新春随筆
超 高 齢 の 二 人 旅 |
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東区・紫南支部
(紫原たはら医院) 太原 春雄
(T12.4.10生)
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夫婦合わせて160歳を越える所謂超高齢者の群に入った。
この1年間を振り返ってみると、昨年12月ネパールに7日、今年3月エーゲ海のクルージングに10日余、8月南フランスのバス旅行に2週間、10月飛騨高山祭りに3日間その他国内旅行数回、われながら良く動いたものだと思う。
ネパールとフランスには介添えとして孫娘をつれて行ったが他は全くの二人旅であった。格別元気が良いというわけでもなく、家内はむしろ数年来の膝関節症で両下肢の神経痛に日常難渋し、市内のデパートは勿論、近所のスーパーにさえ滅多に行かない身体障害者である。
一昔前までは到底考えられない一見無謀ともいえるような長途の旅行を可能にしているのは何であろうかと考えてみた。
先ずはなんと言っても前提になるのは夫婦の趣味の一致であろう。
計画の思いつきと計画は私であるが、彼女が「ノー」と言ったことはまず無いようである。
次は昨今、弱者保護の社会的サービスが目覚しく発達したことである。国内は勿論、海外においても非常に行き届いてきたようである。
今の時代、何処に行くにも飛行機の利用がなくては考えられない。おかげで24時間もあれば地球上のたいていの所へ行けるようになった。
その反面、困ったことは、空港の大型化に伴って改札口から飛行機の搭乗口までの距離がとてつもなく遠くなってしまったことである。
歩く歩道が整備されてきたとはいえ、数百メートルはおろか、数キロメートルも歩かされる空港は珍しくない。
最近開港した名古屋の中部国際空港の搭乗口は端から端まで直線で2キロメートル以上ある。
この事は身体障害者にとって当然大きな難関となるわけであるが、搭乗手続き前に歩行障害がある旨申請しておけば必ず手押し車を準備してくれ、最優先でチェックインし係員が飛行機の入り口まで連れて行ってくれる。
国際線の場合は、煩わしい手荷物検査、出国手続き、さらには入国手続き、手荷物受け取り、税関の検査等全て最優先で特別のルートで済ましてくれるのだ。しかも、大抵の場合介添え1人の同行が許されるので私まで同じ恩恵が受けられることになる。
長い列をつくって並んでいる一般乗客の眼を意識しながら、すいすいと通り過ぎていく時はまことに申し訳ない気がする。
空港で長時間の待ち合わせ時間があってラウンジを利用する時など、次の出発時刻を告げておけば、ちゃんと時間を見計らって迎えに来てくれるので安心して寛げることになる。
団体旅行でのオプショナルツアーの場合、そのときの地形的条件など考えて車椅子の利用が無理なような時は参加を諦めてそれなりの対応をすれば他人への迷惑も避けられる。
もうひとつ、全くの二人きりでの外国旅行の場合、言葉の問題があるが片言交じりの単語とボディランゲージで大抵事足りるが、しっかりした旅行会社に頼んでおけば現地での通訳を世話してくれ、最初の到着空港にプラカードを掲げて出迎えてくれる。
その後はホテルまで連れて行ってくれるし、滞在中同行して一切の観光、食事のスケジュールを世話してくれる。わずか数日間の旅行ながら人種を越えて親密の情がわき、別れ惜しい思いをする事もある。
暇が出来たら旅行に行こうということでは実現はなかなか難しい。人生で暇を感じた時は肉体的に相当の衰えが生じた時ではないだろうか。
折角の旅行は夫婦そろって元気なうちに数多く出来たら最高である。暇は自ら作らなくては出来るものではない。
最後に、その時々で出来る範囲内の贅沢な旅行を勧めたい。少々無理しても後になって考えてみると、その時の出費はたいした後遺症を残さないのが現実の様な気がする。
ある時点まで働いたら、人生の収穫を計って豊かに終わりたいものである。

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