緑陰随筆特集
肥 満 撃 退
メタボリック症候群が新聞に掲載され、患者さんの関心も高く、肥満を気にされる方が多くなった。本県は全国平均を上回り、早世の危機としての平均寿命は男性で、全国42位と低迷している。私も8年ほど前に高血圧、高脂血症、肥満、耐糖能異常などメタボリック症候群が顔を出してきた。死の四重奏と市民講演会で話をしていた内容が、自らの現実のものとなった。6年前の両手骨折を機会に「牛乳、乳製品は骨の健康に良くない」と知り禁止した。そのおかげで高血圧、高脂血症は改善され、薬は不要となった。身長と体重は167cm、80kgで完全な肥満である。ズボンのベルトも91cmが94cmに伸びていた。食後2時間血糖は298mg、ヘモグロビンA1cは7.4%で糖尿病にもなっていた。血糖降下剤等の薬剤使用も考えたが昨年4月より、肥満解消に向け厳しい自己管理を実施してみることとした。まず一番大事な食事、栄養面を改革した。インスリンと肥満細胞の関係から、糖質を徹底制限し、脂肪を上手く燃やすことを考えて、食後高血糖を引き起こす、グリセミック指数の高い食品は禁止とした。パンや麺類、いも類は禁止し、米飯はほんの僅かにし、糖質分の多い野菜、果物は少量にし、酒は日本酒とビールを避ける糖質制限食にした。糖質制限食は糖尿病発症の全く基本的な原因へ対応した内容であり、インスリン分泌不全でも、インスリン抵抗性にも対応出来る新しい食事療法で、慢性膵不全にも適した治療法です。私たちの身体は主として、糖質と脂質をエネルギー源にして生活しています。江部康二博士は、その中でも脂質エネルギー回路が主で、人間のメインエンジンであり、糖質エネルギー回路は副でサブエンジンにあたる、と著述され、この二つの回路には優先順位があり、まず糖質を優先的に使い、糖質が無くなると脂質を使うようになることはご存じのことと思います。糖質を多く取る食事では、サブエンジンが主として働き、メインエンジンの働きが無く、脂質の燃える時間が少なくなります。サブエンジンは壊れ易く、頻繁な糖質代謝回路の使い過ぎで、血糖上昇の続く現代型糖尿病の増悪、離脱困難となり、多くの薬剤に頼らざるを得ない事になります。現在の糖質管理食型食事療法では、食後高血糖に対する食前薬や空腹時高血糖への薬、またインスリン抵抗の改善薬の組み合わせ等が専門医のもとで行なわれています。私は糖質制限食を徹底実行してみたところ、薬剤無しで現在体重は61kgになり、ズボンのベルトはメタボリック症候群診断基準内の82cmとなりました。食後2時間血糖は96mg、ヘモグロビンA1cは5%に下降してきました。糖質以外の食品は魚介類、肉、野菜、豆腐、海草類などは普通量食べて、痩せる為に減らすことはしていません。和食でも米飯は禁止か、食事の終わり頃に頂くことにし、天ぷら料理は衣を外して食べます。洋食はパンとデザートを禁止し、肉、魚、野菜料理は普通に食べ、中華料理はギョーザと春巻きは中身のみとし、八宝菜等ほとんどの料理を美味しく食べています。酒類は焼酎、ウイスキーとし、空虚なカロリーとして付き合っています。今までのカロリー管理食や厚生労働省の食事指針に従っても、ガンや生活習慣病が増え続けているのは疑問で、自己管理が十分でないことも大きな原因でしょう。鹿児島の地産地消を大事に焼酎も美味しく飲めます。間違った糖質偏重食事による「糖毒性」由来の「血管病」で苦しみ、悩む必要はありません。短い人生を知性豊かな食生活で過ごしましょう。

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