきゃっも ちんちんへった なげにゅいん)  吉連

病院の梯子が増えた老夫婦
(病院の 梯子が増えた おんじょみと)  ぐみ

医者どんも数ぜ損のた美人の脈
(医者どんも かんぜそこのた シャンのみやっ)  竜生

異常無しち聞た途端婆は軽か足
(いじょなしち きたとたんばは かいか足)  保子

退院日晩酌を先き医者い聞っ
(退院日 だいやめをさき 医者いきっ)  正己

胃カメラが中途で止まればびくっしっ
(胃カメラが つとで止まれば びくっしっ)  道場



薩摩郷句鑑賞 22

初霜が甘藷取ゆば急ったてっ
(はっしもが からいもとゆば せったてっ)
                    大重 陣笠

 各地の初冠雪だとか、初氷のニュースが、平年よりずいぶん早いところをみると、今年の冬の訪れは早そうである。県下でもすでに、初霜の降りたところもあるらしい。昔の甘藷取りは、霜で蔓が真黒くなるのを待って行ったものだが、このごろは収穫期が早まっている。この句は初霜のニュースを聞いて、早く甘藷取りをしなければという農家の気持ちが出ている。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎2 号
題 吟 「 驚(たまが)っ 」
締 切 平成21年1月5日(月)
◎3 号
題 吟 「 大概(てげ) 」
締 切 平成21年2月5日(木)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp


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