天
大崎町 植村聴診器
百歳く越せば授ろた命も少す余っ
(ひゃく越せば もろたいのっも ちす余っ)
(唱)まだまだ元気家族中ん宝
(唱)(まだまだ元気 けねじゅん宝)
県内では本年度に百歳になるのは、男性が六二人、女性が四一九人で、百歳以上の人は年々増え続けて八一三人になるそうです。敬老の日の朝刊には新百歳の記事があり、その顔写真を見て元気で若々しい笑顔には感心させられました。
大台の百歳を迎えて、天寿に感謝している気持ちが良く表わされています。
地
清滝支部 鮫島爺児医
肥満祖母余ゆ食でじゃち威張っ居っ
(だんべばば あまゆくでじゃち いばっちょっ)
(唱)食ともよかどんメタボが心配じゃ
(唱)(くともよかどん メタボがせわじゃ)
家庭内や外食の食事風景を見ていると食べ残しをする人、しない人がいて、食に対しても個人差があるようです。
食べ残しを捨てるは忍びがたく、私が食べなければと思うお婆さんで、別に余りを食べて太った訳でもないでしょうが、孫に「食べ残しをしているからだ」と、言っている変な理屈が滑稽です。
人
錦江支部 城山古狸庵
字余いを指の運動で書っ直えっ
(字余いを ゆっのうんどで かっなえっ)
(唱)ピシャッおさまいことばは無かち
(唱)(ピシャッおさまい ことばはねかち)
定型詩の薩摩郷句は、制限された十七音字での表現です。そして大事なことは、作者の思いが読み手に伝わらないと、作品としての価値がないということです。
五、七、五の軽快なことばのリズムを指を折って確認し、苦労をしている実感の句です。指を動かしたり、脳を働かせたりして惚け防止にもなっています。
五客一席 大崎町 植村聴診器
食過いの余い脂肪で病気暮らし
(くすぎいの 余いあぶらで やんぐらし)
(唱)医者ん言う事つ真面目い聞かじ
(唱)(医者んゆうこつ 真面目いきかじ)
五客二席 上町支部 吉野なでしこ
余い布胸い差し込んめかしかた
(余いきれ 胸いさしこん めかしかた)
(唱)粋じゃち人い注目くされっ
(唱)(いっじゃち人い ちゅうもくされっ)
五客三席 紫南支部 紫原ぢごろ
幹事達ちゃ予算余いで飲ん直し
(幹事たちゃ 予算余いで のんなおし)
(唱)赤字を出さじ御苦労様じゃっ
(唱)(赤字をださじ ごくろうさあじゃっ)
五客四席 伊敷支部 谷山五郎猫
余い物グルメ猫どま目もくれじ
(余いもん グルメ猫どま 目もくれじ)
(唱)過保護い育て 過ぎじゃ無かろか
(唱)(過保護いそだて すぎじゃなかろか)
五客五席 錦江支部 城山古狸庵
余い物腹い詰め込だメタボ女房
(余いもん 腹いつめくだ メタボかか)
(唱)ああ勿体無言ちゃ口ち入れっ
(唱)(ああもったいねちゅちゃ くちいれっ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
余い餌撤たや突然と釣れでけっ
(余いえど めたやひょかっと つれでけっ)
足らんよか少と余すがパタん奥義
(たらんよか ちっとあますが パタんこっ)
余い物捨すごちゃ無か戦中派
(余いもん うっすごちゃなか 戦中派)
紫南支部 紫原ぢごろ
妻ん留守余ゆば深げっ晩酌し
(かかんずし あまゆばさげっ だいやめし)
朝寝しっ昨夜ん余いで準備こ弁当
(朝寝しっ ゆべん余いで しこべんと)
字余いの郷句をば何日も捻っちょっ
(字余いの くをばなんちも ひねっちょっ)
上町支部 吉野なでしこ
余い物寄せ集めじゃが見事つ料理っ
(余いもん よせあつめじゃが みごつじゅっ)
余い物人にゃ呉れんじ腐らけっ
(余いもん 人にゃくれんじ くさらけっ)
錦江支部 城山古狸庵
余い物待っどん福は来となせじ
(余いもん まっどんふっは くとなせじ)
余いとな知たじ喜くだ老舗ん料理
(余いとな したじよろくだ みせんじゅい)
伊敷支部 矢上 垂穗
余っ居っ言われっガクッ再就職
(あまっちょっ ちゅわれっガクッ にどづとめ)
あいこいち入れっ字余いまた悩ん
(あいこいち いれっ字余い またなやん)
大崎町 植村聴診器
余い金始末ち困った夢ん中
(余いぜん しまち困った 夢ん中)
伊敷支部 谷山五郎猫
晩酌ん余ゆ休日の昼い食っ
(だいやめん あまゆやすんの ひいたもっ)
作句教室
作句の例を示してみたいと思います。
「子供が勉強をしないので困る」という親の気持ちを詠みたいので、まずこれを方言で表現してみます。
子供(こどん)が勉強(べんきょ)をせんで困(のさ)ん
これを見ますと、中七にはなっていますが、上五、下五が字足らずですので、十七音字になっていません。そこで十七音字になるよう、ことばを組み立ててみます。
言(ゆ)が聞(き)かん勉強(べんきょ)をせんで困(のさ)んこっ
将来(さっ)が心配(せわ)どしこ叱(が)ってんせん勉強(べんきょ)
親い似(に)っ言(ゆ)てん聞(き)かせん勉強(べんきょ)嫌(ぎ)れ
このようにいろいろと見方を変えていくことによって、考えが広がっていきます。ことばを吟味し、できるだけ郷句味が出るよう、作者の気持ちが表現できるように推敲することが必要です。もちろん字余りにならないように、五、七、五のリズムは大切にしたいです。
薩摩郷句鑑賞 20
良か着物は着いが台所はアマメん巣
(よかいしょは きいがおすえは アマメん巣)
隈元 三植
高価な和服を上手に着こなしたり、派手な洋装をしても隙のないご婦人を見ると、家の中も整然と片付けられて、いわゆる「きれごしゃん」(きれい好き)であろうと思うのが人情であろう。
ところが、人は見かけによらぬもので、散らかった台所は、ゴキブリの巣になっているというのである。人目につかない、身近なところからきちんとしたいもの。実に皮肉のきいた句。
※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋
薩 摩 郷 句 募 集
◎12 号
題 吟 「 命(いのっ) 」
締 切 平成20年11月5日(水) ◎新年号
題 吟 「 明日(あした)」
締 切 平成20年12月5日(金)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp |
 |