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| 呼気一酸化炭素濃度測定器及び禁煙パンフレット |
10月の中旬、夕方に職場の電話が鳴った。鹿児島医療センターの田中先生よりの電話だ。
「久しぶり。どうしたの。そういえば、今度市の医報でなんか書くんだってね。」
「うん。それでそのあとに・・・」
「え・・・・」
聞くと、次に書く先生が見つからないという。某学園で同級生だった間柄無碍にも断れず、このリレー随筆を書かせていただくことにいたしました。ネタは何でもいいそうなので、いま当院で行っている、禁煙外来について書こうと思います。
みなさんご存知の通り、禁煙外来は、平成18年4月の医療改正で、初めてニコチン依存症に対する治療が保険点数化されました。2005年2月のWHOの勧告「FCTC(たばこ規制枠組条約)」もありましたが、日本循環器学会などを中心とした9学会及び関係各位のたゆまぬ努力と汗の結晶であります。でも実際のところ、私としては多少興味があったものの、ニコチン依存症に対する保険診療ができる医師として、いままで禁煙治療を行ってきた医師という文言がどうも引っかかり(施設内禁煙は当院が借り物でその内部だけだったのでクリアでしたが)、これは呼吸器科の先生か、それに準じた科の先生だけなのだろうと思っておりました。そこでしばらく放っておいたのですが、私のいるクリニックの母体である今村病院分院より要請を受け、禁煙外来を開くことに。
「これって呼吸器の先生かそれに近い科の先生がするんじゃないのですか。」
「先生は患者さんに、タバコを吸っちゃいけないって言うでしょ。」
「言いますけど・・・」
「それでいいの。実際科は関係ないよ。」
「そうなんですか。へ〜。」
ということで、平成19年10月より開始となりました。
当初はうちが禁煙外来をやっているという認知度が低く(今もどうかわかりませんが)、患者さんはあまり来院されませんでしたが、今年の5月に、禁煙治療の飲み薬(チャンピックス)が発売され、また、5月に各新聞が禁煙の特集を組んだこと、また、マスコミ等でタバコは値段が上がる、1,000円になるかもしれないと言いだしてから、やや風向きが変わったようで、禁煙外来を希望される方が増えております。薬については、6月にニコチンパッチがOTC(市販薬)化された(20mgまでですが)こともあり、現在飲み薬のほうを希望される方が多いようです。
ただ、飲み薬(チャンピックス)に出やすい副作用として、吐き気、嘔吐を訴える人がいます。制吐剤で対応できる方が多いのですが、あまり効かない方もいます。1ヶ月程度で落ち着いてくるのですが、ここが問題ですね。それといまは新薬対応なので(来年5月まで)、2週間処方が義務付けられます。患者さんには負担が増えますが、医療側としては・・・。
禁煙外来については、ご存知の先生もいらっしゃると思いますが、トータルで3ヶ月、計5回〜7回の外来診療があります。保険診療ができるか否かは、ブリンクマン指数が200以上及びTDS(ニコチン依存症に係わるスクリーニングテスト)にてニコチン依存症と診断された者(5点以上)で禁煙治療に同意している人という縛りはありますが、検査は呼気一酸化炭素濃度検査のみです。血圧も測る必要はなく、この患者さんの病気は何だろうと考える必要がありません。当然といえば当然ですが、すべての患者さんの病名は“ニコチン依存症”です。その点は気楽といえば気楽です。ただ、初回はタバコの問題点や、薬に関する説明等を詳しくお話しする必要があり(1時間近くかかることも)、また、ドロップアウト(外来通院しなくなる)がある点(吐き気等の副作用を嫌う方やもう禁煙できたという自信?)が難点なのですが、なるべく外来に継続して来ていただくよう叱咤激励しております。
私は禁煙して15年目になります。吸い始めたのは予備校の頃でした。家の環境が母親を除き、父親、2人の兄ともにヘビースモーカーで、当初はそれがいやで絶対吸わないつもりでした。それが最初の大学受験で失敗し、少しずつふかし始め、友人から“ふかしているだけかよ!”といわれ、肺に入れたら最後、最初くらくらっとし、その後は、一直線にヘビースモーカーへの道。最高で1日80本吸っていました。自宅の部屋で吸ったときは部屋の中がほんとに真っ白となり、灰皿から煙が出ていたのを覚えています。ヘビーというかチェーンというか。その後いろいろなタバコを吸い、缶ピーまで(喫煙されている方はわかると思います)いってしまい、これはまずいなと思い、1回目の禁煙(専門2年の頃)。その頃はパイポくらいで、気合いでした。3年ほど禁煙していましたが、専門4年の医師国家試験の勉強をしている頃に妙にストレスを感じ、喫煙再開。一気にもとのヘビースモーカーに戻ってしまいました。大学卒業し医師になった後もしばらく吸っていましたが、その後風邪をこじらせ、禁煙に走り、たまたま縁あってすぐに結婚。嫁さんは吸わない人だったので、なんとか禁煙が続き今に至っております。嫁さんには本当に感謝しております。
この話は最初の禁煙導入によく使っておりますが、昔に比べて今は“禁煙治療薬”があるのでスムーズに禁煙ができますよと話しますと、割と皆さん納得してくれます。ただあくまでも,“禁煙補助薬”なので,“やめたいと思う気持ち、気合い”が必要と付け加えています。禁煙外来は、自分の専門分野とはあまり関係ありませんが、自分のこの禁煙に至る経験はラッキーでした。何が今の診療を助けてくれるかわかりませんね。
諸先生方、タバコは吸っていますか。それとも禁煙されていますか。我々医師は、
“健康のため吸いすぎに注意しましょう”ではなく,“患者さんのため、自分のために吸ってはいけません。また患者さんに禁煙を啓発しましょう”が必要ではないかと思います。
現在鹿児島市医師会内でも、禁煙治療に保険が使える医療機関が平成20年9月現在で43施設に増え、日本医師会も禁煙推進活動を実施しております。タバコも値上がりするでしょう(まだ決まってはおりませんが)。喫煙されている諸先生方、禁煙を考えてみませんか。
| 次回は、小田代病院の小田代卓也先生のご執筆です。(編集委員会) |

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