緑陰随筆特集

宇 都 宮 を 訪 れ て・・・感 じ た こ と
 
鹿児島県言語聴覚士会会長
                   池上 敏幸

 平成20年6月21日、22日の2日間、栃木県宇都宮市の栃木県総合文化センターにて、第9回日本言語聴覚士協会総会・日本言語聴覚学会が開催された。今回のテーマは、「言語聴覚療法の最前線」で、臨床と研究の循環に焦点をあて活発な討論が繰り広げられた。様々な演題が登録されており、改めて言語聴覚士が関わる分野の広さに驚いた。また、言語聴覚士という仕事に就けたことを誇りに思える学会であった。
 ところで、宇都宮と聞くと何を連想されるだろうか。私は、「世界遺産の日光東照宮」と「日本一の餃子」が頭に浮かんだ。宇都宮駅に着くといたるところに餃子の暖簾や幟がなびいていた。早速、目に付いた店に飛び込み、おすすめの餃子ランチを注文した。地元の方は、どのようにして食するのか、周りを見渡しながら、常連の様に振る舞った。外は/paripari/と音が鳴り、中は濃厚な肉汁が滴る餃子と生姜の利いた御新香が印象的なランチであった。
 今回のスケジュールでは、日光へ足を運ぶことが出来なかった。しかし、学会や総会で出会った恩師や親友、鹿児島県内の言語聴覚士と情熱を語り、情報を交換し、コミュニケーションがはかれ非常に有意義な時間を過ごすことが出来た。
 この二つの俳句は、宇都宮から帰鹿後、夏をテーマに失語症を呈する方に書いていただいたものである。匿名であればということで了承をいただいた。なんとも味のある俳句である。詠むだけで、笑顔に満たされてしまう。自然と会話も弾み、食の話に繋がっていく。中でも「田んぼ」というキーワードは、日本人の「食」の原点を彷彿とさせる。最近は、摂食・嚥下障害領域がメインのように思われがちな言語聴覚士だが、この俳句を詠むと、「ことば」・「食」・「コミュニケーション」の繋がりを考えさせられる。私の中で、宇都宮の学会で得たことや、speech、language、hearing、feeding、pre-speech、が一つになった様に思えた。そして、臨床の場で摂食・嚥下領域に携わる際、大切なコミュニケーションを置き忘れていたように感じた。
 今年度に入り、言語聴覚士の原点「コミュニケーション」をみつめなおす機会が度々得られた。学会、餃子、俳句が、コミュニケーションに関する思考回路をさらに刺激する好材料になったことは間違いない。今後、コミュニケーションを重要視し、思いやりのある言語聴覚士が、臨床現場でサービスを提供できるように県士会としても取り組んでいきたい。


            


 

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