「人間は豊かになると思考力は低下する」という法則が確立しそうな最近の世相である。その典型がアメリカの現在のイラクにおける失態である。有り余る富と人材を自国民、又は地球のために利用せずに70兆円余の国費をそれこそ無駄遣いしている。我々の住むことのできる地球の寿命もあと40億年余(太陽のエネルギーを産生している水素の融合反応がストップするため)である。長いようで案外短い。もっと世界の人々が仲良く、幸福に暮らしてゆけないものかと思う。国力が向上すると莫大な予質を、国力不相応に軍事費に投入している国が多い。最近北朝鮮が核実験を行ったと発表しているが国民の日常生活、経済状態、食糧事情はどうなっているのであろうか。ちなみに現在核兵器を保有している国は1945年にアメリカ(現在戦略用核弾頭5千発以上及び通常戦闘用弾頭千発以上)、1949年にロシアが(戦略用核弾頭5千発程度及び通常戦闘用約3千5百発を現在保有)、1952年に英国(現在戦略用2百発所有)、1960年にフランス(現在約3百50発の戦略用弾頭保有)、1964年に中国(2百50個の戦略用、150個の戦術用核弾頭保有)、1974年にインド(45〜95個の核弾頭保有),1998年にパキスタン(30〜50個の核弾頭保有)そしてイスラエルは公表していないが核兵器を保有(200個以上の核弾頭を有すると考えられている)することが知られている(資料:The
Associated Press (Sources: Arms Control Association; Nuclear Threat Initiative)。これだけの事実でも人類の、あまりにも進歩し過ぎた科学の悪用だと思っていたら北朝鮮やイランも核兵器を保有又は保有する予定だと報じられている。核弾頭一発が広島、長崎型の約40倍の威力とのことであるが莫大な資金を国民の福利厚生の為に使用せず科学の進歩の上にあぐらをかいているとしか思えない。医師としての立場からはそのような人殺しに配分する金があれば高度先進医療、高齢化社会の出現による、単なる疾病の早期発見、早期治療を陵駕するアンチエイジング――全身の病的な細胞の老化を予防する事により生理的な老化で細胞死を迎え最後まで元気で長寿、すなわち健康長寿を享受する医学――、そして医療経済、社会保障等への配慮と国民の充実した医療制度の構築に使用すべきであると思う。これからは終末期医療や尊厳死の問題も避けて通れない。無意味な延命治療に固執する時代は過ぎ去ったのではないだろうか。我々がよく患者さんや家族の方々にインフォームド・コンセントの実践の際の根拠としている医療におけるデーター中心のEvidence(いわゆるEBM)もそれだけでは不充分で医療現場における医師と患者さんの信頼関係に基づく対話を通して実践する医療、すなわちNBM(Narrative
Based Medicine)という考えも導入し、EBM(根拠に基づく医療)とNBM(経験に裏打ちされた医療)を同時に考慮して医療を行うべきだとも最近は言われている。さらにこれから先には宇宙医学の研究、ロボットが担う医療、福祉、介護の可能性の模索等々医師はすべからく生涯教育、生涯学習の渦の中に居る。我々の地球環境の変化でも最近の高温化による生態系の変化も人類の生存をおびやかしている。すなわち最近の話題は南極の生態系のトップに君臨する三種の線虫類による南極大陸の地中の炭素の循環の変化によって苔類や藻類、プランクトン類の減少が起っているとアメリカのコロラド大学のダイアナ・ウォール博士らが発表している。プランクトンの減少は必然的に魚類数の減少をもたらすのは当然ながら魚の過剰捕獲も相まって、今のままでは今世紀の半ばまでに海の魚類は殆んど獲れなくなるだろうとアメリカ、カナダ、スウェーデン、パナマ等からの報告もあり、このような状態になると地球上の人類の生活様式が自らの生殺与奪を我々自身が握っているようなものとなる。全世界的な天候異変、特にアジア諸国の洪水と干魃、南極の氷山の崩落、アマゾン地域の乱伐による同地域の貴重な動植物の減少、植物の減少による炭酸同化作用の低下による地球の高温化と堂々巡りで我々地球上のおろかな人類が他の動物も巻き添えにして絶滅の方向にむかっているようなものである。最近英国は新聞や大学の研究者等熱心に地球高温化に対する政策を各国に提言している。アメリカは未だに自動車の排気ガス等地球高温化の一因と考えられている有害物質減少を目的とした「京都議定書」を批准していないが、さすがにアメリカも人口が移民の増加により10月17日に3億人に達すると国民の間に環境問題に対する意識が芽生えてきているようである。エイズの蔓延も医学界としては避けて通れない。このようにして我々の医療環境、医療制度、国民の健康保持等を主眼に考えを進めていくとつまるところ、人間が健康である事が第一で科学はこの事を前提にして発達進歩すべきものであると言えよう。美しい空の月、あかるい太陽、おいしい空気、可憐な道端の花、青々とした雑草、元気で遊び回っている子供たち、青い空、青い海、健康長寿で80歳前後まで現役並に働いている方々、成績は中程度だが明るく素直で将来へ夢と希望に満ちた適度に反抗的な中高校生たち、色々な鳥類や蝶、とんぼ、蛙、適当な数のネズミやゴキブリも子供たちの好奇心の的となる自然の友達、そして犬や猫も悠然と散歩して、どこからか子供たちの歌声が聞こえてくる……といった2007年の我が日本国であることを期待している。山の彼方の空近く(遠くではない)幸い住むと人の言う……。夢と希望のもてる2007年でありますように!

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