新年明けましておめでとうございます。会員の皆様方にはご家族おそろいでお健やかな新年をお迎えの事と拝察申し上げます。昨年は、秋が非常に短く夏から急に冬に転じたようで、皆様方体調に影響などはなかったでしょうか。
昨年は当院にとりまして、3月までは一昨年度の経営不振を引きずっておりましたが、看護部の努力によりまして7:1看護基準を取得、また会員の皆様より多くの患者さんをご紹介頂き、お蔭様で昨年の上半期の損益が−175,983,000円だったのに比し、今年度のそれは−19,575,000円で、実に昨年度の約1/10に減じました。過去12年間(144ヶ月)の月別収益順位の実績を見ましても、今年度の7月が4番目、8月が7番目、6月が10番目、4月が12番目と上位を占めておりました。現場は多忙を極めましたが、職員の皆さん実に良く動いていただきました。感謝いたしております。従来冬季には実績が上がっておりますので、今年度の下半期の業績も期待できるのでないかと思っております。
今年は診療報酬改訂のときに当たります。国家的には2008年度の社会保障費を2,200億円削減すべきとの大命題があるようです。ただし診療報酬本体部分のマイナス改定は避けるべきでプラスマイナスゼロとしたいとの話も聞こえてきます。また昨年10月25日厚労省保険局医療課長 原 徳壽氏は「勤務医不足対策の意味も含め、苦しい環境の中で頑張っている急性期病院の評価が必要」との談話も発表しておりますが、2,200億の削減の減資をどこに求めるかということになると薬価・調剤報酬引き下げ・後発品使用促進で1,200億、組合健保・共済健保による政管健保の国庫負担の肩代わりで財源確保1,000億と目論んでいるようです。これには多方面からの逆襲に遭うのではないかと思っております。
昨年11月時点の確たる情報では、プラス改定となる部分の財源をすべて診療所再診料低減で賄うとしておりますが、これは医師会の猛反発にあうのではないでしょうか。更に消費税に関しては据え置きとの決着を見たようです。これは痛し痒しで社会保障の原資を消費税に求められないと、いったい原資をどうするのだろうと不安になるのは小生だけでしょうか。一方医療機関にとって消費税が上がらないことは有難いことです。元々医療機関にとって消費税なるものは業者からの購入価格には消費税を支払い、患者さんへの転嫁はできないという不思議な税なのです。
医療費改定について申しますと、我々急性期医療に携わるものにとって改定の中で具体的に見えているところは「医療クラーク(事務員)」制を始め勤務医の業務内容の見直しが行われていることが特筆すべき点ではないでしょうか。ただしこれも情報によるとモデル事業として施行するとも聞いておりますし、その費用も診療報酬の中に入れると聞いております。また色々物議をかもした7:1看護基準の問題も考え直す必要に迫られているようです。さらに小児医療については5名以上の小児科医の勤務する医療機関にはそれなりの手当てを考えているようです。
日本の世界に類を見ない少子高齢化の高速化が、社会保障関連で政治をはじめとして、あらゆるところで歪みを生じつつあるようです。このような時代において、社会保障関連の中で最も重要な位置にある医療の問題を真っ先に解決しなければならないと思います。先々月も裁判所で自由診療と保険診療の乗り入れである、所謂、混合診療を違法としないとの判決を下したようですが、本来公平であるべき医療に個人の経済力によって恩恵の受け方に差異が生じる仕組みは、命の重さは、性、年齢、貧富に拘わらず平等であるという基本的人権に鑑みますと誠にもって許しがたいことだと思うのであります。如何なる医療技術も生命を救い保持しうるという客観的なデータがあるのであれば国家がその技術に対して担保し補償すべきと思います。
今年はこのように長年にわたって歪んだまま引きずってきた厚生行政、社会保障制度への関心が昨年に比し一段と高まるのではないでしょうか。国民一人一人がこの問題をわが事として考えていただきたいものです。そして更に論議を深め、国は如何したら国民が安全に安心して日常を送れるかを考えて頂き、国民の安心安全を担保すべきではなかろうかと思います。現在社会保障費の国家予算に占める割合は「新ゴールドプラン」が示されるなど、高齢化の進行に伴う老人対策の必要から増加しているとはいえ、なお主要国と比較すると日本の遅れが目立ちGDP(国内総生産)で比較すると、スウェーデンの四分の一、英・米・独・仏・伊の二分の一にすぎないのが現状です。日本の国家予算の中で一般会計(これは白日の下に曝されているのですが)以外に存在する別枠の莫大な特別会計予算の存在を考えるとまだまだ工夫の余地はあるのではないでしょうか。
当院の現状は、前述しましたように経営的には少し明るさが見えてきたようですが、まだまだ努力する必要はあろうかと思います。それは職員の皆さんが病院に対する確固たる帰属意識を持つことではないでしょうか。ほとんどの職員の皆さんは帰属意識を持っておられると思いますが、全職員が一丸となることが大事であろうと思います。今医療界はどの分野でも需給関係のバランスが取れておりませんので、どうしても被雇用者のほうに利があります。このような中にあって、当院が目指すものは病院の中の病院というステータスを確固たるものにすることではないでしょうか。自らのステータスを向上させる動きの中で、職員の自主性の表れとして診療部と看護部の協力によるPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)チーム、癌化学療法チーム、緩和ケアチームなど自主的に立ち上げたグループがあります。このようなチームの自然発生的立ち上げや、こぞって認定看護師の取得をしようとする動きは病院全体の活性化を促し、ステータスの向上にも繋がります。そして組織を牽引していくものと期待しております。特に外来癌化学療法に関しましては、県下でも症例数はトップレベルにあろうかと思います。このようなグループに対して、病院側としては大いに援助の手を差し伸べたいと思っております。がん治療は患者さんと共に悩み苦しみ、一回お付き合いを始めたら患者さんの命が尽きる最後までお付き合いしなければならないという側面があります。医療者も半端な気持ちでこの領域には足を踏み入れられない分野です。チームの皆さんはこの事を承知の上で取り組み始めたのですから、これは賞賛に値することです。今後国の政策としてのがん治療に一役買うものと思います。
私どもの病院は国の提唱する第5次医療法改正(医療制度改革関連法案)が平成20年4月から、新医療計画として策定・実施されることになっている。即ち、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の4疾患、救急医療、災害医療、へき地医療、小児医療、周産期医療の5事業のうち殆どをカバーしております。国のこれらの事業に大いに貢献し、国民の健康を守っていくのが地域医療支援病院としての当院の使命ではないかと思っております。今年も市民、県民、会員の皆様のご期待に応えるべく一層努力研鑽を積んで参りたいと思います。皆様の今年の平穏を祈念し、私どもの病院に対するご支援の程宜しくお願いいたします。

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