=== 新春随筆 ===

カ モ ノ ハ シ と コ ア ラ

東区・郡元支部
(老人保健施設ひまわり)

     林  敏雄
 平成13年の秋、オーストラリアの世界遺産グレートバリアリーフを見るために、ケアンズの街を訪れた。夥しい種類の珊瑚礁や熱帯魚をグラスボートで鑑賞し、珊瑚礁のある所はエメラルド・グリーンに染まっている海を、ヘリで空から見学した。動物好きの私にとって、オーストラリア特有の珍しい動物にも会えて嬉しかった。オプションで夜の野生動物探検というのがあり参加したが、ハイライトはオーストラリアにしかいないというカモノハシで、哺乳動物なのに卵を産むという変わり種である。バスでマランダ高原に登り、淀んで池のようになった川で見ることが出来た。周辺は薄暗くなっており、しかも殆ど水中にいるので、息継ぎで水面に顔を出した一瞬だけの観察なので物足りなかった。
 平成18年5月のゴールデン・ウィークに、再度オーストラリアを訪れて、シドニーの水族館で、カモノハシを真近に観察できたので嬉しかった。1頭だけだったが、大きな水槽の中を凄いスピードで泳ぎ回っていたので、写真を撮るのが大変だった。カワウソのような感じの動物で、指間には水かきがあり、尾も平たく泳ぐのに都合良く出来ていた。嘴のことをハシというが、名前の由来となっている鴨のような平たい嘴もはっきり分かった(写真1、2)。乳房ははっきりしないが、卵から孵化した小さな子どもは、腹壁にしみ出てくる乳を飲んで成長するという(写真3)。

写真 1
写真 2
写真 3
 
 ケアンズの動物探検では、道路をヨチヨチ歩いているハリモグラにも遭遇した。これも卵を産む哺乳動物で、ケアンズでは世界に2種類しかいない単孔類を同時に見れてラッキーだった。
 オーストラリアは有袋類の天国でもあり、野生動物探検の当日、辺りはすっかり暗くなっていたが、野生のカンガルーの群れが、車のライトを浴びて飛び跳ねていた。小型のカンガルーのようなワラビーも十数頭いて、ヒマワリの種を手の平に乗せると喜んで食べた。樹上生活をしているポッサムは、ウサギ位の大きさで初めて見た動物だったが、バナナを見せると喜んで食べた。背中を触ると柔らかい毛で、手袋やカーディガンを作ると軽くて温かいので珍重されている。
 有袋類で一番有名なのは勿論コアラである。鹿児島の平川動物公園にコアラがやって来た時には、見学者が延々と列をなした。オーストラリアで野生のコアラを見るのは簡単ではないようで、ケアンズではワイルド・ワールドというミニ動物園でコアラを抱いて写真を撮って貰えた。
 2度目のオーストラリア訪問では、メルボルン郊外で、野生のコアラをやっと見ることが出来た。南海岸の景勝地キリストの「12使徒の奇岩群」を見に行く途中、野生のコアラがいるというユーカリ林に立ち寄った。20人程のツアー仲間とバスを降りてコアラを探したが、20分位経ってガイドさんが「見つけましたよ」と叫んだ。ユーカリの高い枝の股にコアラが1頭丸くなって寝ていた(写真4)。夜行性動物なので寝ているのは仕方ないということで、望遠レンズで写真を撮ってから引き揚げたが、出発して間もなくコアラがユーカリの葉を食べているのに遭遇した。しかもバスの窓の目の前の低い所で、「可愛い!」の声が一斉に上がった。しかしコアラは大声に驚いたのか食べるのを止めて、直ぐ移動してしまった(写真5)。

写真 4
写真 5

 コアラが食べるユーカリの葉は、栄養が少ないので沢山食べる必要があるし、エネルギーを消耗しないため、食べる時以外は殆ど寝ているという。ユーカリには毒があるが、コアラには毒を分解する能力がある。子どもは母親の袋の中の乳首から乳を飲んで育つが、母親の腸で出来て肛門から排泄されるパップという物を食べている。これは糞とは別物で、これで毒に対する免疫が出来るという。
 ゴールド・コーストは北半球の沖縄と同じ緯度相当の亜熱帯のリゾートで、レジャー施設が充実していて、ハワイに匹敵する新婚さんのメッカで、子供達の楽園である(写真6)。ゴールド・コーストではアクアダックという水陸両用のバスに乗って市内観光した(写真7)。ネラング川に入ると岸辺には純白の高級別荘がずらりと並び、中には自家用ヘリコプターが庭に置かれた有名タレントの別荘があったりで驚いた。

写真 6
写真 7

 ゴールド・コーストでは全てのマリン・スポーツが楽しめるし、イルカや水上スキーのショーで有名なシーワールドを始め、テーマパークが数多くあって、子供も大人も楽しめる。少し南に行った郊外にカランビン・ワイルドライフ・サンクチュアリがあり、沢山の動物や鳥が集められていて、大勢の観光客で賑わっていた。中でも目玉はコアラを抱いての写真撮影で(写真8)、30分の時間限定なので長い行列を作っていた。二度目ではあったが折角来たのだから、と自分も並んだ。ぬいぐるみでなく、毛並みが綺麗な本物のコアラを抱いた時の、ズッシリとした重みの感触がいまだに忘れられない(写真9)。コアラを抱けるのはゴールド・コーストまでで、ここより以南のシドニーやメルボルンの動物園では出来ないらしい。

写真 8
写真 9

 ゴールド・コーストには海のリゾートばかりでなく、山にも世界遺産のラミントン国立公園があり行ってみた。ラミントン隣接のナチュラルブリッジで、ガガンボ(大蚊)の1種の幼虫が発光する珍しいツチボタルの飼育に成功した洞窟があり、満点の星のように輝くツチボタルを目の前で観察出来た。
 オーストラリアは治安も良く、自然派の私としても気に入っている楽しい国である。





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