新春随筆
九 州 国 立 博 物 館 を 見 学 し て
11月2〜3日にかけて友人3人と福岡、長崎方面に旅行しました。今回の旅の目的の一つは10月16日福岡の太宰府にオープンした九州国立博物館を見学することでした。
この博物館は国立では東京、京都、奈良に次いで全国で4番目に建設されたものです。先発の博物館と異なる点は「アジアとの文化交流と日本の文化の独自性に注目した新しい博物館を目指す」としていることで全国から大変注目されています。開館後まだ日が浅いので私達は混雑が予想される11月3日の文化の日を避けて、2日にこの博物館を訪ねました。以下施設や展示品の概要と見学後の感想等を述べてみます。
九州国立博物館は太宰府天満宮の右側面の小高い山の上に建設されており、敷地面積約16万平方メートル、延床面積約3万平方メートル、160メートル×80メートルの長方形、蒲鉾形のユニークな建物で案内のパンフレットには「国際競技が可能なサッカー場が楽に1面すっぽり入る程の広さでとても迫力がある」と紹介されている。
博物館へは太宰府天満宮の参道の途中から右折して山の斜面に沿って設置されているエスカレーターに乗り、その後トンネル内の動く歩道を利用してトンネルを抜けると到達する。
私達が訪れた時期には「美の国日本」というテーマで開館記念特別展が3階で開催されていた。まずこの特別展を観覧したが、国内・国外の博物館等から集められた展示品が一堂に展示され、国内では奈良の東大寺所蔵の『八角燈籠火袋羽目板』(奈良時代)、文化庁所蔵の『酒飯論絵巻』(室町時代)、奈良の大和文華館所蔵の『風俗図屏風』(桃山〜江戸時代)等、国外では中国山西省博物院所蔵の『漆絵屏風』(六朝時代)、中国陜西省考古研究所所蔵の『仕女図壁画』(唐時代)等いずれも素晴らしい出品約100種類を観覧することができた。
4階の文化交流展示室は常設展で、「海の道、アジアの路」をテーマに800点が展示されており、日本文化がどのようにアジアと関わって形成されてきたのか良く分かる。
入館してから一通り見学するまでざっと1時間30分、本来ならゆっくりとすみずみまで見学したかったが、予定時間の関係で残念ながら急ぎ足で見学を終え博物館を後にした。
九州で初めて建設された国立の博物館だけあって建物の規模、展示品の種類・点数などすべてが充実した立派な博物館だと思ったが、博物館までのアクセスや館内の施設面にやや気がかりな点もあったので、若干これに触れて終わりとしたい。
@博物館へのアクセスの一つとして太宰府天満宮側からエスカレーターや動く歩道が設置されているが、これに乗ると楽にしかも早く博物館へ到達できるので、利用者にとってはとても便利である。恐らく博物館までの主要なアクセス道として、今後歩行者にはこの道が一番利用されると思う。しかし、エスカレーターは非常に長い距離でその上勾配も急であるので、人出の多い休日等は事故につながる危険性をまず心配した。係員を増員する等の対応が必要ではないかと思う。また、神社の境内の近くにエスカレーター等があること自体、静寂な神社とはマッチしない。今後入館者はますます増加していくことを考えると、周囲の環境問題は大丈夫だろうか。
A博物館正面の駐車場の収容台数が80台(館内の係員に聞いた数)とは大きな施設にしてはあまりにも少ない。休日等には駐車場探しの車で周辺の道路が渋滞するのでは。
B博物館内は平日にも拘わらず、展示品の近くにはなかなか寄りつけない程の混雑振りであった。その中には車いすでの障害者や高齢者もおられたが十分に観覧できただろうか。障害者や高齢者等への配慮がもっと必要ではないかと感じた。更に室内の照明がやや暗く、後方からは展示品の説明文が見にくいところもあって気になった。
開館からまだ日も浅いので現時点で不十分な点、不慣れな点があることはやむを得ないと思いますが、折角九州に一つの立派な国立の博物館ができたので、改善等に努めていただき更なる充実・発展を期待するものです。

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