鹿市医郷壇

兼題「 煙草たばこ 」

(330) 永徳 天真 選




伊敷支部 矢上 垂穗
真っ青ん空い輪っかん紫煙ゆ吹っ
まっさおん 空いわっかん けぶゆふっ

(唱)旨まかろそな煙草ん一服
(唱)うんまかろそな 煙草んいっぷっ

 とてものどかな作品です。雲一つない青空の下で一服し、紫煙を輪にしながら遊んでいる様子が目に浮かんできます。
 紫煙を上手に輪にして吹かすのは難しいですが、中には三、四個の連続の輪を作る技を持った人がいます。
 お孫さんなどがそれを見ていたら、きっと目を丸くして驚くことでしょう。




紫南支部 紫原ぢごろ
禁煙ぬしたが貯金な増えもせじ
禁煙ぬ したが貯金な ふえもせじ

(唱)貯むち気が無でぽうほ飛っ金
(唱)たむち気がねで ぽうほつっぜん

 痛い所を突いている作品です。煙草を止めたからお金が溜まるかというと、そうでもないようです。煙草が一箱三百円、一日一箱では毎月約一万円、一年間では十二万円の煙草代です。その分貯金ができそうですが、なかなか思うようにはいきません。煙草の煙と一緒で、どこかに消えていっているようです。



錦江支部 城山古狸庵
何処け行てん隅に追わるい煙草喫ん
どけいてん すんにうわるい たばこのん

(唱)文句も言えじ遠慮して吸っ
(唱)文句もゆえじ 遠慮してすっ

 喫煙者のなげきが聞こえてきそうな作品です。本人の身体への弊害は言うまでもありませんが、吸わない人への健康に及ぼす悪影響が社会的に大きく取り上げられるようになって、ここ数年で喫煙問題は加速しています。特に、公共の場での煙草を吸う場所は限られていて、愛煙家は肩身が狭い思いをさせられています。



 五客一席     錦江支部 城山古狸庵
禁煙た言が三日も保たじ吸うでけっ
やめたちゅが みっかももたじ すうでけっ

(唱)口ばっかいで方の無か亭主
(唱)くっばっかいで ほのなかとのじょ

 五客二席     清滝支部 島爺児医
煙草好っ医者が叱ってん止むたせじ
たばこずっ 医者ががってん やむたせじ

(唱)俺が身体ち聞っもんじゃ無か
(唱)おいがからだち きっもんじゃなか

 五客三席     上町支部 吉野なでしこ
禁煙ち煙草好っには折檻じゃ
禁煙ち たばこずっには 折檻じゃ

(唱)健康ん為ち頑張らんなこて
(唱)けんこん為ち きばらんなこて

 五客四席     大崎町 植村聴診器
禁煙の隠れ煙草が家ずい焼っ
禁煙の かくれ煙草が えずいえっ

(唱)ちょっしもたでな済まん大事
(唱)ちょっしもたでな すまんおおごっ

 五客五席     紫南支部 紫原ぢごろ
禁煙ち容易し事じゃが言て五度目
禁煙ち もやしこっじゃが ちゅて五度目

(唱)呆れたもんじゃ口ちゃあぐっちぇっ
(唱)あきれたもんじゃ くちゃあぐっちぇっ



秀  逸

清滝支部 島爺児医
吸な言えば故意と吹かすい横ご者
すなちゅえば わざとふかすい よんごもん

煙草栽培難儀ん割いな報われじ
たばこさっ なんぎんわいな むくわれじ

煙草をば親ん油断で幼児が飲ん
煙草をば 親ん油断で ちびがのん


上町支部 吉野なでしこ
此頃あ煙草を吸とも恥ねなっ
こんごろあ 煙草をすとも げんねなっ

値上げいもめげじ吹かすい煙草好っ
値上げいも めげじふかすい たばこずっ


紫南支部 紫原ぢごろ
禁煙で肥えっ洋服か小こなっ
禁煙でこえっ ようふかちんこなっ

禁煙の後は度々飴しゃぶい
禁煙の あとははたれっ あめしゃぶい


大崎町 植村聴診器
中学生で我が吸た煙草子も真似っ
ちゅうがっで わがすた煙草 子もまねっ

喫煙者ま肩身狭め態の喫煙所
たばこのま かたみせめふの 喫煙所


錦江支部 城山古狸庵
脛ん傷し煙草を貼った爺が治療
すねんきし 煙草をはった じが治療

焼酎ちゃ飲まん煙草も吸わじ癌になっ
しょちゃのまん 煙草もすわじ 癌になっ


伊敷支部 矢上 垂穗
煙草喫ん蛙日和ち外ですっ
たばこのん どんこびよいち 外ですっ

ガラス部屋へ恥ねどんかあ吸け走っ
ガラスべへ げんねどんかあ すけはしっ


 薩摩郷句鑑賞 1
 ここで紹介する作品は、平成元年出版の三條風雲児著「薩摩狂句暦」の中から抜粋しています。この本は、昭和五十八年と昭和六十一年の二年間にわたって南日本新聞に連載されたのをまとめたもので、郷土の歳時風俗や祭りを詠んだ作品や、それぞれの季節感の出た作品、あるいは主なニュースや話題に取材した時事吟等を一日一句ずつ取り上げ、これに評釈を加えたものです。作句の手本になると思いますので、作品をじっくり味わってください。

土筆取い孫をすぼ抜き連れ出せっ
つくしとい 孫をすぼ抜き つれ出せっ
山内 ミキ

 特に母親が外出する時、子どもが連れて行ってもらおうと、後あと追えをすると困るので、祖母などが、子供をうまくだまして外に連れ出すことを「すぼ抜ぬっ」という。
 この場合は、「土筆取りに行こうや」と言って、近くの川堤あたりに連れ出し、その間に外出させたのだろう。ぼつぼつ土筆が出る頃ではあるが、土筆があろうとなかろうと、全く構わないわけである。

都合ん悪り事た笊耳で世を暮れっ
つごんわり こたしょけみんで 世を暮れっ
田代 彦熊

 下手な碁のことを「笊碁」というが、目が荒いところからきたものだろう。目が荒ければ漏れるから、鹿児島では「つんもい碁」である。
 似たようなことで、右の耳から聞いて、左の耳に抜けてしまうのが「しょけみん」である。つまり聞いたことをすぐ忘れてしまうことなのだが、この句の場合、都合の悪いことは意識的に忘れてしまおうとしているわけで、どうも「勝手耳」(かってみん)と好一対のようだ。三月三日は「耳の日」だが、この句の耳は滑稽な耳。

薩 摩 郷 句 募 集
5 号
題 吟 「 腕うで 」
雑 吟 なんでも可
締 切 平成19年4月5日
6 号
題 吟 「 連つれ 」
雑 吟 なんでも可
締 切 平成19年5月7日
◇選 者 永徳 天真
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒八九二−〇八四六
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
TEL 〇九九−二二六−三七三七
FAX 〇九九−二二五−六〇九九
E-mail:kasiisoumu-e@po.minc.ne.jp


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