編集後記


 麻疹が関東地方で大流行し多数の有名大学や都立高校で休校となり、殺到する希望者に接種するため麻疹単独のワクチンは全国の市場から消失しました。ワクチン接種率が低い時代は自然麻疹が流行し、ブースター効果を得てワクチン接種者も免疫が低下しませんでした。接種率が90%以上に向上すると自然麻疹の流行が極めてまれとなり、乳児期に接種されたワクチンも高校や大学ごろには抗体価が低下し、ひとたび流行すると今回のような大流行を起こすと考えられています。このような事態は欧米では経験ずみであり、人工的なブースター接種として就学前に2回目のワクチン接種を、すでに17年も前から行っています。日本で就学前の2回目接種が始まったのは昨年からです。日本のワクチン行政のお粗末さは北朝鮮並みと揶揄される所以であります。県内でもすでに18例の麻疹発症がみられます。皆様ご注意ください。今月は小児科医の繰言から始めさせていただきました。
 「誌上ギャラリー」は6月にふさわしい天辰先生のアジサイです。
 「論説と話題」は第27回日本医学会総会の特集です。産業医、免疫、画像、癌治療、移植医療、認知症など最先端の医学・医療の成果が紹介されています。
 「くすり一口メモ」は蓄積しにくい麻薬性鎮痛剤レミフェンタニルの特徴です。
 「検査一口メモ」はすぐに役にたつ微生物検査の一般細菌の依頼方法です。
 「学術」は鹿児島市医師会病院からイレウスにおける高気圧酸素治療を、今給黎総合病院からRFP, SM耐性の肺結核の一例をいただきました。
 「随筆・その他」では朝倉先生の脳外科の父クッシングの話です。クッシングは余程優秀だったとみえ、いたるところからオファーがあったようです。脇丸先生の身辺整理余禄では自分の人生を振り返る切っ掛けをいただきました。鮫島先生の波の平刀工の由来は薩摩の魂にふれる思いがしました。
 「切手が語る医学」は古庄先生より禁煙をテーマにした切手をいただきました。我が国の男性の喫煙率も80%から39%になったとのこと。皆さんの努力の賜物でしょうか。
 「鹿市医図書室」では宇根先生より「改革にだまされるな!私たちの医療、安全、教育はこうなる」を紹介していただきました。最近の「改革」の裏側にある米国と日本の利害関係をわかりやすく示してくれています。
 「区・支部だより」を、錦江、甲東、市立病院、甲北、伊敷、紫南、谷山などの沢山の支部よりいただきました。各支部の特徴がわかり自分達の支部活動の活性化に役立ちそうです。
 「鹿市医郷壇」の題は「連れ」です。男女の連れ、親子連れ、職場の連れと多くの連れがあることがわかります。
 「鹿市医都都逸」は田植え時、入梅などです。風情のある唄が聞こえてきそうです。
 医学会総会で最先端の医学・医療が華やかに紹介されています。一方地味な公衆衛生などを支える行政、医療、医育機関の整備も、国民の健康を守るために重要と考えます。第一線の国民の健康を守っている私たち医師会の活動にももっと光をあてて欲しいと思うこの頃です。

                                         (編集委員 南  武嗣
 


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