鹿市医郷壇

兼題「無理」(むい)

(336) 永徳 天真 選




上町支部 吉野なでしこ

無理じゃがち人い言われっ精出けっ
(無理じゃがち 人いゆわれっ はめつけっ)

(唱)くっさあろ言て燃え滾い内心
(唱)くっさあろちゅて もえたぎいねしゅ

 何か事を成そうとする時に、ほかの人はそれに対して、とやかく口出しをするものです。まして、これから挑戦しようと意気込んでいるのに、「そや無理(むい)じゃ」とは、全く無礼千万な話です。
 本人はあまり自信が無かったのかもしれませんが、言われて、負けん気が奮い立ちました。応援したくなる句です。




大崎町 植村聴診器

こげな態じゃ美し国な無理な首相
(こげなふじゃ うつくしくんな 無理なしゅそ)

(唱)緩り褌しゅば締め直せんな
(唱)ゆりふんどしゅば しめなおせんな

 参議院選挙での自民党の歴史的大敗の責任が、安倍首相の肩に重く伸し掛かってきています。そもそもの原因である連続した大臣たちの不祥事に、呆れ果てた国民が、その審判を下しました。
 スローガンの美しい国の建設以前の問題で、土台が崩れていては望みはないだろうと、嘆きが聞こえてくる句です。




武岡 志郎

大概大概ん勉強で無理な神頼ん
(てげてげん べんきょで無理な かんだのん)

(唱)神様も首ぶ傾げちょいじゃろ
(唱)かんさあもくぶ かしげちょいじゃろ

 受験シーズンになればよく見かける光景です。力の限りを尽くした人の願いは切実ですが、適当な勉強で合格を神様にお願いするのは、虫がいい話です。
 一生懸命頑張った人も、時として不合格になることもある現実ですが、精一杯努力することに意義があり、大概では世の中は通じないよと、訴えた句です。


五客一席 
上町支部 吉野なでしこ

無理もなか連れが先き逝っ小こなっ
(無理もなか つれがさきいっ ちんこなっ)

(唱)連れん分ずい長生くしやい
(唱)つれんぶんずい ながいくしやい


五客二席
清滝支部 鮫島爺児医

塾通いあいもこいもち無理ゆさせっ
(じゅっがよい あいもこいもち むゆさせっ)

(唱)親ん言成いで可哀想した子供
(唱)親んゆないで ぐらしたこどん


五客三席
錦江支部 城山古狸庵

無理なこっ三高ん青年い嫁っち言っ
(無理なこっ さんこんにせい いっちゆっ)

(唱)愛せかあれば願げは叶のかも
(唱)愛せかあれば ねげはかのかも


五客四席
紫南支部 紫原ぢごろ

無理をしっ買たパソコンな塵くろっ
(無理をしっ こたパソコンな ごんくろっ)

(唱)も少と物を大切ちせんな
(唱)もちっと物を てせちせんな


五客五席
伊敷支部 矢上 垂穗

当選ろ言ちゃ無理も混ぜ込だマニフェスト
(あがろちゅちゃ 無理もまぜくだ マニフェスト)

(唱)絵い描た餅じゃ何じゃいならじ
(唱)絵いけたもっじゃ ないじゃいならじ


秀  逸

錦江支部 城山古狸庵

無理をしっ買た指輪を受け取らじ
(無理をしっ こたいっがねを 受け取らじ)

無理ゆすんな言たなあ精一杯精出けっ
(むゆすんな ちゅたなあせっぺ はめつけっ)

嫁入いの条件に無理ゆきしかえっ
(よめいいの 条件にむゆ きしかえっ)


清滝支部 鮫島爺児医

無理をしっ頑張い医者をば拝ん両親
(無理をしっ きばい医者をば おがんおや)

無理をしっ見合をさせたがどんぴしゃっ
(無理をしっ みえをさせたが どんぴしゃっ)

無理ゆしてん結果が良かや褒められっ
(むゆしてん 結果がよかや ほめられっ)


紫南支部 紫原ぢごろ

答弁ぬ無理ゆした首相い野次が飛っ
(答弁ぬ むゆしたしゅそい 野次がつっ)

無理をしっ若け衆と歩るて疲れ倒けっ
(無理をしっ わけしとさるて だれとけっ)

医者通いけなった無理なダイエット
(医者がよい けなった無理な ダイエット)


大崎町 植村聴診器

玉ん輿しゃ無理じゃったじゃろ直き駄目
(たまんこしゃ 無理じゃったじゃろ いっきぼっ)

身の丈ん無理の無暮らし仲良家族
(みのたけん 無理のねくらし なかえけね)


上町支部 吉野なでしこ

青年な無理をしいしいプレゼント
(にせどんな 無理をしいしい プレゼント)

暑か夏無理はすんなち子んメール
(あつかなっ 無理はすんなち 子んメール)


武岡 志郎

無理ゆすんな言どん頑張れち目で催促っ
(無理ゆすんな ちゅどんきばれち 目でせじっ)

ワンマンが無理ゆさせたこちゃ無かち言っ
(ワンマンが むゆさせたこちゃ なかちゆっ)


伊敷支部 矢上 垂穗

選挙前あいこい無理ち言はならじ
(選挙前 あいこい無理ち ゆはならじ)


作句教室
 今月の投句作品の中で、字余りが目につきました。中七では、あれこれ無理とは(八音字)、無理な答弁で(八音字)、無理なダイエットで(九音字)、言(ちゅ)がまだ頑張(きば)らんかち(十音字)、下五では、無理難題(六音字)等がありました。
 破調句を作らないためには、ことばの位置を変えたり、別のことばに変えたりする吟味が必要で、五・七・五の基本の形を常に意識し、そのリズムを崩さないことが大事だろうと思います。


薩摩郷句鑑賞 7

鯛の魚ん大てよな膳に腰す据えっ
(てのいおん ふてよな膳に こすすえっ)
堂園 三洋

 鯛が膳に出ているところからして、何かお祝いの席であろうと思う。結婚披露宴のように、座席が指定されているような場合は、こういうことは起こるまいから、自由に座れる席だったのだろう。
 それにしても、鯛の大きいような膳のところに座るあたり、よほどがめついのか、魚好きなのかだろう。しかし、憎めないおかしさがある。


目が肥えた今ならこげな亭主しな嫁じ
(目がこえた 今ならこげな てしなこじ)
長瀬 慶子

 恋をしている時は「あばたも笑凹」で、欠点など見えない。見合いであったとしても、若いうちは人を見る目も十分でないし、思慮分別も足りないものである。
 それでなくとも、結婚生活を続けていると、お互いにずるくもなれば、短所も見えてきて、鼻もちならなくなるものである。「今だったら、こんな人とは結婚しなかったのに」と悔いるところが滑稽。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋


薩 摩 郷 句 募 集

◎11 号
題 吟 「 素性(すじょ) 」
締 切 平成19年10月5日
◎12 号
題 吟 「 鍵(かっ) 」
締 切 平成19年11月5日
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:kasiisoumu-e@po.minc.ne.jp


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