天

　錦江支部　城山古狸庵
八十年振いの大雪でばたぐるっ
はっじゅねん　ぶいのうゆっで　ばたぐるっ
（唱）十一センち南国か大騒動
（唱）十一センち　なんごかうそど

　十二月から一月にかけて、全国的に豪雪に見舞われました。雪国の古老たちでさえ、こんな雪は初めてだとこぼしていたようです。その豪雪によって、百名を超える犠牲者が出ているようです。
　鹿児島も、十二月としては、八十八年振りに記録を更新する積雪がありました。とは言いましても、鹿児島市で十一センチというのですから、雪国とは比較になりませんが、慣れないことで、交通もずいぶん乱れたようです。
　「ばたぐる」は「ばたぐろ」とも「たぐろ」とも言いますが、じたばたするとか、もがくというような意味です。確かにそのとおりでした。


　　　　地

　清滝支部　鮫島　信龍
雪化粧で角を隠きちょい桜島
ゆっげしょで　つのをかきちょい　さくらじま
（唱）誠て温和し姿を見せっ
（唱）まこておとなし　すがたをみせっ

　これは桜島を擬人化された句です。最近は火山灰を降らせることも少なくなってはいますが、爆発したり、降灰で困らせる桜島を、意地の悪い角を持っていると見たてられたものでしょう。
　ところが雪を冠った桜島は、大へんきれいなために、その角を隠しているように見えたというわけです。
　郷句は、人を詠むのが原則ですが、人以外のものは、人とかかわりを持たせるとか擬人化するという方法で表現しますと、このように面白い句にすることができます。


　　　　人

　上町支部　吉野なでしこ
また大雪大人どま溜息子は跳ねっ
またうゆっ　おせどまういっ　こははねっ
（唱）うらやましこっ遊じょい姿
（唱）うらやましこっ　あすじょいすがた

　雪が積もりますと、チェーンなしでは車も出せませんし、チェーンをつけても、通行止めになったり、渋滞に巻き込まれたりします。
　そうなりますと、職場に行くのも大へんですし、農家などでは、ビニールハウスが被害を受けたり、野菜や果物などは傷んでしまいます。大人たちは溜息吐息というところでしょう。
　しかし子どもたちは、雪達磨を作ったり雪合戦をしたり、それこそ大はしゃぎをしているわけです。対照的なところを詠まれました。


　五客一席
　大崎町　植村聴診器
凄い雪き鹿児島育ちゃ恐ろしゅし
わざいゆき　かごっまそだちゃ　おとろしゅし
（唱）三寸積めば動けん車
（唱）さんずんつめば　いごけんくいま

　五客二席
　姶良郡　大久保直義
深か雪きホームヘルパも出やならじ
ふかかゆき　ホームヘルパも　でやならじ
（唱）二度も三度もやっくい寒波
（唱）にどもさんども　やっくいかんぱ

　五客三席
　荒田支部　荒田案山子
初雪で子は赤け顔で飛っ回っ
はつゆっで　こはあけつらで　とっまわっ
（唱）風邪きなっち心配な親
（唱）かぜひきなっち　しんぱいなおや

　五客四席
　清滝支部　鮫島　信龍
雪の事故聞っ度び拝ん暖き薩摩
ゆっのじこ　きったびおがん　ぬきさつま
（唱）ちっとそっとん不自由は我慢っ
（唱）ちっとそっとん　ふじゆはきばっ

　五客五席
　姶良郡　大久保直義
寝たきいのベッドを引張っ雪く見せっ
ねたきいの　ベッドをそびっ　ゆくみせっ
（唱）絵に描たごたい見慣れちょい庭
（唱）えにけたごたい　みなれちょいにわ


　　　　秀　　逸

　大崎町　植村聴診器
雪き滑っ足すつん折った整形外科医
ゆきすべっ　あすつんごった　せいけいい
（唱）こげん痛てちゅが初めっわかっ
（唱）こげんいてちゅが　はっめっわかっ

　錦江支部　城山古狸庵
雪のよな色香も歳しな勝ちゃならじ
ゆっのよな　いろかもとしな　かちゃならじ
（唱）似合た化粧をばせえよち亭主
（唱）によたけしょをば　せえよちとのじょ

　荒田支部　荒田案山子
雪の中大か達磨が人を呼っ
ゆっのなか　ふとかだるまが　ひとをよっ
（唱）暖くなっきたやずんだれた顔
（唱）ぬくなっきたや　ずんだれたつら

　清滝支部　鮫島　信龍 大雪でチェンも用無し交通止め
おおゆっで　チェンもゆなし　こうつどめ
（唱）真似どま出来ん雪国暮し
（唱）まねどまでけん　ゆっぐんぐらし

　大崎町　植村聴診器
灰の桜島が雪のおかげで化粧をしっ
へのしまが　ゆっのおかげで　けしょをしっ
（唱）大丈夫じゃろか花ん咲た枇杷
（唱）だいじょっじゃろか　はなんせたびわ

　姶良郡　大久保直義
雪の朝電信柱て花が咲っ
ゆっのあさ　てんしんばして　はながせっ
（唱）美事て美事てち持っ出たカメラ
（唱）みごてみごてち　もっでたカメラ

　上町支部　吉野なでしこ
雪日和ナイスショットも凍い手
ゆっびよい　ナイスショットも　こごゆいて
（唱）息くば吹っかけ吹っかけ頑張っ
（唱）いくばふっかけ　ふっかけきばっ

　清滝支部　鮫島　信龍
雪が降っゴルフは出来じ雪見酒
ゆっがふっ　ゴルフはでけじ　ゆっみざけ
（唱）酔くろっきたや自慢も出ちょい
（唱）よくろっきたや　おぎらもでちょい

　姶良郡　大久保直義
初雪が世間の汚れひっ隠っ
はつゆっが　せけんのよごれ　ひっかきっ
（唱）次々ぎばるい歯痒いか悪事
（唱）つっつぎばるい　はがいかあくじ


　　　　参　考　作　品

合格祝落えた本家は呼っ難し
ごかっゆえ　ちゃえたほんけは　よっにくし

美人ナース爺さんの血ずい滾らけっ
シャンナース　じさんのちずい　たぎらけっ

新品の背広は買たが職が無し
しんぴんの　せびろはこたが　しょっがのし

今日も雨ち新け雨靴が走い出っ
きゆもあめち　にけあまぐっが　はしいでっ


　薩 摩 郷 句 募 集

　◎３号募集要項
　　１、題　吟　「 卒業 」（そっぎょ）
　　２、雑　吟　なんでも可
　　３、締切日　平成18年３月４日
　◎４号募集要項
　　１、題　吟　「 流行 」（はやい）
　　２、雑　吟　なんでも可
　　３、締切日　平成18年４月５日
　◇選　者　三條　風雲児
　◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
　◇応募先 鹿児島市医師会「医報」編集係

このサイトの文章、画像などを許可なく保存、転載する事を禁止します。
(C)Kagoshima City Medical Association 2009