林会長の辞任を受けて、昨年12月、市来副会長が会長に選任され執行部の新たな門出となりました。市来会長、理事役員諸氏の心機一転の今後の医師会運営に期待いたします。鹿児島市医師会は今、非常に重要な時期を迎えているだけにご苦労の多いことでしょうが、一層のご尽力をお願いしたいと思います。
ここ2、3年の鹿児島市医師会の状況をみますと、効率化、改善がはかられた一方で反省すべき状況もみられ、将来どうなるのかといささか危惧される面もあるのではないでしょうか。合理化・スリム化の意欲のあまり、不十分な情報開示のもとで重要問題の処理をしようとしたことなどが、その因をなしていると思われます。長い目で見て医師会はどうあるべきか、何が大切なのかの視点が少し欠落しているとの感をいなめないのは私だけでしょうか。
会員の意向が反映された、連帯感のもてる強くて健全な医師会であってほしいと願っています。そのために、執行部は目の前の問題解決に意欲的に取り組むとともに、中・長期的ビジョンを示し、情報を開示して会員にわかりやすい医師会づくりに努めていただきたいと思います。
以下に具体的な提言をさせていただきます。
1.会員への積極的な情報開示、透明性の高い医師会運営
現在、医師会は会館建設や臨床検査センター運営、会費制度など、多くの問題を抱えています。これらに対してどのような討議がなされ、執行部がどのような方針のもとに事を進めようとしているのかが理解できるよう、会員に適切な情報が提供されるべきと考えます。とくに医師会の方向を決めるような重要な問題については丁寧な説明が求められます。このことにより医師会への理解が深まり協力も得られ、円滑で望ましい医師会運営が可能となると考えます。
2.少数意見にも謙虚に耳を傾け、建設的な意見は積極的に取り入れる
まだ記憶に新しいところですが、在宅ケア部門の廃止や看護専門学校の廃止に関して、当時執行部は事を急ぎ慎重な論議を経ずに結論を導き、当該委員会でも十分に協議されることなく、代議員会も事後承諾という形で乗り切ろうとしました。これでは会員軽視、代議員会軽視と言われても仕方がありません。
会員1,000人以上の大きな組織ですので意見の集約は容易ではないと思われますが、早い段階から会員へ情報を提供し意見を求め、少数意見にも真摯に耳を傾けて医師会運営にあたっていただきたいと思います。また、支部長会、各種委員会では、執行部からの説明、伝達に終わるのではなく、会員の意見を十分吸い上げる努力がなされるべきと考えます。
3.会員が直面する問題への積極的な取り組み
平成18年度診療報酬点数改定や6月の医療制度改革関連法案の成立は、地域医療の崩壊をもたらしかねない状況を招いています。7:1看護問題は大学病院を始めとする大病院の看護師確保合戦をもたらし、その結果、中小病院や診療所では看護師不足という事態を引き起こしています。
会員相互の信頼関係を損ないかねないこのような時にこそ、会員のために何を成すべきかを速やかに検討し、会員を守る立場から会員相互の対話の場を設定するなど、医師会はもっと積極的に取り組んでほしいと思います。
4.財政優先的な医師会運営の見直し、医師会のあるべき姿の再考
健全な医師会運営を行うためには、効率性を考え健全財政に努めることは当然のことであります。しかし一方、財政優先のあまり医師会が本来果たすべき役割を犠牲にすることは許されないと思います。鹿児島市医師会は社団法人として公益性を求められています。この医師会としての使命を全うするためにはどうあるべきかを問い直す必要があると思います。組織の総点検を行い、将来へのビジョンを示して会員にも職員にも魅力ある医師会になるように努力する必要があるのではないでしょうか。
5.公正で倫理性の高い医師会の構築
ひとつには、現行の役員選挙制度とその運用について検証を行うことであろうと思います。会員の選挙総会への出席率は20〜30%と低く、これでは会員の総意が反映されているとはいいがたいと思います。とくに会長選挙においては、候補者の所信表明を受けてその人物、考え方を知ったうえで全会員が自らの判断で1票を投じられる仕組みについての検討が必要と考えます。
ふたつには、定款の遵守であります。いうまでもなく医師会の定款は医師会の憲法です。遵法なくして信頼される医師会はあり得ません。定款に不備があれば慎重な検討のもとに改正を行い、あくまでも定款に則った案件処理、医師会運営がなされることを銘記すべきと思います。
さて、地域医師会の役割は地域医療を守ることにあります。そのためには透明性の高い健全な医師会の存在が必要かつ不可欠ですし、会員支援の視点が必要です。
以上の観点から、今、鹿児島市医師会が取り組むべき主な具体的課題として以下のことが考えられます。
*病診連携の更なる推進
*救急医療体制の円滑な運用
*学校保健をはじめとする各分野の保健活動、各種健診事業への積極的な取り組み
*医師会共同利用施設の整備と有効活用、とくに臨床検査センター生き残り戦略についての検討
*老朽化が進んでいる医師会館の今後のありかたについての検討
*会費をはじめ今後を見通した経理全般についての検討
*役員選挙制度とその運用についての検討
*各種委員会等の活性化、定時総会のあり方についての再考
*行政との連携強化、関係団体との協調
*医師会事務局、共同利用施設の職場環境の点検と効率化の推進
以上、鹿児島市医師会の将来に期待し、いささかの苦言、提言をさせていただきました。
会員の意向が反映された透明性の高い医師会、開かれた医師会こそが会員のための、また地域に役立つ医師会としての存在意義をもつものと考えます。会長、執行部は将来へのビジョンを示して大いにリーダーシップを発揮していただきたいと思います。
我々医師会員は医師会に守られているのです。医師会にもっと関心を寄せて意見も云い協力もして医師会を盛り立てて、これからの厳しい時代を乗り越えていかなければならないと思います。団結力のある倫理性の高い医師会であってほしいと願っています。
執行部の経験を持つ1会員の老婆心と受け止めていただければ幸いです。

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