PACSとは、Picture Archiving and Communication Systemの略で、医用画像情報システムとも呼ばれ、画像参照、画像保存だけでなく、現在はレポート機能を備えた画像ネットワークシステムとして発展している。病院経営の効率化と医療の質向上を目的にフィルムレス化による画像情報の電子化は急速に進んでいる。
特に、ここ数年の変貌は大きく、フィルム中心に動いていた状況が急速にデジタル情報主体のフィルムレス環境に変化してきている。診療画像が電子保管されモニター診断となると、24時間いつでもどこでも見ることが出来るようになる。フィルムと違い持ち運ぶ必要がなく、各診療科の医師がそれぞれの科の診察室において、同じ患者の画像を見ながら電話で話し合い検討することができ、各科の相互連携が増え、患者にとっても、また医師にとっても医療の改善になる。過去画像もすぐに見られ、以前の検査画像との比較も容易にでき、患者もフィルムで説明するより分かりやすく、インフォームドコンセントにも効果的である。フィルムより速く画像情報が届き、迅速な診療が行えると共に、モニター上で条件を変えて画像が観察できるなど診断精度が向上する。また、フィルム搬送の手間が省ける等、フィルムを保管管理する必要もなく業務の効率化が図られ、保管スペースも有効活用できる。このように診断スピードの向上や医療業務の効率化を通じ、患者へのサービス向上や医療の質向上を大きく支援するものであり、病院機能を大きく前進させるものである。PACSの効果は何といっても医療の質の向上にあるが、金銭に換算可能な経済効果も大きい。DPC適応大型病院において、@フィルム購入費用、Aフィルムを保管するための袋、B自動現像機の維持管理費用、Cフィルム管理・搬送等の人件費等、年間 1 億円以上の経費節減効果があったとの報告もある。これによるとPACSの導入初期費用は高額だがランニングコストを入れると数年でその負担は逆転することになり、病院経営にもたらす効果は非常に大きなものがある。また、近年の画像情報機器開発は目覚しく、高価だった読影用高精細モニターや画像記憶装置(サーバー)等が安価となってきており、PACS導入は今後さらに加速されていくものと考える。さらにPACSは画像情報を病院間で、モダリティーの機能やベンダーが異なっても利用しあえるというコミュニケーション機能を持っている。
これらのIT化・医用画像情報システムの急速な普及発展に対応するため、診療放射線技師の職能団体である社団法人日本放射線技師会においては、高度な専門教育を実施し専門知識や技能を修得した者を「医用画像情報管理士」として認定している。多くの医療機関においてシステム運用上の問題点やさまざまな技術的問題と多大なコストに頭を抱えているのが現状である。最適なシステムの構築、信頼性の高いシステム運用(自己責任としての説明責任・管理責任・結果責任)、画像の電子保存3原則に準ずる運用(真正性、見読性、保存性)、個人情報保護法に対処したセキュリティー管理(情報漏洩、不正アクセス、改ざん等)、ウイルス管理、マルチベンダー・マルチモダリティーへの対応、オリジナル画像と参照画像の配信、画像表示モニターの精度管理、画像の圧縮率と画像保管容量、画像保管媒体、外部システムとの連携、システム維持管理費、システムダウン時の迅速な対応等である。これらに十分に対応し画像情報の有効活用が図れるスペシャリストが「医用画像情報管理士」である。今後の大きな活躍が期待されており、病院情報システムの構築と運用に大きな力を発揮するものと考える。
国のIT化推進による病院情報システム(電子カルテ、地域医療連携システム等)導入は、遅々として進んではいないが、医療制度改革による病院機能分担は、さらなるIT化推進を促している。それぞれの病院に自らのポジションに応じた医療を提供すべく生き残りをかけた戦略の選択と展開を迫り、それによる病院再編は、特定機能病院、地域支援病院、地域中小病院、診療科目を絞った専門病院、療養型病院等となっている。今後は、さらに高度・細分化され、それぞれの持ち味を出した特化した病院へと変貌していくであろう。機能細分化をすると一病院での完結医療が行えず、病院間の連携は必然となる。互いに手を結び合い互いに顔の見える関係を培い、互いの機能を補完しあう仕組み・ネットワークを作らなければならない。ネットワークは病院間を結ぶ大切な神経経路であり、血管であり、血液の流れである。ネットワークを介した予約・紹介状・診療情報提供・遠隔読影診断等、医療提供体制が重要となる。連携先を明確にしてネットワークにおける自らの役割を位置付け、他の医療機関の信頼を勝ち得ていく努力が求められる。現在の難局を泳ぎきるには、自らの強み、弱みを自覚し拡大強化、質の向上とその補強を強め、医療機関間の情報ネットワークを整備し医療情報の共有化をいかに図るかにある。病院情報システム構築は、病院の命運を握っている。
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