天
武岡 志郎
朝帰い言訳あ声が裏返っ
(あさもどい ゆわけあ声がうらがえっ)
(唱)女房け睨られっ出い脂汗
(かけねぎられっ でいあぶらあせ)
自業自得と言ってしまえばそれまでですが、同情を誘う作品です。朝帰りの理由もそれぞれでしょうが、どうやら尋常ではなさそうな気配です。友人との口裏合わせの策も無駄だったようで、奥さんの畳み掛ける追求におたおたして変な声が出ました。かねては真面目なご主人がこの危機をどう乗り切るか興味津津です。
地
大崎町 植村聴診器
妻け向こっ愛しちょっどち出らん声
(かけむこっ 愛しちょっどち でらん声)
(唱)今更恥ね年中思ちょっ
(いまさらげんね ねんじゅおもちょっ)
男の面子へのこだわりを突いた作品です。夫婦の関係もいろいろな形があって十人十色でしょう。常にコミュニケーションをとって、仲睦まじい夫婦もいますが、若い時ならいざ知らず、永年連れ添っていれば「言ゆわんでん分わかっどが」と、薩摩隼人の口癖です。でも女性はやはり、愛のことばが欲しいのでしょう。
人
錦江支部 城山古狸庵
永田町ん衆いにゃ届かん民ん声
(ながたちょん しいにゃとじかん 民ん声)
(唱)政治不信が長長続じっ
(政治不信が ながながつじっ)
骨のある政治家はいるのかと批判された作品です。大臣や国会議員の不祥事が後を絶ちません。国会では、これらの問題に、与野党の見苦しい攻防が繰り返されるばかりです。社会の為、国民の為の政治なのに、国民の代表として恥ずかしくないのでしょうか。美しく豊かな日本を築くために、国民の声を聞くべきです。
五客一席 清滝支部 鮫島爺児医
大て声で叫っ散らけた選挙戦
(ふて声で おらっちらけた 選挙戦)
(唱)寝せた赤子が驚っ泣ちょっ
(寝せた赤子が たまがっねちょっ)
五客二席 武岡 志郎
偏屈が猫いな優し声で叱っ
(へんこっが 猫いなやさし 声でがっ)
(唱)人間嫌れも内心は温け
(人間ぎれも ねしゅはあったけ)
五客三席 錦江支部 城山古狸庵
出所は知事室じゃった天の声
(でどこいは ちじしっじゃった 天の声)
(唱)金の計算を密室でしっ
(ぜんのさんにょを みっしっでしっ)
五客四席 上町支部 吉野なでしこ
孫ん守い声はけ嗄れっ腰しゃ痛し
(孫んもい 声はけかれっ こしゃいとし)
(唱)じっとせん孫げすったい疲れっ
(じっとせんまげ すったいだれっ)
五客五席 伊敷支部 矢上 垂穗
春の校庭千の雀ん声んごっ
(はいのにわ せんの雀ん 声んごっ)
(唱)賑こ跳ぬい可愛ぜ一年坊
(にっぎゃこはぬい むぜいっねんぼ)
秀 逸
清滝支部 鮫島爺児医
座布団も声も宙い舞た良か相撲
(座布団も 声もちゅいもた よか相撲)
頼ん事ちゃ猫撫で声で土産付っ
(たのんごちゃ ねこなでごえで みやげつっ)
産声が家内中いずるっ福くば撒っ
(うぶごえが けねじゅいずるっ ふくばめっ)
談合いなきな臭せ声が見え隠れ
(だんごいな きなくせ声が みえかくれ)
紫南支部 紫原ぢごろ
天の声聞こえは良どん実ちゃ賄賂
(天の声 聞こえはえどん じちゃ賄賂)
声へ惚れっ逢うちゃみたどん当て外れ
(こへほれっ おうちゃみたどん あてはずれ)
のど自慢声もじゃっどん調子外れ
(のど自慢 声もじゃっどん ちょしはずれ)
武岡 志郎
俺俺に祖母は嵌った切ね声
(おいおいに ばばはうたった せっね声)
5が有っち大声で子供む褒め上げっ
(5があっち うごえでこどむ ほめあげっ)
大崎町 植村聴診器
産声をあげた皇位ん継承者
(うぶごえを あげたこういん 継承者)
シベリヤい大声で呼でん帰れん息子
(シベリヤい うごえでよでん もどれんこ)
錦江支部 城山古狸庵
ウイルスにゃ罪な無かがち鶏の声
(ウイルスにゃ つんななかがち といの声)
上町支部 吉野なでしこ
かすれ声おふくろさんの歌てピシャッ
(かすれごえ おふくろさんのうて ピシャッ)
伊敷支部 矢上 垂穗
産ん機械根性ん悪さが声い出っ
(うん機械 ねしゅんわいさが 声いでっ)
作句教室
薩摩郷句は、その作品を聞いた人がすぐに内容を理解できることが大切ですので、句を詠む人はその点を意識して作句する必要があると思います。
例えば座布団を「座布団(ふとん)」と読ませたり、校庭を「校庭(にわ)」と読ませるのは無理があるようです。文字で解らせるのではなく、聞いて解るように表現することです。
また、五客の句は作者独自の表現で味のある作品となっていますが、次のように平易にまとめられてもよいと思います。
新学期校庭い児童達ん賑ん声
(新学期 こうていこらん はずん声)
薩摩郷句鑑賞 2
養生は養生焼酎は焼酎よち止めはせじ
(よじょはよじょ しょちゅはしょちゅよち やめはせじ)
大園 北辰
入院するほどではないけれども、何か病気を持って、現在治療中なのである。それで家族の者が、「焼酎を飲むと障りますよ」と気づかったのであろう。「養生は養生で、ちゃんと薬を飲んでいるのだから、晩酌をしたくらいで障るもんか」と、聞き入れないのである。
「養生は養生、焼酎は焼酎」というのは、養生と焼酎は別であるという意味。焼酎好きの人の気持ちが、実にユーモラスに出ているし、それを気づかう家族の困惑した顔も見えるようだ。
左遷じゃろ音もさせんじはっ行たっ
(左遷じゃろ 音もさせんじ はっちたっ)
平中 小紅
人事異動には、悲喜こもごもがつきもの。栄転だ抜擢だと喜ぶ人がある反面、努力に報いられなかった人、あるいは左遷の憂き目にあう人もあろう。そういう人々の思いを秘めて、今盛んに引越し荷がゆききしている。
この句は、ひっそりと荷造りをし、隣近所の人も気付かないうちに、引越して行った人への同情的な目でとらえたもの。
薩 摩 郷 句 募 集
◎6 号
題 吟 「 連(つ)れ 」
締 切 平成19年5月7日(月)
◎7 号
題 吟 「 時(とっ) 」
締 切 平成19年6月5日(火)
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒892−0846
鹿児島市加治屋町三番十号
鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 099-226-3737
FAX 099-225-6099
E-mail:kasiisoumu-e@po.minc.ne.jp |
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