鹿市医郷壇

兼題「 連(つ)れ 」

(333) 永徳 天真 選




 錦江支部 城山古狸庵
美男子は逢度い別な連れと居っ
(よかにせは おたびいべっな 連れとおっ)

(唱)女泣かせんプレイボーイか
  (おなごなかせん プレイボーイか)

 男の目線、女の目線、どちらからでもこのような情景を目にすることがありますが、私ども男の立場から見ると「持(も)つい男は良(よ)かもんじゃ」と嫉妬もあるようです。また、「あげな美人(シャン)ぬば連れっ」とぼやいたりもします。思えば、大方の男性は、このような場面とは縁がないのだと納得したものの、複雑な心境です。




 武岡 志郎

飲ん代が心細せで課長を連れ誘っ
(のんだいが きぼせでかちょを 連れさそっ)

(唱)奢っ貰ろおち肚でな計算
  (おごっもろおち はらでなさんにょ)

 飲み方の好きな数人の職場の仲間と、今夜当たり一杯と話がまとまったのでしょう。でも給料前か、お互い懐具合が少々さびしいので、ターゲットを人望が厚い、気前がいい酒好きの上司に絞って、うまく誘いました。部下の頼みとあれば、上司も財布の中身を見ながら、多少の出費は覚悟の上で快くOKしたでしょう。




 清滝支部 鮫島爺児医
連れ添って五十年過っが言わん好っ
(連れ添って ごじゅねんたっが ゆわんすっ)

(唱)愛の言葉を聞こごちゃい女房
  (愛の言葉を きこごちゃいかか)

 夫婦生活五十年は長いものです。この間にはいろいろなこともありました。子育てに追われた頃の昔が懐かしく、もう今では曾孫もいるかもしれません。言葉には出さないけれども好きだからこそ苦労や喜びを共に分かち合ってきた夫婦だろうと思います。口は開かなくても、目では好きだと語っていると思います。


 五客一席
 大崎町 植村聴診器
両方かあ連れを見直えたフルムーン
(まんぼかあ 連れをみなえた フルムーン)

(唱)優し亭主と思い出ん旅
  (やさしとのじょと 思い出んたっ)

 五客二席
 上町支部 吉野なでしこ
未亡人妻連れは逝たどんぼり元気
(やもめかか 連れはいたどん ぼり元気)

(唱)開放されたか伸び伸び過ぎっ
  (かいほされたか のびのびすぎっ)

 五客三席
 武岡 志郎
バーゲンに帰や連れどまけ忘れっ
(バーゲンに もどや連れどま けわすれっ)

(唱)目当てを買かて頭て無か亭主
  (めあてをこかて びんてなかてし)

 五客四席
 清滝支部 鮫島爺児医
良か児じゃち見れば連れちょい親が良し
(よかこじゃち 見れば連れちょい 親がゆし)

(唱)いけな躾をしちょったろかい
  (いけな躾を しちょったろかい)

 五客五席
 錦江支部 城山古狸庵
亭主が子を背負た茶髪の二人連れ
(てしが子を かるたちゃぱつの ふたいづれ)

(唱)強か女ん尻い敷かれちょっ
  (つよかおなごん しいしかれちょっ)


秀  逸

 清滝支部 鮫島爺児医

長旅も連れと気が合っ短こなっ
(ながたっも 連れときがおっ みしこなっ)

良か見合で連れ決まってん心配な父親
(よかみえで 連れきまってん せわなとと)

児を寝かす母親あ連れ寝で鼾くけっ
(こを寝かす かかあつれねで いびくけっ)


 紫南支部 紫原ぢごろ

連れ小便で前立腺が気いかかっ
(連れしょんで ぜんりっせんが 気いかかっ)

定年で連れん素振いが気いかかっ
(定年で 連れんそぶいが 気いかかっ)

スキャンダル連れちょっ所ゆ撮されっ
(スキャンダル 連れちょっとこゆ うつされっ)


 錦江支部 城山古狸庵

逝た父親ん遺影も連れっ甲子園
(いたととん 遺影も連れっ 甲子園)

孫ん嫁子連れち聞たや婆は寝込ん
(孫ん嫁 こづれちきたや ばはねくん)


 大崎町 植村聴診器

こん俺に良も我慢っ来た連れん女房
(こんおいに ゆもきばっきた 連れん女房)

悪り連れい引張っ込まれた暴走族
(わり連れい そびっこまれた ぼうそうぞっ)


 上町支部 吉野なでしこ

定年後留守番役の連れん亭主
(定年後 ずしばんやっの 連れんてし)

子連れ旅歩かん子をば肩車し
(こづれたっ あるかん子をば びびんこし)


 伊敷支部 矢上 垂穗

三人も子連れ頼もし若か夫婦
(三人も こづれたのもし わっかみと)


 武岡 志郎

東京でも連れと鹿児島語で通えっ
(とうきょでも 連れとかごっま ごでとえっ)


 作句教室

 薩摩郷句は、俳句と同じように五・七・五の十七音を定型とする短詩ですので、字余りや字足らずにならないようにすることが重要です。
 そこで基本となる字の数え方を復習しますが、注意する点は次の二点です。
 まず拗音(ようおん)と呼ばれる「や・ゆ・よ・わ」のかなを、他のかなの右下に小さく書いて表わす音、例えば「きゃ・ちゅ・しょ・くゎ」などは、一字として数えます。具体的には、焼酎(しょうちゅう)は四字として数え、焼酎(しょちゅ)は二字として数えます。
 次に促音(そくおん)と呼ばれる、つまる音の小さく書いて表わす「っ」は、そのまま一字として数えます。具体的には、学校(がっこう)は四字で、学校(がっこ)は三字となります。
 次の二句は、拗音も促音も入っていますので、五・七・五になっているか、指を折りながら字の数を数えてみて下さい。

残高な無が貯金通帳は沢山有っ
(ざんなねが ちょきんつうちょは ずばっあっ)

何もけん揃ちゃおっどん嫁が来じ
(ないもけん そろちゃおっどん 嫁がこじ)


 薩摩郷句鑑賞 4

虫くれ歯金の無か時き疼っでっ
(虫くれば ぜんのなかとき うずっでっ)
                            畠中 速男

 虫歯の痛いのはやりきれないもので、怒鳴りたくなったり、八つ当たりしたくなるもの。
 それが、お金のない時に痛みだしたわけである。治療代がなくて、治療に行けないということより、金の工面で頭の痛いときに、虫歯がずきずき疼くので、なおむしゃくしゃしてきたのであろう。物でも言えば、噛みつきそうな顔が目に浮かんでくる。
 ※三條風雲児著「薩摩狂句暦」より抜粋

薩 摩 郷 句 募 集
8 号
題 吟 「 機嫌(ごっ) 」
締 切 平成19年7月5日
9 号
題 吟 「 無む理い 」
締 切 平成19年8月6日
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:kasiisoumu-e@po.minc.ne.jp


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