319・三條 風雲児 選 |
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天
荒田支部 荒田案山子
数の子が正月の膳ぬ引っ立てっ
かしのこが しょがっのぜんぬ ひったてっ
(唱)おてちき食やならん高け品
(唱)おてちき たもやならん たけしな
数の子は、正月の膳には付き物という感じの食品です。昔は値段も安かったので、庶民も容易に手にはいりましたから、正月に行けば、どこの家庭の膳にも見られたものでした。
ところが現在の数の子は高価で、どこの家庭でも、昔のように容易には買えないような品になってしまったようです。
昔だったら、数の子をお歳暮にするというようなことはあまりなかったのかも知れませんが、今は最も喜ばれる物かも知れません。
それだけに、数の子の乗った膳は、いかにも正月の膳のような気がすると言ってもよいのかも知れません。
地
清滝支部 鮫島 信龍
数の子を食わんと正月ちゃ来た気せじ
かしのこを くわんとしょがちゃ きたきせじ
(唱)有い物が無と寂ねお膳
(唱)あいもんがねと とぜんねおぜん
現代はすたれたようですが、放生会(ほぜ)には甘酒、端午の節句にはあくまき、正月には雑煮や数の子など、それぞれの行事には付き物の食べ物があります。
現在では高価な数の子は、昔のようには食べられそうもありませんが、昔のことを知っている者としては、数の子を食べないと、正月が来たようでないという気持はよくわかります。郷愁なのかも知れません。
潤沢に口にはいらない品であればあるほど、それを食べて、ああ正月だと思う気持はほほ笑ましいものです。
人
大崎町 植村聴診器
年中平数の子歳暮が届じた夢
ねんじゅひら かしのこせぼが とじたゆめ
(唱)目が覚めっから苦笑れをしっ
(唱)めがさめっから にがわれをしっ
平の家に届くお歳暮は、それなりの品であって、数の子のような高価な品は届かないと見たものでしょう。
自分の家では買って食べたことのないような品を、上司へのお歳暮にしたという話を聞いたことがありますが、そういうお歳暮を貰ったことのない平が、数の子を貰ったという夢を見たとは、ありそうなことではありますが、哀れな感じもします。
分相応と言いますが、贈るにしても、貰うにしても、背伸びしないことが大切なのかも知れません。
五客一席
錦江支部 城山古狸庵
まだ孕けん嫁め数の子をごいと注っ
まだでけん よめかしのこを ごいとちっ
(唱)早よ孫ん顔見ろごたい姑
(唱)はよまごんつら みろごたいしゅと
五客二席
紫南支部 紫原一本桜
数の子を見れば正月がそけ来ちょっ
かしのこを みればしょがっが そけきちょっ
(唱)どこにも並べちょい暮ん店
(唱)どこにもならべちょい くれんみせ
五客三席
大崎町 植村聴診器
数の子も想定内で小もちぎっ
かしのこも そうていないで こもちぎっ
(唱)お客の数もそがらし本家
(唱)おきゃっのかしも そがらしほんけ
五客四席
清滝支部 鮫島 信龍
数の子は料理は大概でん珍味みなっ
かしのこは じゅいはてげでん ちんみなっ
(唱)小皿じゃってん引っ立っお膳
(唱)こざらじゃってん ひったっおぜん
五客五席
姶良郡 大久保直義
数の子が年に一度ん顔を出っ
かしのこが ねんにいっどん つらをでっ
(唱)女房が張い込っくれた元旦
(唱)かかがはいくっ くれたがんたん
秀 逸
錦江支部 城山古狸庵
正月用ん数の子全部肴けしっ
しょがっよん かしのこずるっ しおけしっ
(唱)何ちこっなち呆れた女房
(唱)なんちこっなち あきれたおかた
上町支部 吉野なでしこ
高けもんじゃ大て数の子は買がならじ
たけもんじゃ ふてかしのこは こがならじ
(唱)小んか片で我慢れよち女房
(唱)こまんかきれで きばれよちかか
姶良郡 大久保直義
数の子は誰が産んだかち孫が聞っ
かしのこは だがうんだかち まごがきっ
(唱)魚ん卵じゃっどち爺様
(唱)さかなんたまご じゃっどちじさま
紫南支部 紫原一本桜
数の子が入れ歯ん奥っで年す越せっ
かしのこが いればんおっで とすこせっ
(唱)年の晩から恵った御馳走
(唱)としのばんから のさったごっそ
荒田支部 荒田案山子
数の子を若け衆が噛めばよか響っ
かしのこを わけしがかめば よかひびっ
(唱)入れ歯じゃ出せんあげなよか音
(唱)いればじゃだせん あげなよかおと
上町支部 吉野なでしこ
爺も婆も数の子じゃれば噛んがなっ
じもばばも かしのこじゃれば かんがなっ
(唱)何十年も食っきた味
(唱)なんじゅうねんも たもっきたあっ
錦江支部 城山古狸庵
世界中ん数の子日本に輸入されっ
せかいじゅん かしのこにほんに ゆにゅされっ
(唱)無やどっならん日本の正月
(唱)ねやどっならん にほんのしょがっ
清滝支部 鮫島 信龍
数の子を食わじ生かせち理屈ちゃ野暮
かしのこを くわじいかせち りくちゃやぼ
(唱)屁理屈つ言なち爺様め叱られっ
(唱)へりくつゆなち じさめがられっ
姶良郡 大久保直義
数の子は親いはぐれっ可哀相しこっ
かしのこは おやいはぐれっ ぐらしこっ
(唱)子供が言えばじゃらいち婆様
(唱)こどんがいえば じゃらいちばさま
参 考 作 品
見た事があいよな歳暮が回っ来っ
みたこっが あいよなせぼが まわっきっ
夫婦喧嘩女房ん泣っ真似ねまた嵌っ
みとげんか かかんなっまね またうたっ
半額の洋服が飲屋で出っかせっ
はんがっの ふっがのんやで 出っかせっ
下戸わろは横け座ってん注じゃくれじ
げこわろは よけすわってん ちじゃくれじ
薩 摩 郷 句 募 集
◎2号募集要項
1、題 吟 「 雪 」(ゆっ)
2、雑 吟 なんでも可
3、締切日 平成18年2月4日
◎3号募集要項
1、題 吟 「 卒業 」(そっぎょ)
2、雑 吟 なんでも可
3、締切日 平成18年3月4日
◇選 者 三條 風雲児
◇漢字のわからない時は、カナで書いて応募くだされば選者が適宜漢字をあててくださいます。
◇応募先 鹿児島市医師会「医報」編集係
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