鹿市医郷壇

兼題「点(てん)」

(342) 永徳 天真 選




錦江支部 城山古狸庵

良か味で姑て満点ぬ貰ろた嫁
(よかあっで しゅて満点ぬ もろた嫁)

(唱)三つ星よっか値打ちゃあいかも
(唱)(三つ星よっか ねうちゃあいかも)

 煮込みや炊き込みなど、家庭で作る料理にはその家の味があり、そのおふくろの味は、代代姑から嫁へと受け継がれています。料理は味加減など、その勘所が大切で、それを姑に学んできた嫁の料理に、やっと合格点が出ました。料理が上手になったと喜ぶ姑、褒められて喜ぶ嫁の互いの関係が、実にほほえましいです。




武岡 志郎

良か点も見れち戻った娘い意見
(よか点も 見れち戻った こい意見)

(唱)納得くしたかどうか分からじ
(唱)(なっとくしたか どうかわからじ)

 娘が里帰りで両親に、夫への不平不満をぶちまけたのでしょう。そこに問題点はあるにしても、娘の一方的な主張を最後まで聞いた親は、自分のことは棚に上げているかもしれない娘に対して、夫婦関係に口出ししても始まらないと思いつつも、人生の先輩として「良(よ)か所(とこい)もあっどが」と寛容に諭されたようです。




大崎町 植村聴診器

好んじゃじ点付け様も無見合写真
(このんじゃじ てんつけよもね みえ写真)

(唱)大概な写真じゃOKが出らじ
(唱)(てげな写真じゃ オーケがでらじ)

 男女交際に縁遠く、結婚相手が見つけられない人には見合いが助け舟です。
 見合いをする前には、まず相手の素性を知り、そして見合いをするかの決断をさせるのが見合(みえ)写真です。仲人の持ってきたその見合(みえ)写真に、点が付けられないとは口が裂けても言えませんが、ご縁が無かったようです。本音の木強(ぼっけ)な句です。


 五客一席 清滝支部 鮫島爺児医
良か笑顔通知表ん点上がっ居っ
(よか笑顔 通知表ん点 あがっちょっ)

(唱)頑張ったねえち晩なからあげ
(唱)(きばったねえち 晩なからあげ)


 五客二席 錦江支部 城山古狸庵
点滴の袋が並るだ面会室
(てんてっの 袋がなるだ めんかいじょ)

(唱)直き退院ち話も弾ん
(唱)(じき退院ち 話もはずん)


 五客三席 伊敷支部 谷山五郎猫
赤点も卒後にゃ頑張っ一人前
(赤点も そっごにゃきばっ ひといまえ)

(唱)根性ん分な前かあ据っ
(唱)(こんじょんぶんな 前かあすわっ)


 五客四席 紫南支部 紫原ぢごろ
一点差合否を決むい厳し娑婆
(一点差 合否をきむい きびし娑婆)

(唱)こいが人生分かれ道ちなっ
(唱)(こいが人生 分かれみちなっ)


 五客五席 武岡 志郎
満点に両方で似たち褒むい親
(満点に まんぼでにたち ほむい親)

(唱)俺じゃ私じゃ言て譲らせじ
(唱)(おいじゃあたいじゃ ちゅてゆずらせじ)


秀  逸

清滝支部 鮫島爺児医

凄ぜ攻めも点がはいらじPK負け
(わぜせめも 点がはいらじ ピーケまけ)

修学旅行ん前肩どん揉んで点稼っ
(りょこん前 肩どんもんで てんかせっ)

通知表点が下がれば見せん孫
(通知表 点が下がれば みせん孫)


錦江支部 城山古狸庵

百点ぬ握っ帰った嬉し孫
(百点ぬ にぎっもどった うれし孫)

一点に泣て後いした甲子園
(一点に ねてあといした 甲子園)


上町支部 吉野なでしこ

のど自慢歌詞すけ忘れっ点な無し
(のど自慢 かすけわすれっ 点なのし)

驚ったこげな点数で合格ち
(たまがった こげなてんすで ごうかっち)


大崎町 植村聴診器

一点が十円の診療い多忙こ医者
(一点が じゅえんのよじょい せしこ医者)

満点の健康す仲も良金婚日
(満点の さかす仲もえ 金婚日)


伊敷支部 矢上 垂穗

朝青龍黙れち欠点もひん投げっ
(あさしょうりゅう だまれちあらも ひんなげっ)

再診の減点に騒動中医協
(再診の 減点にそど 中医協)


武岡 志郎

先き惚れた点で喧嘩にゃ勝ちゃならじ
(さきほれた 点で喧嘩にゃ かちゃならじ)

二百本通過点ちゅな態のイチロ
(二百本 通過点ちゅな ふのイチロ)


紫南支部 紫原ぢごろ

手紙書っ言難き所は点点で
(てがんかっ ゆききとこいは 点点で)

一点に泣たい笑ろたい辛れ試験
(一点に ねたいわろたい つれ試験)


伊敷支部 谷山五郎猫

猫ん治療保険が利かじ眼どま点
(猫んちりょ 保険がきかじ 眼どま点)

点滴をしっ街ち出張い二日酔い
(点滴を しっまちでばい 二日酔い)


作句教室

 薩摩郷句の基本は、定型詩で、五・七・五の十七音字である点です。
 文字数の数え方は、医者(いしゃ)や沸(うぇ)っなどの「しゃ」「うぇ」の拗音だけが、かな二文字ですが一音字で数え、学校(がっこ)や来(き)っなどの小文字の「っ」も含めた他のかなはすべて一音字で数えますので、字余りや字足らずにならないように指折り数えて作句に苦労しています。
 あと一音字、二音字が作句で欲しい時もありますが、それでは五・七・五のリズムが壊されてしまいますので、ことばの位置を変えたり、別なことばに置き換えるなどして破調句にならないようにする吟味と努力が大事なことだと思います。


薩摩郷句鑑賞 13

雛祭兄はしおらしゅ隅み曲がっ
(ひなじょゆえ あにょはしおらしゅ 隅み曲がっ)

              小野原一刀斎

 桃の節句のことを今はたいてい「ひなまつい」と呼んでいるようだが、昔は「ひなじょゆえ」と言った。
 また、人形も、帖佐人形とか、東郷人形など鄙(ひな)びたものは、最近飾らないが、ただ蓬餅(ふっのもっ)を搗く風習は残っているようである。
 ところで、女の子の節句だというので、小さな兄ちゃんは、お客さん顔で、隅っこにかしこまっているのである。誠にほほえましい情景である。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋




薩 摩 郷 句 募 集
◎5 号
題 吟 「 髭(ひげ) 」
締 切 平成20年4月4日(金)
◎6 号
題 吟 「 気力(あや) 」
締 切 平成20年5月2日(金)

◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:y-ishigaki@city.kagoshima.med.or.jp


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