鹿市医郷壇
兼題「綱( つな)」



328・三條 風雲児 選





    天

 紫南支部 紫原ぢごろ
頼い綱じゃっとに女房が惚けでけっ
たよいつな じゃっとにかかが ぼけでけっ
(唱)あとは厄介な老々介護
(唱)あとはやっけな ろうろうかいご

 おそらくこのような事例は、お仕事柄数多く見ておいでではないかと思います。夫は妻より先に、妻は夫より先に逝きたいと思っているのではないかと思いますので、どちらも連れあいに介護してもらいたいと思っているだろうと思います。
 ところが、その頼みの妻が、いわゆる認知症になったのです。これは人によりいろいろ異なりますが、目を離すと家を出て徘徊をしたり、他人の家に上がりこんだりというような場合は、寝たきりの病人の介護より大へんではないかと思います。それも、いつまで続くかわからない訳ですから、下手すると共倒れです。


    地

 大崎町 植村聴診器
嫁支度き綱い引かれた競市の牛
よめじたき つないひかれた せいのうし
(唱)一頭ぐれじゃどしてん足らじ
(唱)いっぴっぐれじゃ どしてんたらじ

 昔の結婚式というのは、新郎新婦の伯父(叔父)伯母(叔母)くらいまでか、増やしても従兄弟くらいまでが普通でした。しかし現在は、友人から職場の人々、学友などを招いて、百人を超えるのは当りまえのようになりました。
 こうなりますと、費用もちっとやそっとではありません。農家などの場合は、この句のように、牛を売るなどというのは珍しいことではありません。売る牛でも豚でも飼っているところは助かるでしょうが、そんな家ばかりではありません。


    人

 錦江支部 城山古狸庵
方の無亭主て手綱緩めん厳し女房
ほのねとて たづなゆるめん いみしかか
(唱)間違げもせんじ人並み暮れっ
(唱)まっげもせんじ ひとなみくれっ

 夫婦というのは、うまくできているもので、片方が無駄遣いをする性格だと、他方がしまり屋であり、片方がだらしないと、他方が几帳面であるというような場合が意外に多いようです。
 放っておくと、何をしでかすかわからない亭主を、妻がうまくコントロールしていることを詠まれた句ですが、亭主は「うるさい奴だ」などと思わず、感謝すべきことなのかもわかりません。亭主と同じような妻だったら大へんなことです。



 五客一席
 清滝支部 鮫島爺児医
軽業じゃ落てそで落てん綱渡い
かいわざじゃ おてそでおてん つなわたい
(唱)血の滲んよな稽古したお陰
(唱)ちのにじんよな けこしたおかげ

 五客二席
 錦江支部 城山古狸庵
鹿工のなん言はならん勝戦
ろっこうの なんちゅはならん かっいっさ
(唱)勝った勝ったで故郷は沸っ
(唱)かったかったで ふいさとはうえっ

 五客三席
 姶良郡 大久保直義
医者様が命の綱ちすがられっ
いしゃさあが いのっのつなち すがられっ
(唱)助けっ上げにゃならんち懸命
(唱)たすけっあげにゃ ならんちいっペ

 五客四席
 大崎町 植村聴診器
艫綱もはずされ移民船な出航っ
ともづなも はずされいみん せんなでっ
(唱)行たや騙かしじゃったドミニカ
(唱)いたやたまかし じゃったドミニカ

 五客五席
 上町支部 吉野なでしこ
綱ねゆば爺が教かすい十五夜さあ
つなねゆば じがいっかすい じゅごやさあ
(唱)郷中にゃやっぱい宝がおじゃっ
(唱)ごじゅにゃやっぱい たからがおじゃっ


    秀  逸

 紫南支部 紫原ぢごろ
綱取いけモンゴル勢が押しかけっ
つなといけ モンゴルぜいが おしかけっ
(唱)何ゆしちょっとか日本の大関
(唱)なゆしちょっとか にほんのおぜっ

 大崎町 植村聴診器
横綱はモンゴルん人で国技相撲
よこづなは モンゴルんしで こくぎずも
(唱)欧州勢も力をつけっ
(唱)おうしゅうぜいも ちからをつけっ

 姶良郡 大久保直義
綱引っで薩摩川内はたぎいでっ
つなひっで さつませんでは たぎいでっ
(唱)どっちも負けん気の喧嘩綱
(唱)どっちもまけんきの けんかづな
 錦江支部 城山古狸庵
綱引きな重要し役くした肥満女房
つなひきな おもしやくした だんべかか
(唱)体重が重びで動かしゃならじ
(唱)かけめがおびで いごかしゃならじ

 清滝支部 鮫島爺児医
十五夜へな萱ん綱引たそん昔
じゅうごへな かやんつなひた そんむか
(唱)かんねかずらも混ぜっ綯っちゃっ
(唱)かんねかずらも まぜっねっちゃっ

 姶良郡 大久保直義
まこて太て川内ん綱は全で丸太
まこてふて せんでんつなは まっでほた
(唱)そゆ引っちぎろそな人が集っ
(唱)そゆひっちぎろそな ひとがよっ

 錦江支部 城山古狸庵
モンゴルが東西い綱を張ろそな態
モンゴルが とうざいつなを はろそなふ
(唱)久しゅはせんうちそげんなろだい
(唱)さしゅはせんうち そげんなろだい

 上町支部 吉野なでしこ
綱引っが祟っ湿布を貼いたくっ
つなひっが たたっしっぷを はいたくっ
(唱)平常せんこつ懸命した罰
(唱)かねっせんこつ いっぺしたばっ

 姶良郡 大久保直義
綱渡い見上ぐい客がふるでけっ
つなわたい みあぐいきゃっが ふるでけっ
(唱)落つれば下てな張っちゃなか網
(唱)おつればしてな はっちゃなかあん



薩 摩 郷 句 募 集

◎11 号
 題 吟 「 河豚(ふぐ) 」(ちゃんぷっ)
 雑 吟 なんでも可
 締 切 平成18年11月6日
◎12 号
 題 吟 「 年(とし)の市(いっ) 」
 雑 吟 なんでも可
 締 切 平成18年12月5日
◇選 者 三條 風雲児
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 〒八九二−〇八四六
 鹿児島市加治屋町三番十号
 鹿児島市医師会『鹿児島市医報』編集係
   TEL 〇九九−二二六−三七三七
   FAX 〇九九−二二五−六〇九九
   E-mail:kasiisoumu-e@po.minc.ne.jp


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