随筆・その他

愛  犬  の  死
中央区・清滝支部
(朝隈耳鼻咽喉科) 朝隈真一郎

 平成18年は私が還暦、そして母が米寿という節目の年であった。子供たちも帰ってきて祝ってくれた。めでたいよい年になるはずであった。ところが思いもしない出来事でいささかつらい年になってしまった。まずはじめに、九大医学部同窓会鹿児島支部の例会に遅刻して皆さんにご迷惑をかけた。原因は単純なスケジュールの記載ミスであった。私は会合にはいつも早めに行くほうなのでこのようなことははじめてであった。第二に大量の鼻出血を経験した。土曜日の早朝から出血し始め、2日間出血を繰り返した。総量で400−500mlは出たと思う。いつも鼻出血を止めている自分がこのような大量の鼻出血を経験するとは予想もしなかった。そして最後に、かわいがっていた犬が急に亡くなった。これだけのことが10月の3週間の間に起こった。特に愛犬の急死は精神的にこたえた。
 この犬は8年半前に我が家にやってきた。ボクサーという洋犬である。名前はボブといった。きたときは2〜3kgであったが1年ほどで30kgをこえる大型犬になった。顔を見ると一見怖そうであるがよく見るとたれ目で優しい顔をしていた。性格も無邪気で「いい奴」であった。今は世を挙げてペットブームである。我が家も全員が犬好きで、10数年前から犬を飼っていた。したがって飼い犬に死なれたことはあるし悲しい思いをしたことも経験済みである。しかし今回はいささか前の経験と違った。亡くなってしばらくは、出るのはため息ばかり、食事もおいしくなかった。飼い犬に死なれて、それが原因でうつ状態になる人もいるというが納得できた。ボブの存在が私の中でいかに大きい存在であったか、改めてよくわかった。朝の30分の散歩、休日は北埠頭から城山まで1時間半ぐらい歩いた。楽しい日々であった。犬を飼う事で癒されることはいろいろといわれている。NHKテレビで犬の癒しをテーマにしたドラマも放送された。ご覧になった方も多いと思う。犬の示す無私の愛情は何にも替えがたい。学校でのいじめが問題になっているが、いじめる子にもいじめられる子にも子犬の世話をさせてはどうだろうか。いろいろと説教をするよりも子犬が心の傷を癒してくれそうな気がする。ボブが死んで2ヶ月、我が家に新しい子犬が来た。「ちびボブ」と名づけた。思い切りかわいがろうと思う。



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